第13章 恋衣
翔太の話が頭から離れることができずにいたわたしは、そのまま家に帰る気になれずいつものカフェに向かった。「いらっしゃい」と優しいマスターの声と、カランといういつもの音がわたしの心を優しく包んだ。わたしがカウンターに座ると、マスターが「いつものカフェでいいかな?」と優しく話しかけてきた。わたしが軽く頷くと、マスターはなにも言わずにカフェを作り始めた。「はい、どうぞ」とマスターが出来立てのカフェラテをそっとテーブルに置いた。1口飲み込むと同時に涙がそっと頬をつたい、ポタッとカフェラテの泡の上に落ちた。そして、わたしはゆっくりと今日あった出来事について話し始めた。マスターはなにも言わずに、それでもちゃんと頷きながらわたしの話を聞いてくれていた。そして、全て話し終えた後、「戸惑えば戸惑うほど、それは愛しているということ」とそう話し、受け売りですけどねと優しく笑った。わたしが軽く笑うと、マスター軽く微笑んでゆっくりとコーヒーを挽きはじめた。その優しい香りが、マスターの声がわたしの心をゆっくりと癒してくれた。
わたしはマスターのお店から出ると、翔太へLINEを送った。話を聞いて不安だったこと、それでも頑張って信じてみると伝えた。すぐに既読がつくと翔太から、「ありがとう。悲しい思いさせてほんとにごめん」と返ってくると続けて、「愛してる」と送られてきた。わたしも「愛してる」と送ると、ゆっくりとわたしの心が優しく満たされていった。
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