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「ええっ! それ、マジなんですか……」
そう言ったきり、巧也は言葉を失う。
「マジもマジ。大マジよ」と、町田二尉。「恥ずかしいからと言って我慢してちゃダメ。下手したら腸がパンクしちゃうかもしれないからね」
「……」
食堂。食事を終えた巧也と絵里香は、午後の低圧試験について町田二尉から説明を受けていた。そこで二人はショッキングなことを聞かされたのだ。
高い高度では気圧が低くなる。と言っても旅客機の
そのコクピットの低圧状態に耐えられるかどうかをテストするのが午後の試験なのだが、気圧が下がると腸内のガスが膨張し、腹がふくれてくる。ガスを放出しないと彼女が今言ったようなことになる、というのだ。しかし、腸内のガスを放出……それは即ち、オナラを意味する。低圧試験は数人同時に訓練室に入って行うので、試験を受ける人間は他人の前でオナラをすることになる。二人とも、それには非常に抵抗感があった。
「大丈夫よ」町田二尉がいたずらっぽく微笑む。「酸素マスクをつけてる限りは匂いは感じないし、戦闘機パイロットなんて空に上がればみんな平気でブーブーやってんだから。そうしないと命にかかわるからね」
「で、でも!」絵里香が顔を赤くして声を上げる。「基本、戦闘機パイロットは空では一人じゃないですか。だけど私……人前で、そんなこと……」
「そうね。女の子なら恥ずかしいわよね。分かる分かる」
町田二尉が何度もうなずくのを見ながら、巧也は心の中で呟く。
”男だけど、ぼくだって恥ずかしいよ……”
「一人ずつ試験を行う、って言うのはダメなんですか?」
絵里香が言うと、町田二尉は残念そうに首を横に振った。
「ごめん、無理なの。それやってたらすごく時間かかっちゃうからね。でも……一応、午後の試験は男女別になるの。周りは女の人だけだから、それでなんとか……許してもらえない? 川崎さん」
そう言って町田二尉が両手を合わせると、絵里香は少し安心した顔になる。
「そうなんですか……女の人だけだったら、まあ……いいかな」
"よかった……"
巧也は心の中で胸をなでおろす。彼としても、絵里香の前で自分がオナラをするのはさすがに嫌だった。まして、女の子の絵里香はもっと嫌だろう。
「あ、そろそろ時間ね。行きましょうか」
町田二尉が立ち上がる。
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