記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした

第103話 また来るからな

「わ、私は…べ、別に2人きりになんかなりたくないわよ」

まずい、声が震える。私の動揺がオルニアスに伝わってしまう。

「へぇ？つれないな。さっきは俺の事を好きだと言っただろう？」

オルニアスは何処か楽しげに私に言う。

「あ、あれはち、違うわよっ！ちょっとしたこ、言葉の綾よ！」

ゆっくりと後ずさりながら私は距離を取るも、オル二アスは迫ってくる。

「ふ〜ん。それじゃ俺の事を好きだと言ったのは嘘だったというわけか？」

「当然じゃないのよっ！」

大体何処の世界に自分を殺そうとしている人物を好きになれるだろうか？

「なるほど…。どうやら本心からの言葉のようだが…。そうか、俺はお前の事悪くないと思っていたけどな。それは残念だ」

ちっとも残念そうに見えないオルニアスに私は言った。

「だ、だったらもう私のこと殺そうなんて思わないでよ！そ、それに話聞いてたなら分かったでしょう？！私は王子の事好きでも何でも無いし、婚約破棄だってしたいんだからっ！」

「な、何だって…？」

突然背後で声が聞こえ、振り向くと顔が真っ青になっているベルナルド王子が立っていた。その隣にはセラフィムもいる。

「まさか、もう怪我が回復していたのか？油断していたよ」

セラフィムの言葉にオルニアスが不敵に笑う。

「ああ、お陰様でな。元を辿ればこの身体の元になっているのはお前自身だからな」

「おいっ！ユリアッ！い、今の台詞は本当なのか？俺の事は好きでも何でも無いっていう話は…そ、それで俺との婚約破棄を望んでいたのか？」

ベルナルド王子はどうでも良い話を持ち出してくる。

「わ、私知ってるのよッ！オルニアスを召喚したのが誰か…それに何故私が命を狙われているのかもねっ！」

私はセラフィムの背後に隠れながらオルニアスに言った。

「へぇ…？俺の本当の名前…もうバレていたのか？だが、お前にはジョンて呼んでもらいたいけどな？」

「おい！ユリアッ！今の話は本当なのか？！お前、あれほど俺に相手にしてもらいたくてつきまとっていたくせに…今は違うって言うのかっ？！」

「ベルナルド王子っ！少し黙っていて下さいっ！そんな話今はどうだっていいじゃないですかっ！」

「ど、どうでもいい…」

私の言葉に明らかにショックを受けるベルナルド王子。

「オルニアス。いい加減ユリアの命を狙うのは諦めて魔界へ帰ったらどうだ？ここはお前の居場所じゃないだろう？」

セラフィムの言葉にオルニアスは笑った。

「生憎、俺はもう本体を持ってしまったしな…悪いが魔界へ帰るつもりはないんだ。何しろ魔界にはユリアの様に興味深い人間はいないからな。ユリアが一緒に魔界へ行くっていうなら考えてみてもいいけどな」

その言葉にぞっとした。

「ちょ、ちょっとやめてよっ！さっきも言ったけど、私はもうベルナルド王子にはこれっぽっちも興味がないんだってばっ！だから私はもう恋敵じゃないんだから、安心しろって彼女に伝えてよっ！」

セラフィムの背後に隠れながら私は喚いた。

「おいっ！ユリアッ！お、お前…またそんな事言うのかっ？！」

するとオルニアスが言った。

「…気に入らないな…ユリア」

「え？」

「まぁいい…。今はは昼間で分が悪い。そのうち、また来るからな…覚悟しておけよ」

オルニアスはそれだけ言うと、あっという間にその場から姿を消してしまった―。