第15章 嫉妬

仕事を終えたわたしは、翔太と近くで待ち合わせをした後、2人で翔太の家に向かった。その間も、翔太は今日あった出来事を話していたが、わたしはいつものように返事をすることは出来なかった。

翔太の家に着くと、「アイスコーヒーでいい?」と聞いてきた。わたしが頷くと、座って待っててと声をかけ、翔太はキッチンへ向かった。アイスコーヒーをわたしの目の前に置くと、氷が涼しげに音がわたしの耳に響いた。隣に座った翔太が「なにがあった?」と声をかけてきた。わたしは少し黙ったあと、凛はまだ翔太の事を好きだと思うこと、もう会わないて欲しいと話した。それを聞いた翔太は少し黙った後、「凛は友達でそれ以上はないよ」とそうはっきりと言った。そして、凛と2人で会うことはないこと、会うときは仲間みんなで会っているから心配しないで欲しいと言ってきた。わたしは、「わかってる。翔太はわたしのことをちゃんと愛してくれてること。でもそうじゃない!」と自分でも驚く位はっきりとした声で翔太に伝えると、続けて「会わないっていう選択肢はないの?」と言った。翔太は「少し離れてはいたけど、辛いときも一緒に頑張った仲間だからね」とそう答えた。仲間…。その言葉がわたしの心をちくっと刺した。わたしの知らない翔太を凛は知っている。わかっている。そんなことは当たり前だ。だけど、頭では理解できても気持ちがいうことを聞いてくれなかった。翔太は「俺が信じられない?」と聞いてきた。わたしは、「信じたい」そう答えることしか出来なかった。そして、優しくわたしを抱き締めた。わたしは素直に翔太の胸に顔をうずめることができず、その腕をゆっくり払うと、今日は帰るねとだけ伝えた。翔太は小さな声でごめんと言うと、玄関まで見送ってくれたが、わたしは翔太の顔を見ることができず、そのまま黙って玄関の扉を閉めた。


家に着くと翔太からLINEがきていた。

「愛してる」

わかってる。翔太はちゃんとわたしのことを愛してくれていると。だけど…。

わたしは杏に今話せる?とLINEを送った。少しすると大丈夫だよと返信がきた。わたしは今日あったことをLINEで話すと、杏は「そっか。会わないという選択肢はないのかぁ。まぁ、友達って言われたらそうだけど、元カノだもんね」と返信が返ってきた。わたしはそれだけじゃなく、当たり前だけど、わたしの知らない翔太を知ってる。その事が頭から離れないと伝えた。「嫉妬だね」と返信が返ってきた。嫉妬…。そういった感情を今まで持ち合わせてなかったわたしは一瞬戸惑った。そして「嫉妬?」とそう聞き返した。杏は「そう。嫉妬。でもね、ほんとに誰かを好きになったら誰もがもつ感情だと思うよ。ただ、その嫉妬心が邪魔すると素直になれるものもなれなくなる」そう返ってきた。わたしは「やな感情だね」と言うと、杏は「それだけ翔太を本気で好きってことでしょ」と返ってきた。続けて「でも、その感情に囚われて、ほんとに大事なものを見失わないようにね」と送られてきた。わたしは、初めてもつこの感情に不安になりながらも、わかったと返信すると、杏は「また何かあったら連絡しておいで」と言ってくれた。わたしはありがとうと送りスマホを置いた。

その後、わたしは翔太に「家に着いたよ」と送るとすぐに既読がついた。「おかえり」そう返ってきた。わたしは今の自分の気持ちを素直に伝えた。翔太がわたしを愛してることはわかっていること、でも、凛の事を考えると頭ではわかっていても心が言うことを聞かないことを伝えると、翔太は「それを信じさせるのが俺がやらなきゃいけないことだし、そうさせてしまったのは自分だからだと」と。「ごめんね」そうわたしが送ると「ううん。俺こそごめんね」

わたしはお風呂入るねと送り、翔太からの返信を見届けるとスマホを閉じた。

嫉妬…。今までに感じたことのない感情。確かに今までのわたしは相手が、誰かと出掛けたとか、一緒にいたとか聞いても、特別な感情を抱くこともなかった。聞けばよかったねとか、楽しそうだねとか答えていたがそのくらいだった。でも、今は…。

「あー。やだ。」わたしはクッションに顔をうずめそう呟くと、ゆっくりと顔を上げ、その感情を抱えたまま、シャワーへ向かった。

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