第四曲 水路と木工貴族

「そっちに4番の木材、12番を22番と接続して30番、31番の歯車を水車に接続、25番と26番の配管の間に46番挟んでももらって・・・」

「ちょっ!フレデリカ!追いつかないから!」


あれから1ヶ月ほど経ち、ある程度こちらの暮らしに慣れてきていた。

・・・そして今は・・・


「ごめんごめん。私一人じゃ流石に無理があったからね・・・」

「だとしても一気に指示出さないで!・・・・えーと?16番と35番と水車に接続だっけ?」

「30番と31番です・・・」


半ギレの母、ミーシャルと上水道を作っていた。農家の家にしては敷地が広いため、水道を作るだけでも一苦労。・・・と言ってもあとは井戸から水を汲み上げるためのポンプ設置だけだけど。


「はあ、こんな重労働を女性にやらすなんて・・・」

「私も女性ですよ。オカアサマ!」

「あなたすでに私よりも力持ちじゃない!」

「ひどい!?」


お母さんがこういうのもムリはない。私はこの一ヶ月でランニングや補強を毎日行っていた結果、ちょっとした筋肉ダルマになっている。普段はスタイルのいい少女といった風貌だが、着ているシャツとスカートの下には、山になっている上腕筋や、4枚に割れている腹筋が隠れている。


「万葉時代でもこんな筋肉ならなかったのに・・・」

「私としては畑仕事が楽になるから良いけどねえ・・・」


重労働させる気満々じゃないですかヤダー。


「・・・・農機具の開発も進めておかないと・・・・」

「あ!ちょっと!逃げるのはよしなさいよ!」

「・・・・はーい」


と、どうでもいい私の筋肉の話をしながら水道建設を勤しむ。お母さんの手際が良いことも相まって今日中には完全に終わりそうな所まで来ていた。水車の回転エネルギーを利用してポンプを動かす動作もうまく行ったためあと一息!と思った。・・・しかしやっぱり私はこうなのだと実感することになる。


「・・・57番が・・・無い!?」

「え、ええ。番号道理にしても57だけなかったわ。きっちりそこだけ抜けてるもの。」

「・・・買いにいってくる。・・・はあ、57番って・・・まじかあ・・・」


絶望!ちなみに57番は26番のパイプと27番のパイプにつなぐパイプで46番と26番を挟んでろ過装置を作る重要な接続部品だった。なければどうなってるって?蛇口ひねったら定期的に木炭と砂利が出てくるようになりますがなにか?


「じゃあ、買いに行ってくる。・・・マインツさん安くしてくれると良いな・・・」

「・・・・」

「どうしたの?お母さん?」


なぜか、木工屋のマインツさんの名前を出した瞬間お母さんの表情が変わった。青ざめるというより、驚く感じに。


「フレデリカ?そのマインツってバイエルン木工屋のマインツであってるかしら?」

「そうだよ?知り合いなの?」

「そうねぇ・・・久しぶりに彼に会ってみるのもいいわね。・・・私も行くわ。」

「は、はあ。・・・わかったよ・・・」


そうして、私はなぜかフィドルとフルートを持ったお母さんと一緒にマインツさんのところに行くのであった。



「うーす。マインツさんいるぅ?」

「ん?フレデリカじゃねえか。注文した部品に足りねえもんでもあったか?」

「ははは、ビンゴ。その通りだよ。あと、あなたに会いたい人がいるって言うから連れてきた。」

「俺に?いったいだr・・・・!?」

「久しぶりね、マインツ。」

「ミーシャル!?お前なんで?え?」


私の後ろに現れたお母さんを見た瞬間、マインツさん、もとい、バイエルン・フォン・マインツの顎が落ちる。

 マインツさんはバイエルン子爵家の三男で今年24歳、お母さんと同い年であった。跡取りの長男、スペアの次男と違い、三男であったマインツさんは貴族教育を詰め込まれることはなく、その結果自由奔放に趣味の木工、鉄工にドハマリした。16歳・・・この国の成人年齢で独立しバイエルン木工を開いた。その前から平民街に出ては作った自作工具や建築資材、家具など売り出していたみたい。


「もしかしてとは思うが、フレデリカってお前の娘か?」

「そうだけど?まさか知らなかったの?」

「いや、まあ、お前ににてるとは思っていたけどよ・・・」

「へぇ〜。一体この子はどんなことをしでかしたの?」

「本家の方の屋敷見て文句行った挙げ句、当主・・・兄上だな。兄上引っ叩いて国王に提出間近だった経理書を取り上げ、家内全員で半日以上掛けて作ったそれを2時間で作り直しやがった。正直こいつ平民かって家内全員思ってたし、今じゃ頭が上がんないからこの店もこいつには割引絶対的に適用になるし・・・ってところだ」

「失礼だな!ただ『瓦の置き方がおかしいから雨降ったら雨漏りしそう』って言っただけだし!しかもお兄さんに関しては平民の少女だからって鼻の下伸ばしてきたのが悪いし!書類に関しては明らかに無駄なセル多かったから作り直してたらバカみたいに計算ミスってただけじゃん」

「それを失礼っていうんだよ!平民ならそれわかっても黙っておくんだよ!普通はな!」


私がこの世界で最初に黙らした貴族、それがバイエルン家だと思う。いや、長男以外はいい人ばっかなんだけどね?・・・え?なんだって?長男はどうなのかって?正直11の少女に鼻の下を伸ばしている時点でアウトなんだよな・・・優しいのはそうなんだけど、ロリコンはお断りです!だから35にもなって独身なんですよ!


「・・・・まあ、なんだ。次はいきなり経理書取り上げるなんて真似すんなよ?」

「はいはい。で、部品のことなんだけど。」

「あいよ、どんなやつ?」

「これ、設計図」

「・・・明日までに仕上げる」

「お願いね〜」


57番の設計図を放り投げ、返事を聞いたあと、店を出ようとしたところをお母さんにとめられた。


「ねえねえマインツ?このあと時間有るのかしら?」

「・・・フレデリカの仕事以外は入ってないぞ?」

「じゃあ、久しぶりに私『メーデル』行きたいんだけど。」

「なぁ!?フレデリカは!?」

「私の娘よ?舐めないで頂戴。」

「・・・・わーったよ。ただし、管理人が認めるかは正直わからんぞ?」

「いいわ。じゃあ、さっさと準備してくれるかしら?」

「ヘーイ」


ごめんなさい。正直何の話をしているのか全く以てわかんないです・・・

マインツさんもそのまま準備しに行くのはやめてください。せめて説明しやがれください。


「さてっと、フレデリカ、これ持っておきなさい。」

「あ、そっち関係なんですね。いやうっすら気になっていたけど・・・」

「そうねえ。いまから私とマインツが出会ったところに行くわ。あなたは絶対そこで使うことになるから、今のうちに持っておきなさい。」

「はーい」


なるほど、音楽が趣味とは言っていたような言っていなかったような・・・

まあ、おそらく何かしらの楽器が出来るのでしょう・・・

私は彼が来るまで待つとしますかね・・・・

 待ち時間20分・・・なげえ。この世界の貴族では短い方、平民としても普通くらい。ぜってぇこの世界の人達は俺達の行きてた現代は生きれねえと思う。まあ、この世界に関しては普通であるが・・・


 そうして待つこと20分ジャスト。いつもと違いスーツをラフに来たような格好で、背中には楽器ケースが有る。大きさと形状からしてアコーディオンという事は分かった。


「へえ~。ピアノ?ボタン?」

「おいおい、なんでケースの形で分かるんだよ・・・・。」

「ま、これでも結構やって来てるからね。音楽は。」

「そうか・・・。余計楽しみになってきたな。よし、出発するか」

「ほーい」

「はーい」


さて、私はどこに行くのでしょう?・・・・私自身にもわかりませんね、ハッハッハ!


――――――

マインツの年齢が26歳になっていたので24に訂正しました

・・・申し訳ありません・・・


お読み頂き有難うございます。

音楽要素皆無!・・・ってことで新メンバー回でした!フレデリカが物理と知識で黙らした子爵家の三男坊でございまする。ちなみに多才無双しているフレデリカですが、神崎時代は色々と取ってたんですよね。

若い順に行くと珠算三級、暗算二級、英検二級、漢検二級、日本語一級、秘書三級、簿記三級ですね。なにげに色々とやっているの草w

まあ、神崎万葉に関しては料理がうまくてお菓子も作れるため、友達の結婚式でウェディングケーキを作ったり、ホントは掃除、整理整頓が上手くて学生時代に掃除屋のバイトで褒められたりと、多才的なエピソードは結構経ったりするのですが・・・まあ伏せてたほうが面白くなりそうなので伏せておきましょう。

あれ?雑談の尺がない!?

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