第16話 現実と理想

 私は、最寄り駅に到着した。駅から5分も歩けば家に着いてしまう。

 わざと遠回りをして帰ることにした。彼の声が聞きたい。

 電話を掛けてみたが、一向に出る様子が無く電話番号を間違えたのではないか

 そんな事を考えていると、「遅くにどうしたの?」と優しい声が聞こえた。

「家に...帰るのが怖くて」そう告げると、「気持ち分かるよ。俺がいる。頑張れ」と

 応援してくれた。不思議と勇気が湧いてきた。彼と一緒なら何事も怖くない。

 大袈裟だがそんな気がしてしまった。けれど、現実はそんなに甘くなかった。

現実は、両親がいて帰宅時間が遅くなったことに腹を立てているのか表情が

険しかった。いつもそうだ。これは、怒られる予兆だ。

いつも自分の意見を言えずに、一方的に責めてくる。そのせいで誤解を解くことが

出来ずに、いつまで経っても理解して貰えなかった。家に帰ったら勉強、そして

親からのプレッシャーが待っている。昨日みたいな日がずっと続けば良いのに。

そう思いながら机に向かった。

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