第12章 小さな不安
あれから、翔太は凛を含めた以前の職場の同僚と会うことが少しずつ増えていった。それと同時に、凛と会話することを目にする機会も自然と増えていった。わたしはざわざわとした感情が、音を立ててわたしの心の中に押し寄せてくるのを感じながらも、その感情を無視して仕事に集中するようにしていた。
いつものように、翔太と一緒に休日を過ごしていると、翔太が話しておきたいことがあると真剣な顔で話しかけてきた。どしたの?とわたしが尋ねると、
「凛の事なんだけど…ほんとは元カノなんだ」
わたしは一瞬頭が真っ白になった。翔太は、ずっと話そうと思っていたけど、わたしを不安にさせたくなくて、なかなか話すことが出来なかったこと、最近凛を含めた元同僚達と会うことが増えたことで、ちゃんとわたしに話さないといけないと思ったこと、今は友達でお互いそれ以上の感情はもっていないと話してきた。
わたしはそれらを聞きながら、絞り出すような声で、そうなんだ、としか答えることが出来なかった。翔太は小さな声で、ごめんねと答えた。だけど、一番大切に思っているのはわたしだからとそう伝えてきた。
わたしは、ほんとに友達なの?と尋ねると、翔太は「友達だし、それ以上の感情はないよ」とはっきりとした声で伝えてきた。でも凛は?ほんとに友達だと思っている?そう尋ねると、翔太は「凛もそうだと思うし、本人もそう言ってるよ」と答えた。わたしは、なんて言ってたの?と尋ねると「親友だって言ってた」そう答えた。わたしは、しばらく黙った後、信じるとだけ答えでも、2人で出掛けるときがあったら、それはちゃんと教えて欲しいと伝えた。翔太は「わかった。ほんとにごめんね」と言うと優しくわたしを抱き締めた。わたしは不安な気持ちに飲み込まれそうになりながらも、翔太の胸に顔をうずめた。
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