第111話 目を覚ませ
「ま、まさか…そ、その声は…?」
恐る恐る振り返ると、そこに立っていたのは…。
「キャアアアアッ!で、出たーっ!!」
思った通り、そこに立っていたのはオルニアスだったのだ。
「お、おい!ちょっと待て。落ち着けって」
「いやあああああっ!こ、こ、来ないでっ!あっちへ行ってよ!!」
滅茶苦茶に腕を振り回し、オルニアスが傍に来れないように威嚇?する。
「頼むから落ち着けって!」
何故か以前とは少し雰囲気の違うオルニアスだったが、そんな事はどうでも良かった。魔力も剣技?も何も持たない私は、ただ叫んで腕を振り回して防御する事しか出来なかった。
「いやあああっ!殺さないでってばっ!私はもうベルナルド王子なんてどうだっていいんだからっ!」
「あーっ!もうっ!いい加減にしろっ!」
ガッ!
ガッ!
あっという間に私は両腕をオルニアスに掴まれ、動きを封じられてしまった。そしてまつ毛が触れ合う程至近距離で顔を近づけたオルニアスが言った。
「いいから落ち着け。俺はお前に危害を加えたりしない」
「う、嘘よ…だ、だって…今まで散々私の事…こ、殺そうとしていたわよね…?」
声を震わせながら尋ねる。
するとオルニアスが言った。
「どうやら、少しは落ち着いたようだな?」
そしてパッと私の両手を離した。
「いいか?そもそもそこから間違えている。俺はお前の命なんかただの一度も狙った事は無い。ユリア…まだ目が覚めないのか?」
「え…?」
な、何を言ってるの…?
驚きで目を見開くと、オルニアスは溜息をついた。
「全く…随分深く催眠暗示を掛けられているんだな…。だが、いい加減に目を覚まさないと本当に夢に取り込まれて戻れなくなる。身体が衰弱して死んでしまうぞ?」
「ちょ、ちょっと待ってよ…さっきから一体何を言ってるのよ…?」
「ようやく少しは冷静になれたようだな…いいか?ここは現実世界じゃない。夢の中の世界だ。ユリアは夢の中に取り込まれ、徐々に生気を奪われている」
「な、何ですって?!う、嘘でしょうっ?!」
「嘘なんかついていない。俺はようやくユリアの精神が眠っている最深部までたどり着くことが出来たんだ。ここはあいつによって全て作りだされた世界なんだよ」
「あ、あいつって…だ、誰よ…」
声を震わせながら尋ねた。
いやだ…まさか、信じたくはないけれども…。
「オルニアスだ」
「へ?」
「だから、ユリアを夢の世界に閉じ込め、生気を奪い取っているのがオルニアスなんだよ」
「な~んだ、やっぱり貴方の事じゃないの。真剣な顔して何おかしな事言ってるのよ」
けれど、足が震えているのが自分でも分った。
「やはりあいつが俺の事をオルニアスだと教えたんだな?いいか?よく聞け。あいつの話している事は全て嘘だ。あいつがオルニアス。ユリアの命を奪おうとしている張本人だ。そして俺がセラフィムだ。ここはオルニアスが作りだした夢の世界なんだよ!そしてユリアはずっと…この世界に捕らわれ続けているんだ!」
その真剣な瞳は…嘘をついているようには思えなかった―。
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