第八章 山手線の反対側、ブラジル
人は果たして、人生をかけてまで伝えたいメッセージというものを持てるものなのだろうか。僕は問題意識というものが薄いから、そんなものはもてる自信がない。それはどんな人が持てるものなのだろうか。
翌日、セナウルスがなくなったというのをニュースでやっていた。僕は驚き、急いで塾へ向かった。
教室に入ると日隅は一人泣いていた。そして、後ろの席に座っている女子たちがそれを見てくすくす笑っている。
「日隅さーん、何泣いてるのー?」
「先生に振られちゃったー?」
「なんか言い返してきなよー前みたいにさー」
僕が止めに入ろうとすると、日隅は出て行ってしまった。僕は仕事を忘れて日隅を探した。正直仕事なんてどうでもよくなっていた。しかし、どこを探していいかもわからない。町中を探したが、見つからないので家に帰った。
日隅はいったいどこに行ってしまったんだろう。僕のほかに日隅の意思を知っている人物は僕の知る限り、ダイヤモンドだけだった。
「ダイヤモンドさん、日隅がどこに行ったか知りませんか?」
「私はただの人ですので、そんなものはわかりません。ただ、あなたは予想することができるはずです。」
日隅はきっとセナウルスを信じていて、世界が変わる真実が発表されるのを心待ちにしていた。しかし、発表される前に死んでしまった。だから、それに心が耐えられなくなり、いじめにも屈してしまった。しかし、逃げたのではなく何かを探しに行ったという可能性もある。日隅が前に言っていたのは山手線とブラジルの話だ。セナウルスが伝えたかったものはそれに近いのかもしれない。ブラジルに行った可能性は大いにある。僕は急いでブラジル行きのチケットを取った。
「お母さん、僕明日からブラジルに行くから。」
「ええ?仕事はどうするの?」
「そんなものはどうにでもなる。もっと大事なことがあるんだ。」
「今、再就職がどれくらい大変かわかってる?」
「再会はもっと難しいよ。」
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