2話 小雪の嫉妬
「あー疲れたー」
「おいおい、朝から何情けない声出してんだよ」
朝通学路を抜け、学校に着いた蓮はぐったりとした様子で自分の机にうつ伏せになっていた。
それを見た暁斗は、さっきまでゲームをしていたからかやけに上機嫌な様子で蓮にツッコんだ。
「誰のせいだと思ってんだ。」
「いやぁ……まぁ、そのなんだ……あれだ……まじすんませんでした」
さっきまでニヤニヤしていた暁斗だったが、顔を上げた蓮に睨まれて反省した声を上げた。
蓮の言う通り、疲れていた理由は暁斗のせいであったためだった。朝登校前からゲームをしたのまでは良かったのだがその後が問題だった。
蓮のマンションの本日二度目のインターホンが鳴らされた。
「蓮ー?まだでかかりそうですか?入りますよ?」
インターホンを鳴らしたのは今度こそ、小雪だった。インターホンを鳴らしても反応がなかったため、小雪は静かに家の中に入った。
こういった事はたまにあるので、蓮からその時は家に入ってていいと言われていたからだ。
こういった時、基本的にリビングに蓮はいたため、小雪は蓮の部屋の方へと向かっていった。
もしや寝てるのではと思った小雪は蓮の部屋の前に着くと、コンコンと数回ノックをした。
しかし、 二人してゲームに没頭していたため、小雪が部屋に入ってくるまで蓮たちは気づかずに対戦を続けてしまっていた。
小雪はそれが不服だったようで拗ねてしまい珍しく怒った声で蓮たちに話しかけた。
「もう!!蓮!!早く行きますよ!!」
「うわっと!?小雪!?」
「あ、あちゃぁ……小雪ちゃん……」
小雪の声に反応して二人がドアの近くにいた小雪の方を振り向く。
そこには明らかに拗ねていた様子で頬を膨らませていた小雪の姿があった。
「むぅ……今何時だと思ってるんですか」
「「あ……」」
時計を見て、いつもより時間が遅いことに気づき、二人の声が重なった。
そして慌てて家を出る準備をして、三人で家を出た。
「全く……しょうがない人達ですね。今回だけですよ。今度は私も誘ってくださいね?仲間はずれは嫌なので」
「わかりました」
歩いている途中、先頭にいた小雪が二人の方を振り返る。
学校に行くまでの数十分間、 最初こそ拗ねていた小雪だったが、明らかに気を遣っている二人を見て、やれやれというような呆れた声で言った。
どうやら、許して貰えたらしい。
その後は、いつものように笑顔で話す小雪の姿を見られて蓮はほっとした。
もう学校に着くといったところで暁斗は「あ」と声を出して、小雪の方に近づいた。
蓮も近づこうとしたが、暁斗に待て、と言われたので近づくことができなかった。
蓮には聞かれたくないことらしく、仕方なくその場でその様子を見ることにした。
「ごめんな、蓮を独り占めしちゃって」
「……なっ!?ち、違いますよ!!」
「あれ?怒ってた理由って嫉妬じゃなかったの?」
「違いますから!!」
小雪の耳元で暁斗は蓮に聞こえないように小さな声で謝った。
小雪はそれを聞くと、顔を一気に赤くしてそのまま校舎の方へと走って行ってしまった。
「おい、お前何言ったんだよ」
「ん?内緒」
何やら満足そうな顔で蓮のもとへ帰ってきた暁斗に蓮はジト目で暁斗の方を見やった。
はぁ、とため息をこぼしつつそのまま暁斗と教室まで向かっていった。
「お前、あとでジュース奢れよ」
「へいへい」
思い出すだけでも疲れるような出来事だったが、その後逃げるように校舎へ駆け込んだ小雪と二人で帰ることを考えると蓮の胃は悲鳴をあげそうだった。
まず、暁斗が余計な事を何かしら言ってるのは間違いなかったので、暁斗は今日一日蓮にこき使われる
ことになった。
「ん〜暁斗、蓮、おはよ」
そんな中、眠そうといった様子で教室に入ってきた女子が二人に話しかけた。
話しかけてきた声の主は、暁斗の彼女である高山菜乃花であった。
それを見た蓮は本気で疲れた目をして、今度は勢いよく机に突っ伏した。
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