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「ええ」町田二尉がニコリとしてうなずく。「今のところ、有力候補は君を含めて四名。男の子二人、女の子二人。もし全員が引き受けてくれるとしたら、ちょうど一個小隊が組める。機体は予備を含めて五機あるから、十分ね」
ということは、もし引き受けたとしたら他の三人とも顔を合わせることになるのか。どんな人たちなんだろう。おそらく自分と同じDFユーザーのはずだから、「空」で出会っているかもしれない。そう考えた巧也は、ふと、気づく。
”そうだ……「ノブ」も、確かぼくと同年代だ。ひょっとしたら彼に出会えるかも……”
それは巧也にとって、かなり魅力的なことだった。”ノブ”はとても気が合う相手だ。一度会ってみたいと思っていた。だけど……学校友達との付き合いも彼には大事だった。
「もしぼくがパイロットを引き受けたとしたら、これからもこの中学校に通うことになるんですか?」
巧也が問いかけると、町田二尉は顔をしかめる。
「……それは、残念ながら無理ね。今度新設される君らの飛行隊……『
ああ、やっぱり学校の友達とはお別れになっちゃうのか。巧也はがっくりする。
「それって、いつまで続くんですか? ぼくはそのままずっと北海道にいなきゃいけないんですか?」
「そうねぇ……まあ、少なくとも半年はそうなるかしらね。だけど、君だって高校受験しなきゃならないものね。一応、今の予定では来年の三月には部隊を解散して、君はここに戻ってくるってことになると思う。だけど、その間全然中学校の勉強をしないわけにもいかないから、基地内に臨時の中学校を作るの。もちろん生徒は君も含めた例の四人だけ。私もそこで先生をする予定よ」
そう言って、町田二尉が自分の顔を指さした。
「こう見えてもね、中学と高校の理科の教員免許持ってるんだから。他の科目も、ちゃんと専門の教員を用意するからね。一応クラス担任は、私」
なんと。こんな母性豊かで優しそうな、しかも美人の先生が担任になってくれるなんて……
巧也の心が動いたのに気づいたのか、今度は山本先生がしかめっ面になる。
町田二尉はさらに続けた。
「それから、これは極秘プロジェクトだから、基地に入ったら君らの外出はかなり制限されるの。基本的に基地からは全く出られない、と思ってほしい。ネットも電話も使えないし、寝泊まりするのは基地内の宿舎の中よ。でもご飯はちゃんと三食食べられるし、生活には何の不自由もないわ。もし必要なものがあったら言ってもらえれば買ってあげる。もちろん何でもOKじゃなくて、本当に必要じゃなかったらダメって言うこともあるけどね。一応私も寮母として毎日宿舎に寝泊まりするから。何か悩みがあったらいつでも相談に乗るよ」
”……ってことは、一日のうちかなり長い時間、この美人の顔を見て過ごすことになるのか。それ、悪くないかも……”
とは言え、学校友達との付き合いと比べると、どちらが魅力的だろうか。今の巧也には判断できなかった。ただ……だんだん、自分の気持ちがパイロットの方に傾いていくのを彼も感じていた。
「そうそう、これは言っておかないとね」思い出したように町田二尉がうなずく。「君がパイロットを引き受けてくれるとなると、君にも当然いろいろな特典が与えられるの」
「特典? どんな特典ですか?」
確かに、中学生だからって全くタダ働きで戦闘機パイロットをさせる、というのもおかしな話だからな。それは聞き逃せない。巧也は耳を澄ませた。
「まず、君には金銭的な報酬が出る。そうね……まあ、同年代の売れっ子の子役タレントのギャラくらいは出ると思って。もちろん君に直接じゃなくて、君の両親にお支払いすることになると思うけどね」
「……って、具体的にどれくらいですか?」
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