第112話 夢の世界
「ね、ねぇ…夢の世界って…い、一体いつからなの…?」
今迄私は何度も何度も色々な夢や、様々な体験をしてきた。何処からが夢の世界なのか、もう何も分からなくなっていた。
「いいか?ユリアはあの日…催眠暗示を掛けられて池に飛び込むように誘導された。そこからずっと眠ったままになってしまったんだ。今だってずっとベッドの上でいつ目覚めるかもわからない状態で眠っている。魔法を掛けて何とか体力を維持させているが…今だって徐々に生気を失い続けている。もう1カ月も眠りに就いているんだ」
オルニアス…いや、セラフィムの言葉に目を見張った。
「う、嘘でしょう…?」
声を震わさせながら彼を見る。
「嘘なんかついていない。ユリアが俺に助けを求めて森にやってきたのは事件が起こる半月前の事だった。最近学園で危険な目に遭うようになってきから守って欲しいと頼みに来たんだ。おおかたどこからか噂を聞きつけて来たのだろけどな」
「危険な目…?」
「ああ、いきなり後ろから物をぶつけられたり、突然ボールが自分の方に向かって飛んで顔に当たった事も時にはあったと言っていた。最初はそれでも偶然の出来事だろうと余り気にも止めていなかったらしいが、その内嫌がらせが酷くなってきたらしい」
「その嫌がらせって…どんな嫌がらせだったの?」
「自分の足元に鉢が落ちてきたそうだ。それが足元で粉々に割れた時は流石に恐怖を感じたと言っていたな」
「あ…そうなの?」
確かに頭を直撃すれば下手をすれば死んでいたかもしれない。
「だが、ここまでの話では俺が動くまでも無いと感じた」
「あ…やっぱりそうなるわよね?」
確かにそうかもしれない。
「それで?その後はどうなったの?」
私は話の続きを催促した。
「とりあえず、それ位のレベルの話なら他を当たってくれと言って帰らせることにした」
「何ですってっ?!酷いじゃないっ!助けを求めてやって来た私を追い返すなんて!」
何て薄情な人なのだろう。するとその言葉に何故か笑みを浮かべるセラフィム。
「同じだな…あの時のユリアも今と全く同じセリフを言ってたな」
「そ、それは当然でしょう?わらにもすがる思いで助けを求めに来た私を追い返すなんて…あ、あんまりでしょう?」
「あの時はまだそれほど緊急性を感じなかったんだ。だけど…一応、ユリアには保護魔法のかかった指輪を渡した。それを身につけていればある程度の物理攻撃や魔法攻撃を防げるようにな。そうしたら数日後、またユリアが俺の元へやってきたんだ。指輪が壊れたから何とかしてくれって」
「ちょっと…命の危険がある人にどうしてすぐ壊れてしまうような指輪を渡すのよ。お金だって相当払っていたんじゃないの?」
するとセラフィムは少しだけ視線をそらせた。
「まぁ確かに謝礼金は貰ったが…でもいいか?俺はそんな安物の指輪を渡すような人間じゃない。それで指輪を調べたところ…ある事が分った」
「ある事?」
「その指輪にもう一つ、別の役割があったんだ。ユリアの命の危機が遭った時…身代わりとなってくれるように」
「え?」
「ユリアの話では突然指輪が真っ二に割れたという。それで一計を案じた俺はユリアの護衛騎士になる為に森を出て…クッ!しまった!」
突然セラフィムが焦った声を上げた。
「ど、どうしたの?」
「あいつが…。オルニアスが干渉しようとしている…」
徐々に周囲が黒い靄に覆われていき、目の前のセラフィムが消えていこうとしている。
「ちょ、ちょっと待ってよっ!何所へ行こうって言うのっ?!」
しかしセラフィムはそれに答えずに代わりに言った。
「いいか…早く自分の事を思い出せ…そして…あいつに捕まるなよ…」
「え?捕まるなって…一体何の事よっ?!」
しかし…。
ついに黒いモヤに辺りは覆い尽くされ…ついには目の前が真っ暗になって何も見えなくなってしまった―。
****
「ちょっと!美咲!何ぼ~っとしてるのっ?!」
真っ暗闇の中から突然誰かに名前を呼ばれた。
「えっ?!」
驚いて周囲をキョロキョロ見渡すと、いつの間にか周囲の風景がガラリと変わり、私の向かい側には良く見知った人物達がいた。
「あ…綾香…それに奈々…」
そこには中学時代からの2人の友人が座っており、私の顔をじっと見つめていた―。
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