第105話 見張っていて

「それで?誰なんだい?オルニアスをこの世界に召喚したかもしれない人物って言うのは…」


教室の入口で2人で中を覗き込みながらセラフィムが尋ねて来た。


「ほら、あの真ん中の列の後ろから3番目の席を見て頂戴。眼鏡をかけて本を読んでいる女子生徒が見えるでしょう?」


「ああ…あの女子学生か。うん、誰か分った。彼女がオルニアスを召喚したに違いいない」


「え?やっぱりそうだったのねっ?!」


私の勘は正しかったんだっ!


「…と、ユリアは思うんだね?」


ガクッ


その言葉に脱力する。


「ね、ねぇ…紛らわしい言い方しないでくれる…?」


するとセラフィムは笑いながら言った。


「ごめん、ごめん…。ユリアがあまりにも真剣だったから、要望に応えてあげようかと思ったんだけど…。やっぱり僕には彼女がオルニアスを召喚した人物かどうか分らないよ」


「え?でもさっきは会ってみないと分らないと言ったじゃないの?」


「違うよ。僕は会ってみないと何とも言えないと言ったんだよ。つまり、会ってみないと分るかどうかも何とも言えない、という意味で言ったんだよ」


…どちらも同じ意味合いに聞こえるけれども…。


「ところで…やっぱり今のオルニアスがセラフィムの半身で出来ていると言うのは本当みたいね?何となく性格が2人共似ているもの。尤も彼の方がずっとセラフィムよりもひねくれているけどね?」


「それはそうだろう?何しろ彼は捻くれ者だったからね。だから堕天使として魔界に落ちてしまったんだよ。自分の意志で天使をやめて人間界へやってきた僕とは違うよ。でも…もうこうなったら本人に直接尋ねた方がいいかもね?」



その時…


「あの…中に入らせて貰いたいのだけど…」


声を掛けられ、振り向くと私たちの後ろに10人程の生徒の列が出来ていた―。




****


「…」


窓際の一番後ろの席に座った私はじっとノリーンの様子を伺った。彼女は真剣な眼差しで授業を聞いている。


…それにしても妙だ。先程ノリーンはジョンに会って、学校を辞めたと言う話を聞いているはずなのに、何故制服を着て授業を受けているセラフィムを不思議と思わないのだろうか…?


私は悶々とした気持ちを抱えながら授業を受け…午前中に授業は全く集中することが出来なかった―。





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