第8話

 魔族領にて


「最近弱小王国での活動がやり難い」


そう呟くのは魔族の一人。


弱小王国とは猫を召喚した国のことだ。


その王国は小さいながらも勇者を召喚できる国として他国から容認されている。


魔族は魔族で人族を滅ぼす目的など無い。


長い寿命と多い魔力のせいで妬まれ悪と見做されただけだ。


此処しばらくはどこの国とも戦争はないし交流はないものの平穏に時は流れていた。


そんな平穏にヒビが入ったのは王国が勇者を召喚すると言う噂が流れてきたからだ。


調査の結果噂は本当だった。


だから実行する前にそんな余裕が出ないように治安を乱してやるつもりだった。


内戦が起きれば勇者どころではないはず。


少し前までは上手くいっていた。


ただこのところうまくいかない。


「なぜか行くとこ行くとこ三毛猫が現れるんだ。」


「俺もだ。ギルドで騒ぎを起こそうとしたら妙に迫力のある三毛猫が割って入ってきてな…」


「俺も俺も!市場で騒ぎを起こそうとしたら三毛猫に邪魔された」


「にゃーと鳴くだけなんだけどな‥なんかこう背筋が寒くなるんだよな」


「わかるわかる。あれなんなんだろうな」


うーんと首を捻っているとバンと扉が開いた。


「おい!!あの王国勇者召喚失敗したらしいぞ!!!」


「「「本当か?!」」」


「紋は光ったが何も出てこなかったらしい。これでこの代は安泰だ!」


勇者召喚は魔力がとんでもなくかかる。充電するのに数十年から百年は必要になる。


「ならあの王国はほっといても良いか。なんか君の悪い猫もいるし」


「そうだな。他の国に行くか」


猫たちの知らないうちに魔族からの干渉は終わることになった。

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