第七章 マルチクリエイターセナウルス

日隅が曲を聴きながら教室に入ってきた。

「あれ、日隅、音楽聞かないって言ってなかったか。」

「私は意味のある音楽なら聴くよ。」

「意味のある音楽っていったいなんだ?」

「マルチクリエイターセナウルスって知ってる?」

「いや、知らないけど。」

日隅は目を輝かしてセナウルスとやらの話をしてくれた。

セナウルスは一般的なポップミュージックをうたっていたり、流行りに乗った絵やみんなが安心して笑えるお話を作っていたりするらしい。いわゆるマルチクリエイターってやつだ。しかし、あるうわさがあり、彼が今まで作った作品とこれから作る作品のテーマをつなげるとこの世にはない、世界を変えるものになるといわれている。日隅によると、完成までもうあと少しらしい。日隅はそれを心待ちにしているといっている。

日隅が噂話を信じるのは意外だが、本人なりに分析した結果でもあるのだろう。


「今のところわかっているのはね、彼の作品をつなげると、山手線の駅についての情報が順々に出てくるということなんだ。そして、それを裏返すと、ブラジルを指しているんだよ。ここまでが事実で、ここからが私の妄想だけどきっと大昔は山手線の中だけに人が住んでいたんだよ。あの円内だけにね。その外は全部異世界に通じていて、外に出ると、どこかに飛ばされちゃうんだ。でも、人口は増えていくから円をちょっとづつ増やさなくちゃいけなくてそれでどんどん広げていって山手線の円が地球を一周したその場所にブラジルがあったんだよ。だからきっとブラジルには何かある。」

「今なら少しだけど、信じられるかもな。」

「信じるのも、信じないのも正しいんだよ。だけど、信じるのを強要することだけは信じてはいけないと思うんだ。私も強要しちゃってるんだけど。」

また一つ経験値が増えた気がした。

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