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「いやいや、待ってくださいよ」巧也は右手を上げて押しとどめる仕草をする。「そりゃ、興味はありますけど……本当の、本物の戦闘機に乗るんですよね?」


「ええ。もちろん」


「普通、パイロットになるためにはかなり訓練しないといけないですよね?」


「そうね。だけど、君はDFのユーザーなんだから、基本的な操縦法はもうマスターしてるわけじゃない」


「でも、本物の飛行機は、やっぱりゲームとは違うんじゃないですか? ゲームではうまくいっても、本物の飛行機が操縦できるとは限らないんじゃないですか?」


「その辺りはね、あまり気にしなくていいの」


「気にしなくていいんですか!」思わず巧也は大声になる。


「ええ。F-23Jはとても高性能な AI を積んでいるからね。たとえ君がおかしな操縦をしたとしてもちゃんと修正してくれるし、着陸なんかも全て自動操縦で任せることができる。だから、君の操縦技術が未熟だったとしても何の問題もないのよ」


「……」


 なんだか納得できない。しばらく考え続けた巧也は、その理由にようやく思い当たる。


「それ、ぼくが乗る意味あるんですか? そんなことができるんなら、全部 AI に任せてしまえばいいんじゃないですか? 実際、無人機ドローンってそういうものですよね? F-23J をドローンにしてしまえばいいんじゃないですか?」


「……見かけによらず、鋭いところを突いてくるのね」町田二尉が苦笑を漏らす。「確かに、初めの頃はそういう話もあったんだけどね。でも、それじゃ敵のドローンに勝てない。さっきも言ったけど、ドローンに勝つためにはね、常識にとらわれない『バカ』な考えが必要なの。我々はそれを君らに求めているのよ」


「……そういうことですか」


 やっと理解できた。だけど、まだ気になることはたくさんある。巧也は問いかける。


「でも……ぼくらが戦闘機に乗って戦う、ってことは、実戦なんですよね? やられたら……死んじゃうんですよね? ゲームと違って」


「もちろん、危険が全くない、とは言えないけど……実はね、F-23J はかなり丈夫に作られているの。最新の複合ふくごうカーボン材料が機体に使われてるからね。だからミサイルや機関砲の直撃を受けても簡単には墜落しない」


「へぇ……」


「そして、君も知っての通り、F-23Jは超音速巡行スーパークルーズが可能でしょ? 逃げ足がすごく速いから、危ないと思ったらさっさと逃げればいいし、君がそう判断しなくても、本当にピンチになったらAIが自動的に判断して戦場から離脱するようになってる。いよいよ機体が危なくなったら、自動的に脱出させるようにもなってるのよ。脱出装置も新開発で、安全性がかなり高められてる。だから君は何も心配しなくていい。君たちみたいな未来ある青少年を簡単には死なせないから。そうじゃなかったら戦闘機に乗せたりはできないでしょ」


「……そうなんですか」


 この人の言葉は本当なんだろうか。完全に信じることはできないけど、仮にも国に勤めている人の言うことなのだから、まるっきり嘘ということもないだろう。巧也はそう判断するのだった。


 これで二つの大きな疑問の答えは得られた。だけど、巧也にはまだ聞きたいことがいくつもあった。


「ぼく以外にも、パイロットになる中学生はいるんですか?」


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