第107話 怖い呟き
静かな教室に歴史の先生の声だけが聞こえて来る。生徒たちは皆真剣に話を聞いている。今は歴史の授業の真っ最中だった。
不思議な事にセラフィムがいなくなってしまったというのに、それを気に留める人物は誰もいなかった。恐らく彼は一瞬でクラスメイト達の記憶を操作してしまったのかもしれない。
あの後、教室から去ってしまったセラフィムの残して行った教科書類を全て片付けていると休み時間は終わってしまった。本当はノリーンに声を掛けたかったのに出来なかった。
やはりたった10分の休み時間では話が出来そうにない。昼休みにノリーンを捕まえて、話をした方が良さそうだ。
兎に角今はこの授業に集中しよう。この先生は厳しいことで有名で試験も難しい。何としても赤点だけは取りたくなかった。私には敵はいるけれども友人はいない。それはユリアの頭が悪いのも原因の一つなのではないだろうか?前世の私には沢山友人がいた記憶が頭の中に残っている。勉強もそこそこ出来ていた…気がする。だから今の私なら頑張れば勉強だって出来る様になるはずだ。
けれど、この考えが実はオルニアスによる催眠暗示だとはこの時の私は思ってもいなかった―。
****
キーンコーンカーンコーン…
「ふ~…やっと午前の授業が終わったわ…」
片づけをしながらノリーンを見ると、すでに教室を出る処だった。
「嘘っ!もういなくなっちゃうの?!」
慌てて席を立とうとしたところ、4人の女子生徒たちが私に近付いてきて1人の女子生徒が声を掛けて来た。
「ユリア様。体調はどうですか?」
「え?あ、お陰様で大丈夫です」
そうだった。私は馬車事故で12日も学校を休み、さらに11日も学校を休んでしまったのだ。なので学校の授業もちんぷんかんぷんだった。
「もし、困ったことがあればいつでも相談して下さいね」
「私達でよければ力になりますから」
「食事に行くのでしたら、私達と一緒に行きませんか?」
「食事…」
うん、本当は彼女達と一緒にお昼を食べて少しでも仲良くしたいところなのだけど…。
「ごめんなさい、折角のお誘いなのに…実は少しノリーンさんに用があるんです」
すると3人の顔が曇る。
「え?ノリーンさんと?」
「あまりあの人とは関わらない方がいいですよ」
「え?どうしてですか?」
すると1人が教えてくれた。
「ノリーンさん、ユリアさんが学校をお休みしている間、ずっとベルナルド王子をつけまわしていたんですよ。でもベルナルド王子の側近の人達に追い返されて、近付く事も出来なかったみたいで…仕返ししてやると呟いていたのを私、聞いてしまったんです」
「え…?し、仕返し…?」
私はその言葉に青くなった―。
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