第十二曲 フレデリカと・・・
「うーん。難しいな。・・・言語体系は日本語に限りなく近いけど・・・」
私は1人、机の上に乱雑に置いた紙を前に頭を抱えていた。ヘレンのために歌を作るとは言ったものの、如何せん歌詞が難しいのなんの。あと20分もすればアイツラが来る。それまでに出来るだろうか?いや出来ない。現代人は忙しいのだ。そんな1分1秒争う中で作詞なんてしてる場合ではない。そんなわけで私は・・・
「いいや!」
だから僕は諦めた。とりあえずコロブチカの楽譜写しと歌詞のルビ、翻訳だけを即効で終わらせた。そのまま直行してヘレンの元へ。
「ごめんヘレン。流石にこの短時間で一曲仕上げることは出来なかった。」
「「・・・逆に仕上げようとしてたの」ですか?」
「まあ、ね。さっき歌ったコロブチカのルビと翻訳はできたから渡しておくよ。」
「もう出来たのですか?ありがとうございます」
「で、お母さんにこれ。曲の楽譜。ヘレンに渡した歌詞と同じ曲目でね」
「分かったわ。ありがとう」
「さてっと、そろそろ彼奴等来るし、準備しようか」
「「はーい」」
準備と言っても買っておいたお酒を出しておくことと、楽器を拭いておくことくらいなわけだが。
「こんな量のお酒、誰が飲むのですか?」
「半分は私とフェリカ他がグループ内の飲むメンバーよ。ちなみにフェリカはグループで一番よく飲むわ。」
「・・・・フレデリカ?」
「・・・ハイ」
「貴方未成年ですよね?お酒を飲むなと言いませんが量は減らしたほうが良いですよ。私の聞く限り、先代国王陛下もお酒の飲み過ぎで亡くなったそうですし。」
「・・・・ハイ」
ヘレンから説教を食らっていると玄関の叩く音が聞こえた。お母さんが迎えに行ってくれて姿を表したのは。
「一足先にお邪魔するぞ。フレデリカ」
「・・・なあーんでいっちゃん乗りで
義父であるエボロスさんだった。ちなみにオヤジ呼びはエボロスさんから「レグルスがれーくんなら私はなんと呼ぶ?」と聞かれたため「オヤジ」と答えた結果がこれだ。
「私だけだぞ?この家に仮とは言え部屋を持っているのは。・・・ところでそちらは」
「は、はじめまして!ヘレンと申します!お噂はかねがね伺っております!」
「紹介ありがとう。そんなに畏まらなくていい。同じ平民同士だ。何も失礼なんて思いやしないさ。」
「あ、ありがとうございます・・・。」
「・・・さすがは5大商会の一柱、ライザス商会を捌ききるだけあるね。もう伝わってんだ。ヘレンの廃嫡。」
「あいつはとことんバカだったようだ。娘を何かの駒としか思ってないような奴に貸す金など無い。」
「うへぇ。毒舌」
どうやらまたひとつ、貴族の家が消えるみたいだ。黒い笑顔を浮かべる義父。ヘレンは若干引いているが黒い微笑みが張り付いているのが分かる。例え廃嫡していたとしても私に娘を拾われる前に始末しておけば変わっていたかもしれない結末だ。まあ、娘のことを1つも愛さない家族なんて滅んでしまえばいいと内心思う。育児放棄、ダメ絶対!私生活ダメダメな神崎万葉でさえも分かっていたこと。実を言うと神崎万葉はかなりモテていた。女神に煽られてた時はカッとなったが実際童貞を卒業するタイミングは幾らでもあったのだ。なら何故なにもしなかったのか。そう、万が一何かあったときの責任が持てないと自覚していたのだ。あれ?自分で行って悲しくなるな・・・
「まあ、いずれ墜ちる伯爵家のことなんてどうでもいい。それ以上にお前に厄介なことが舞い込んできているぞ?」
「なに?貴族関係ならお断りだけど。」
「ネーデル・フランドン伯爵令嬢より、「ピアノの講師になってくれ」とのことだ」
「「は?」」
その言葉が重なったのは私とヘレンだった。まあ、意味は違うが。私は困惑に対してヘレンは驚きだ。
「ネーデル様が得意分野で教えを請うとは・・・よっぽど派手に打ち負かしたんですね・・・」
「まあ、ね?というか、貴族としてそれでいいの?平民に教えてもらうなんてプライド云々が許さないんじゃ・・・」
「知らん。私も断ったが土下座してきてなどうしてもって言うものだからな。折れるしかなかった。」
「うへぇ。プライドもクソもねぇや」
「そのプライドをへし折るどころか粉微塵にしたのはどこのどいつだ?」
「はいはい。私でござんすよ」と軽く受け流し了承することに。別に私は貴族でなければ重労働をしているわけでもない。ただの農民だ。基本的に暇がある。別に受けたところで問題ない。私がエボロスさんと話が盛り上がっている頃だった。
バンッ「邪魔するぞ!来てやったぞフレデリカ!」
「うるせぇ!ドアが壊れるだろうがッ!!ざっけんなよネレメス!!」
「・・・すまん」
「ああ、ごめんねヘレン。少し驚かせちゃったね。ほら、おまいら私の新しい姉に自己紹介をしろ。」
「ほーん。フレデリカとはまた違った可愛さがあるな。なんつーか、性格的なっていうか。」
「なんだあ?ヘレンは美人だろお!?」
「いや・・・それはそうなんだが・・・な?」
「お前目がなんとかって言ったら本気でぶっ飛ばすぞ?」
「それはない。俺らは貴族じゃねえんだ。そのきれいな目に嫉妬することなんざねえ。」
「よし。」
最悪ここでヘレンの目の話が出たらぶっ飛ばすつもりだった。こいつらがそんなことで差別しないのは分かっていたが念の為だ。
「ヘレン・・・呼び捨てで良いのか?」
「ええ。構いません。私も皆さんのことは自分の好きなように呼ばせてもらいますがいいでしょうか?」
「前言撤回、何だこのかわいい生き物!?フェリカ!!一体どこで拾ってきた!?」
「か、可愛い!?」
「お・ま・い・ら」
自己紹介もしてないのに照れさせるな。話が進まんくなるだろう。実際進んでないもの。
「はあ・・・事情は後で説明するからとりあえず自己紹介して。ネレメス以外も喋れ。」
「「「はーい」」」
段々言葉が乱暴になってきてる気がするのでその場はみんなで各々進行することにして、私は・・・
・・・ポンッ!
用意されていたシャンパンを1つ開けた。シャンパーニュ領で作られている比較的安価なシャンパンという、なんともまあ・・・おもろいこって。
「フェリカ?まだ始まってないぞ?」
「良いじゃん。流石に一本丸々飲むとかはしないから。アルコール入れて気分上げるだけだよ。」
「・・・・」
皆さん呆れ目。いや、ヘレン以外は私が酒豪なのを知ってる。いいじゃん!別に
そうこう私がコップ2杯目に入ったあたりで全員の紹介が終わり、各々楽器を取り出し始めた。
「とりあえず、
「良いわよ」
「大丈夫です」
景気付けに一発。ちなみにこのあとはれーくんとのデュエットかあってからのぶっ通し演奏。正直エグい。ちなみにこのセトリを組んだのはお母さんである。コロブチカに至っても私は伴奏だから全て弾くけどお母さんに関してはヘレンが歌うところは弾かない。今更私だけ演奏が多いなんて言わない。というか私が演奏したいからだし。
「ヘレンはやっぱり歌謡が良いわね。」
「そうですね。歌詞など作ってくれればまた歌いますよ。」
「それもそうだけどほんと、歌声きれいだなってってね」
「あ、ありがとうございます。・・・すいません。今まで目のことで色々言われても声のことで褒められることはなかったので・・・」
気づけばヘレンが泣いていた。流石に私達もその涙の意味が分からないような人ではない。演奏会の空気が少し暖かく感じる私であった。
―――――――
今度はシャンパンですか・・・なんというか、音楽よりもお酒要素のほうが多い気がしません?私の小説。
いつもお読み頂きありがとうございます。遅くなってしまい申し訳ありません。
さてさて、今日は雑談の時間が取れますね。
民謡・・・についてでも話そうかな?
今回取り上げたのはロシア民謡『コロブチカ』ですね。こんな時期にロシア民謡を出す私はどうかしてるか?
この曲、皆さん知っての通り、テトリスのBGMですね。祖母は学校授業のフォークダンスで踊ったそうですが・・・この曲って踊ります?段々早くなっていくこの曲で?・・・とまあ、フォークダンス自体あったか覚えてない私にはわからないですね。
まあ、ロシア民謡は日本でも有名なのが多いですね。カチューシャだったり一週間だったり。自分としては民謡だとフィンランド民謡が好きですが・・・あまり日本じゃ知られていないイメージがありますよね・・・
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