第8章 星の瞬く夜に

蓮と別れた後、ちょうど仕事も忙しかった事もあり、この1週間わたしは仕事に没頭した。ランチも1人で食べる事がほとんどだったが、たまに、杏と時間が合えば一緒に食べることもあった。今週、翔太はほぼ外勤で、会社にいることが少なかった。

週末、杏と仕事終わりが一緒だったこともあり、夕食を一緒に食べよういうことになった。わたしたちは

いつも行く隠れ家に行くことにした。仕事の愚痴をお互いにこぼしながら、お互いの仕事の近況を話した。しばらくして、杏が蓮とは?いつ暮らすの?といつものように聞いてきた。わたしの心臓がチクッと痛んだ。別れたんだとそう伝えると、杏は驚いた様子もなく、なんとなくそんな気がしたと言ってきた。わたしが驚いた顔で杏を見ると、杏は「翔太でしょ。2人の様子見てたらなんとなくね。つか、何年友達やってると思ってんの?わかるわ笑。それで?自分の気持ち伝えたの?」と杏に言われ、わたしは、まだ気持ちをちゃんと伝えてないこと、蓮と別れてすぐに翔太のところに行くのは、なんとなく申し訳ないと思っていることを伝えると、杏は、「あのね、人を好きになる気持ちは誰にも止められない。誰が悪いわけでもない。好きなんでしょ?翔太のこと。それなら、ちゃんと伝えなよ。翔太に。今の自分の気持ちを」はっきりと、そして優しい声だった。そして、その声は迷っていたわたしの背中をトンと押してくれた。わたしは杏に、翔太にLINEしてもいい?と聞くと、杏は待ってると思うよーと笑って言った。蓮との別れ話の後から、ずっとお互いにLINEをしていなかったこともあり、少し緊張しながらわたしは翔太にLINEをした。翔太と話したい。それだけを伝えた。すると、すぐに既読がつき、翔太から返信が来た。いつ会う?と。わたしは、今日会える?と返すと、翔太からいいよとの返事がきた。いつものカフェで待ち合わせすることになり、わたしは杏にその事を伝えると、今度奢りなよ!と言って笑った。


杏と別れてわたしは、すぐにいつものカフェに向かった。お店の前まで来ると、そこにはもう翔太が待っていた。わたしは、ごめんね、待った?と聞くと、大丈夫だよと優しい声が返ってきた。翔太の声を聞くだけで、わたしの心臓は不思議と落ち着いた。お店に入ろうとすると、翔太が近くに公園あるからそこに行こ?と言ってきた。わたしも無言でうなずき、翔太と一緒に歩いた。公園に着いたわたし達は、近くにあったベンチに座った。しばらく無言が続いた後、わたしは彼と別れたことを伝えた。翔太は黙ってうなずいた。そしてわたしは、初めて会ったあの日からずっと翔太の事がすきと伝えた。すると、翔太は優しく包むようにわたしを抱きしめ、俺も初めて会ったあの日からずっと好きだよと言った。わたしは、翔太の胸に顔をうずめて黙って頷いた。ほんとに、嬉しかった。ありきたりだけど、ほんとに幸せだなと思えた。

空を見上げると、星が瞬くきれいな夜だった。そして、思った。わたしはきっとこの夜を忘れないだろうと...。

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