第106話 ボイコット宣言
1時限目の授業がようやく終了し、休み時間に入った。
「は〜…ノリーンの事が気がかりで1時限目の授業が全く集中出来なかったわ…」
机に突っ伏してため息をついた。
「ユリア…僕は授業を受けていてよく分ったんだけど…」
突如、隣の席のセラフィムが神妙な顔で話しかけて来た。
「何?」
「やっぱり学生のフリをして授業を受けるのは無理だ。森羅万象を知り尽くした僕にこの世界で学ぶことなど一切ないのに1時間も見解の誤った授業を聞くのはもう堪えられないんだ。そんな授業を受けるぐらいなら僕は教室の外でユリアを見守っていた方がずっとましだよ。だから今この場で学生のフリをするのはやめさせてもらうよ。いいね?もうこれは決めたことなんだ。止めても無駄だからね?」
まさかのいきなりイコット宣言がセラフィムの口から飛び出した。
私に突っ込まれるのが嫌なのか、セラフィムは一気に早口でまくしたててきた。
それにしても…森羅万象とはまた随分スケールの大きな話を持ち出して来たものだ。まぁでも彼はもとは天界に暮らす天使だったのだから森羅万象を知り尽くしていても不思議ではないかもしれない。
けれど…。
「セラフィム…」
「何?」
「貴方…余程授業に出たくないのね…」
「それはそうだよ。あんな退屈な授業1時間も聞いていられないよ。眠くなってきて睡魔に襲われそうだよ」
セラフィムが本音をぶちまけた。
「やっぱり…退屈な授業に出るのがただ単に嫌なだけなんでしょう?」
「うん。だから真面目に授業を受けているエリアが偉いと思うよ」
「え?私が?」
「そうだよ。だって前世の世界では学校生活を終えて卒業しているんだろう?それなのにこの世界でまた勉強しているんだから」
「え?」
セラフィムの言葉に私は反応した。そう言えばそうだった。私の前世は日本人だったんだ。時折何となく夢に出て来たあの光景…おそらく日本人だった時も性別は女性だった気がする。でも名前も思い出せないし、家族がいたかどうかも…。
「セラフィムッ!」
私はセラフィムの襟首をグイッと捕まえると尋ねた。
「そう言えば私の前世の記憶…貴方は知ってるのよね?詳しく教えてよ!」
言いかけた時に、運悪く授業開始5分前のチャイムが鳴ってしまった。
「大変だっ!こうしてはいられない!ここにいたらまた授業に出なくてはいけなくなる。悪いけど、僕はもうこの教室を出て行くよ!」
そしてセラフィムは無責任にもカバンも教科書も何もかも置きっぱなしで逃げるように教室を飛び出して行ってしまった―。
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