第2話 ラウンドキャラクター、セミラウンドキャラクター、プレイトキャラクター

今回は登場人物の作り方における代表的な概念、

『ラウンドキャラクター、セミラウンドキャラクター、プレイトキャラクター』

日本語に直すと、

『円形人物、半円形人物、扁平人物』

について記述していきます。


■登場人物の分類

・主役、脇役、端役

    ↓

 その役割とは?


・主役 ⇒ テーマを語る。主役を通じて物語は描かれる。

・脇役 ⇒ 主人公との掛け合いを通じて、主人公の感情を表に出させる。

・端役 ⇒ あるシーンでのみ必要。


■『セリフは嘘つき』


   主人公は何の前触れもなく女友達に対して、

主人公:「お前のことが好きだ!」


   ↑

  嘘くさい


 ここに女友達(脇役)との掛け合いを入れてみる。


女友達:「ねぇ、私の親友からの告白を断ったって、本当なの?」

主人公:「そ、それは……」

女友達:「ちょっと酷くない? あの子、傷ついてたんだけど!」

主人公:「で、でも仕方がねぇだろうが」

女友達:「仕方がないって何よ。あの子のこと、そんなに嫌いなの?」

   女友達、ハッとして、

女友達:「それとも……他に好きな子がいるとか?」

主人公:「そ、それは……」

女友達:「初耳なんですけど~。誰なのよ……言いなさいよ~!」

   主人公、顔を真っ赤にして、

主人公:「そ、そんなわけねえだろ。勝手な想像すんな、ブス!」

   と立ち去る。女友達、憮然として、

女友達:「な、なによ……やっぱあんたって最低!」


 この方が雰囲気が出ると思う。

 主役から好きという感情を引き出すためには、その役割を担う脇役が必要である。

 脇役はそのために存在する。


〇余談A

 小説ならば主役の心境は地の文で書ける。


例:

 主人公は女友達から、「なぜ親友の告白を断ったのか」と問い詰められた。しかし彼は女友達こそが本当に好きな人なんだと素直に言えないものだから、ほとほと困り果ててしまった。


 小説ならば上記の書き方でOKだと思う。

 しかしシナリオは映像作品のためにある。

 シナリオはカメラに映らない感情を描くことはできない。

 そこで脇役などとの掛け合いや、それを彷彿させる行動や仕草(隠喩、シャレード)が必要となってくる。

 それをどう盛り込むかがシナリオライターとしての腕の見せ所である。


〇余談B

 『主役がテーマを語る』とはどういうことか?

 作品はお金を稼ぐためだけに生まれたわけじゃない。

 作者から観客、もしくは読者に伝えたいことがある程度含まれている。

 だがそれを直接伝えられても、全く響かない。


例:テーマ【片思いとは苦しいものだ】


 前述の『セリフは嘘つき』にも通じるが、直接的にそんなことを言われても観客は、「あっそ、ふ~ん」「でしょうね」となる。

 この場合は主役が実際に、片思いによって悩み、傷つき、それを乗り越えていく様を見せる方が伝わる。

 優れた作品は、主役の生き様や言動、アクションを通じてテーマを伝えようとする。その芸術自体を人は『ドラマ』と呼ぶ。


■円形、半円形、扁平

 観客は主役の言動を通じて変化していく物語を楽しむ。

 主役は魅力的な人物でなければならない。

 魅力的とは何か?

 一説には『二面性』が大切とされている。

 スーパースターの私生活が見れるとファンは喜ぶ。

 弱かった主人公が成長して強くなり、強敵を倒すと「よくやった!」と言いたくなる。

 『私生活、公の場、未来、過去』など、多くの一面を持つ人物は魅力的だ。

 その考えはキャラクターの設定を考えるときに役立つ。

 その考えを応用するなら、主役には以下の面を併せ持つキャラクターといえる。


        未 来

         ↑

    私 ← 主 役 → 公

         ↓

        過 去


 『未来』とは、物語が進むにつれ主人公がどう変化していくのか。

 『過去』とは、物語が始まる以前に主人公に何があったのか。

 『公』とは、仕事や社会生活での主人公の様子。

 『私』とは、私生活や親しい友人、家族、恋人の前での主人公の様子。


 "全方位隙の無いキャラクター"という意味で、『円形人物』……すなわち、『ラウンドキャラクター』と呼ばれる。


 脇役は主役より目立つのは避けるべきである。

 例外もあるが、一般的には脇役が主役より目立ってしまうと、どちらが主役なのか、これは誰の話なのかと観客が混乱してしまうからだ。

 作品は、主役を通じて作品を観せる、作者の言いたいこと(テーマ)が伝わるように設計されている。

 主役の座を脇役に奪われてしまっては、作品が破綻しかねない。

 よって脇役は主役よりも多彩な一面を併せ持つ必要はない。持っていてもいいが、見せる必要はない。

 脇役のキャラクター像は以下のようなものが相当である。



        未 来

         ↑

    私 ← 脇 役 → 公



 過去を落としたのは、主役と共に変化していく未来を残したかったからだ。

 ドーム状の半円形に見えるので、『半円形人物』、『セミラウンドキャラクター』と定義されている。


 端役はもっと簡単でいい。

 その場限りの出演なので、何なら名前すらなくていい。



    私 ← 扁 平 → 公



 上の通り、平べったい構造となるので、『扁平人物』、『プレイトキャラクター』と呼ばれる。



■まとめ

・登場人物は主役、脇役、端役と大別される。

・キャラクター設定は、主役を最も作り込む。それによってどの人物よりも魅力的に描けるポテンシャルを持たせる。

・主役は『未来、過去、公私』と隙なく作り込むこと。

・主役よりも脇役が目だったり、作り込みすぎたりして、話の軸やテーマをブレさせてはいけない。



 以上となります。次回をお楽しみに。

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