第109話 操られる2人
声が聞こえた方角を見ると、そこに立っていたのはアークだった。
「チッ…!折角いいところだったのに…」
オーランドが舌打ちする。
…え?いいところ?
「王子の忘れ物を取りに戻ったお前の帰りが遅いから何をしているのかと思えば…この卑怯者っ!さてはユリアに手を出すつもりだったな?!抜け駆けは許さんぞっ!」
えっ?!抜け駆けっ?!
「うるさいっ!ユリアを口説く絶好のチャンスだったのに…アークッ!よくも邪魔してくれたなっ!」
えええっ?!口説くって何よっ!
「何だとっ?!」
「やる気かっ?!」
2人は互いにズカズカと歩み寄ると、至近距離で睨み合う。
ここで本来であれば、私を取り合って2人の男性がいがみ合っているなんて…と思うのかもしれないが、私の場合はそうはいかない。何故なら私の記憶の何処かで、彼らは私の事を徹底的に嫌っていたのを何となく覚えているからだ。
なので私を取り合って2人が喧嘩をするはずは無かった。
「ちょっと!ちょっと待ってよっ!」
慌てて2人の間に割り込むとオーランドとアークを交互に見た。
「俺達は今から決闘するのだ。危険だから下がっていろ」
「必ずあいつに勝ってみせるからな?」
終いに物騒な事を言い出す2人。絶対にこれは異常事態だ。
「だから、待ってってばっ!」
私が叫ぶと、ようやく2人は睨み合うのをやめてくれた。
「どうしたんだよ?」
声を掛けてきたのはアークだった。
「どうしたもこうしたも無いわよ。2人とも一体どうしちゃったの?私の事、すごく嫌っていたのに、どうして私を取り合って喧嘩しようとしてるの?」
「え?!お前を取り合って喧嘩だと?!嘘だろう?!」
オーランドが驚きの声を上げる。
「うん、そうよね。それが今までの普通の反応よね?オーランドが私を口説くなんてありえないもの」
「な、何だってっ?!」
ショックを受けるオーランド。
「何だ?お前そんな事をしたのか?全く物好きな奴だ。ユリアを口説くなんて」
笑いを堪えてオーランドを指差すアークに私は言った。
「言っておくけど、アーク。そんな貴方はオーランドに『抜け駆けは許さんぞ』と叫んだのよ?」
「う、嘘だっ!俺はそんな事言った覚えは無いぞ!」
青ざめるアーク。…うん。これではっきり分かった。
「アーク、オーランド…。どうやら貴方達は私を好きになるように暗示を掛けられたようね」
「「何だってっ?!」」
私の言葉に声を揃えて驚く2人。
「おい!冗談じゃないっ!ふざけるなよっ!」
「ああ、そうだっ!俺たちの暗示を解けっ!卑怯だぞっ?!」
何故か2人は私に文句を言ってきた。
「はぁっ?!ちょっと!人の話しを聞いてたの?私は暗示を掛けられたようねと言ったのよ?私が2人にそんな暗示をかけるはずないでしょう?!」
「だったら…誰が俺たちに暗示を掛けたって言うんだよ?」
「お前は知ってるのか?」
「ええ。多分…2人に暗示を掛けたのはノリーンよ」
「え…?」
「ノリーン…?」
アークとオーランドは互いの顔を見合わせた―。
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