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高度、1万メートル。四機は見事なフィンガーチップ編隊を組んだまま、予定通り北上する。フィンガーチップ編隊は、一番前が1番機、その右後ろに2番機、左後ろに3番機、3番機の左後ろに4番機が並ぶ隊形で、右の手のひらの人差し指から小指にかけての爪先の並びの形に似ているため、そのような名前が付けられている。
本来は編隊飛行が出来るようになるまでにも、かなり訓練が必要になるのだが、アイの助けを借りることで彼らは
今回の彼らのミッションは、千歳基地が訓練空域として使っている
右も左も前も後ろも、見渡す限り濃紺の空。巧也は今それの真っ只中にいた。真上を見上げると、昼間なのに黒々とした空間が広がっている。加藤三佐の操縦するF-15の後席で見た空と同じ色だ。巧也は三佐の言葉を思い出す。
”それだけ宇宙に近づいた、ってことさ”
そういえば、宇治原三佐も「君は宇宙飛行士に向いているかも」なんて言ってたっけ。宇宙か……行けるものなら行ってみたいな。本気で宇宙飛行士、目指してみようか。航空自衛隊のパイロットから宇宙飛行士になった人もいるんだし。
そんなふうに巧也がとりとめも無く考えていた、その時。
警告音。
「どうしたの、アイ?」
「敵性レーダー波をキャッチしました。8時の方向です」
「!」
巧也の体に戦慄が走る。
「アイ、敵の機種は?」
「現在特定中です」
レーダーの電波の波形は機種によって微妙に異なっているので、キャッチしたレーダー波の波形を解析することで、相手の機種を特定することが出来るのだ。
ナビゲーション画面で現在地を確認。
再びレーダー警告音。
「今ので特定出来ました!」アイが嬉しそうな声で言う。「89%の確率で、敵無人機、タイプSです!」
タイプSは最近よく領空侵犯してくるという無人機だ。だが、かつて巧也が実機テストの時に遭遇した不明機とは全体的に形が異なっていた。それでもステルスであることには変わりなく、レーダーによる探知は困難。そのため、前触れなしにいつの間にか領空内に出現しているという。ただし、エンジンが一つしか無い単発機なので速度はF-23Jより遅い。ここは逃げの一手だろう。
『スカルボ01フライト、
絵里香からの無線通信だった。巧也は思う。さすがエリー、正しい判断だ。
『ツー』
「スリー」
『フォー』
三人が次々に了解を告げる。巧也はスロットルレバーを
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四機が
またも、レーダー警告音が鳴ったのだ。
「!」
巧也はHMDに表示されているレーダー警告画面に視線を移す。そこには機体を上から見たシルエットが描かれており、レーダー波の方向が分かるようになっていた。今、レーダー波を受信したのは……0時の方向。真っ正面だ。先ほどの敵なら彼らよりも後ろにいるはず。ということは、新たな敵なのかもしれない。彼の背筋に冷たいものが走る。
「アイ、相手の機種は?」
「同じです。タイプSである確率、93%。しかも先ほどよりも電波が強いです」
……!
巧也は唇を噛む。電波が強い……つまり、より距離が近い、ってことだ。はさみ撃ちにされたのか……罠にはめられたな……
しょうがない。間に合うかどうかは微妙なところだが、基地に連絡して助けを求めるしか無いだろう。エリーもそう考えるに違いない、と巧也は思っていた。の、だが……
『スカルボ01フライト、どうやらはめられたようね。こうなったら、前方の相手を突破するより方法はないと思う。戦いましょう』
それが絵里香の判断だった。
「無茶だよ!」思わず巧也は無線の送信スイッチを入れる。「ぼくらは今日が初めてのフライトなんだよ? 今まで実機で空中戦なんかしたことないんだから、基地に支援を頼もうよ」
『でも、いずれ体験することじゃない? だったら早いほうがいいよ。それに、私たちもシミュレーションでは空中戦を体験しているわけだからね。タイプSとだってシミュレーションの中で何度も戦ったじゃない。だから、きっと大丈夫よ』
「……」
リーダーの絵里香にそう言われてしまうと、巧也もそれ以上何も言えなくなってしまう。
「分かったよ、エリー。だけど、もし向こうが気づかずに通り過ぎてしまったら、その時はそのままやり過ごそう」
『ええ、もちろん。他の皆も、いい?』と、絵里香。
『俺は別にいいぜ』と、譲。
『ちょっと怖いけど……私も、みんなが戦うんなら……戦う……』と、しのぶ。
『それじゃ決まりね。私とシノが先行する。タクたちはカバーをお願い。いい?』
「了解」
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