記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした

第108話 様子がおかしい

　仕返し…まさかマテオ達に…？！

「た、大変っ！」

慌ててガタンと乱暴に席を立つと、3人のクラスメイト達に頭を下げた。

「折角のお誘いなのにごめんなさいっ！急用が出来たので失礼します！」

そして呆気に取られる令嬢達をその場に残し、私は教室を飛び出した。

マテオ…！アークッ！オーランドッ！待っていて！今…助けに行くからっ！

自分で何が出来るか分からなかったけれども、少なくとも私のせいで無関係な3人を巻き込みたくは無かった。私は急いで3人の…。

教室の前に辿り着き…そこでピタリと足を止めた。

「あ…そ、そうだった…。確か3人は…全員ベルナルド王子と同じクラスだったわ…」

ついでに言うと、テレシアも同じクラスであった。彼女に3人の無事を確認できれば良いのだろうけど生憎テレシアは常にベルナルド王子と一緒に行動している。というか今となっては良く分かる。恐らくテレシアはベルナルド王子に見張られているのだろう。王族としての品位を欠く行動を取らせないように…。

哀れなものだ。テレシアには同情してしまう。本当に以前の私は何故ベルナルド王子に夢中になっていたのだろう？尤もその記憶すら余り覚えていないので実感はわかないけれども。

「どうしよう…でも教室を覗くぐらいなら…」

扉の隙間から中を覗き込もうとした時…。

「おい、こんなところで何をしてるんだ？」

不意に背後から声を掛けられた。

「キャアアアアアッ！！」

私は悲鳴を上げた―。

＊＊＊＊

「全く…何て大きな声を出すんだ？まだ耳がジンジン痺れている」

オーランドが片耳を押さえながら私を見る。

「ごめんなさい…突然声を掛けられて驚いたものだから…」

私とオーランドは廊下で立ち話をしていた。

「ところで何故ここへ来ていたんだ？と言うか、お前あの後俺たちを屋敷に残したまま行方をくらましただろう？待てど暮せど戻ってこないからやむを得ず帰って来たんだからな？」

「はぁ…ごめんなさい。あの後、色々ありまして…と言うか、何故オーランド1人だけなの？マテオやアークは？」

敢えてベルナルド王子の名は口にしなかった。

「お前な…俺たちは3人で1人だと思っていないか？」

呆れたようにオーランドが言う。

「べ、別にそういうわけでは…それで？他の2人は何処にいるの？無事なんでしょう？」

すると何故かオーランドは不機嫌な顔になる。

「…おい、俺という男が目の前にいるのに、やけにマテオやアークの事を気にしているじゃないか？」

「…へ？」

オーランドの雰囲気が突然変わる。

「ユリア。お前…もうベルナルド王子の事は好きじゃないんだって？」

「え？だ、誰にその話を…？」

「ベルナルド王子が話していた。どうやら自分はもうユリアの恋愛対象では無くなったらしいとな」

「アハハハ…そ、そうなのね…」

全く男のくせにおしゃべりな王子だ。

「それって、もしかして恋愛対象がマテオかアークに移ったからか？」

「はぁっ？！何その話っ！何故そうなるの？！」

いきなり話が飛躍して驚いた。

「だってそうだろう？今だって何だか上の空というかソワソワしている…違うとは言わせないぞ？」

「そ、それは当然でしょう…」

何と言っても私は壁を背にした状態でオーランドは両腕を壁につけ、私は囚われ状態なのだから。

「やっぱりな…だが、今お前の目の前にいる男は俺なんだから、俺だけを見ろよ」

「はぁっ？！」

おかしいっ！絶っ対にオーランドの様子がおかしいっ！

まるで少女漫画にありがちな台詞を言うオーランドに思わず鳥肌が立った時―。

「おいっ！ユリアに何してるっ？！」

突然前方から声が聞こえた―。