第五章 聖水との出会い、住職の感動
「で、どこに行くんだ?」
「神社。」
「なんで神社?」
「神社で信じられてることは、一般常識からは遠く離れてるでしょ?だから行くんだよ。」
「わかったよ。」
いざ神社の前に来てみるとなんだかすごい空間だなと思ってしまった。今までは行事の時とか家族と一緒にとかでしか来なかったから、こんな意味不明な目的で来ると不思議な感じがする。異世界と通じているような、何か起こるんじゃないかみたいなざわめき。
「なんか、ワクワクするな。」
「お、チャンドラもわかってきたね。知らないことにはワクワクしてもいいんだよ。」
「ここで何をするつもりなんだ?」
「まずは、聖水を飲む。」
「聖水ってなんだ?」
「ほら、手を洗ったり、口をゆすいだりするやつ。」
「ああ、あれか。」
「昔おばあちゃんに教えてもらったんだ。神社の聖水には外界から身を守るベールを張ってくれる効果があるって。」
「穢れを落とすものじゃないのか。」
「そういうことでもある。」
「まあ、飲んでみなよ。チャンドラ。」
手を聖水で洗い、手ですくって飲む。力がふつふつとわいてきた。根源的な人間の力。生物としての力。欲望。くだらないしがらみに縛られていた心が少しずつ本来の姿を取り戻していく。そんな感覚。
「どう?」
「すごいね、これ。」
「きっと少し、成長したはずだよ。」
「確かに、経験値を得た。」
「効果は少ししか持続しないから、毎日飲みに来るといいよ。」
「わかった。お参りもしていく?」
「私は神になんて興味はないから、いいや。」
「興味ありそうなのに。僕は今ので、興味がわいた。」
この神社の人らしき人がこちらに近づいてくるのを見つけた。
「私この神社の住職の堅石というものなんですけどね。その少女と話がしたい。いいですかな?」
「ああ、はい。おい、日隅。住職さんが話がしたいって。」
「わかった。」
「さあ、中へ入ってください。」
神社の建物内へ案内された。
「チャンドラ、私ここ嫌いだ。」
「ほほほ。同族嫌悪というものですかな。」
「え、どういうことですか?」
「で、話って何ですか?」
「いやあ、まずは私が住職になろうと思った理由でも話しましょうか。」
「早くここ出たいんだけど、ダイヤモンド。」
「ダイヤモンド?」
「堅石だからダイヤモンド。」
「それで、話始めて。」
「ほほほ。私は、小さいころから知らないことを知るのがすごい好きでね。いろんなことを調べました。実にいろいろなことです。しかし、それらのどれを突き詰めて考えていっても、最後にはわからないことに出会うんです。私はそのことを神だと思いました。ですから、いろんな大学に行って神の研究をして、いろんな場所に行ってその土地の神について知りました。ですが、神の実態を知ることはできませんでした。ですから、少しでも近づこうと住職をはじめ、毎日神と対話しようとしています。ですが、今日神を発見しました。それが、あなたです。」
そういって、ダイヤモンドは日隅を指さした。
「そうだね、ダイヤモンドにはそう見えるかもね。」
「どういうことなんだ?」
「これからはあなたのことをソルと呼ばせていただきます。今まで、実に多くの客を見てきましたが、多くが神から恩恵を授かろうとするものばかりで、退屈していました。神に興味を示さないのに、それだけのパワーを持っているソルについていきたいと思ったのです。」
「私はダイヤモンドみたいな人には興味がないんだよね。従えても意味がない。しなきゃいけないことは変化を起こすことだから。」
「おお、それでこそソルです。私は今日、住職をやめソル教団を作ります。」
「勝手にすれば。そんなことに意味はないと思うけど。」
そういって日隅は外に出て行ってしまった。
「ご、ごちそうさまです。失礼します。」
「ほほほ。あなたは正統宗派といった感じでしょうか。いずれは私とまた出会うでしょう。」
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