第4話目 〜疑惑の神器〜

 明仁は匿名での鑑定依頼を受け、英雄堂から離れていた。


 詳しい場所は分からないが日本である事は間違いないだろ、何故何処か分からないかと言うと移動の際、目隠しをされていたからである。


「失礼、アキヒト」


「失礼だと思うならいきなり連れ去らないで貰いたいんだけど」


「こちらとしては、あまり情報を与えたく無いの…貴方の為にもね」


「はぁ、またですか…キャサリン」


「ふふふ、久しぶりね…アキヒト♪」


「犯罪的な事は辞めて欲しいんだけれどね、レティスが怒るよ」


「ふん、あの子いつも余裕ある感じで私に接してくるからいい気味よ」


「キャサリン、この前だってレティスを怒らせて…」


「あれは、相棒の調子が悪かったのよ!」


「はいはい、で、依頼品は?」


 目の前にいるブロンドの女性、ハリウッド女優の様に煌びやかな雰囲気を出す彼女は、業界ではヴァルキリーと呼ばれる、聖遺物を扱う女性。


 聖遺物などを操るには才能が必要で、高ランクの物を扱える者になると限られている。


 聖遺物を管理しているのは大きく分けて5つあり、組織の長は聖女などの特別な称号を与えられ、大国に匹敵する権力を持っていたりする。


 他にも公になって居ないが聖遺物を所持している組織は幾つもある。


 勿論、犯罪組織でも武力として欲している為裏ではそれはそれは高値で取引される。


 そして、明仁が現実世界がファタジーな事は帰って来てから少し経ってしったのだ。


 その時にあった出来事で出会った一人がキャサリンである。



 そして今こんな所にいる。


「こっちよ」


「……やけに厳重だな」


「まぁね、一応神器って事らしいけど」


「神器!そんな物を」


「まぁ、本物ならね」


「どういう事だ?」


 そのセキュリティの厳重な建物に入るとある部屋にたどり着いた。


 兵士らしき人にキャサリンが開ける様に言う。


「ここよ、開けなさい!」


「ハッ!」


「……神器なのか?これ」


「ええ、私達はそう思っているけど…フィレンティが、ね」


「フィレンティ?あぁ、キャサリンの所の聖女か」


「聖女フィレンティ、聖遺物の管理をしている1つ、合衆国教会のトップ」


「その聖女様がなんて?」


「偽物じゃないかと」


「…神器の偽物か、形だけ似せる物はそれなりにあるが、力まで模倣するのはかなり厳しいと思うけどな」


 その言葉にキャサリンは同意する。


「我々も研究しているけど神器をコピーすることは現在の技術では不可能と結論づけているわ」


「そっちでもやってたのか、まぁその通りだが…」


「聖女が何もなく、そんな事は言わないとでしょ?」


「彼女はそういう嘘は言わないからね、鑑定」


==============================

名称:アレスの戦槍(劣化)

製作者:%@#€$¥

 軍神アレスが使っていた槍。軍神アレスの力にも耐えうる耐久と軍神アレスの力が宿っている。


 一騎当千の選ばれた人間に与えるが弱い心では闘争心を抑えられず、周りを争いに巻き込む。


 偽りの力によって複製されたいる為、劣化版に過ぎないが闘争心をより煽ってしまう様に細工されている。


==============================



「聖女様の言う通り、の様だ」


「そう、これが偽物…」


「これは何処から手に入れたんだ?」


「ある犯罪結社の殲滅作戦の時に回収したのよ、私が戦った相手」


「なるほど、苦戦したのか?」


 キャサリンは悔しそうに槍を見て呟いた。


「ええ…修繕前とは言え、相棒が壊れる寸前だったわ」


「あの聖遺物がか…」


「そう、だから神器だと確信したのよ」


「…恐らく、この劣化コピーの力を無理矢理上げる為、自分の命を捧げて能力を上げたんだろうな、神器には奥の手でそんな事が出来たりするから」


「流石はアキヒトね、そんな事知ってるのは神器の使い手以外いないわよね?」


「まぁ、そうだろうな…とりあえず送ってくれないか、レティスが心配する」


 明仁を見つめながら妖艶な笑顔で、キャサリンは


「あら、これから私とホテルに行ってくれないのかしら?」


「……行く訳ないだろ、キャサリン、今度愚痴くらい聞いてあげるから…レティスが怒ってここに来る前に」


「大丈夫よ、ここに来るまでの痕跡は消してあるもの」


「だと、いいん、よかったんだけどな」


「えっ?」


 明仁が壁の方を見ているとドカァン!という音と共に外が見えていた。


「……また、貴女ですか?キャサリンさん」


「………ハ、ハ、ハァァイ〜、レティス」


「明仁様、無事でしたか」


「レティス、迎えに来てくれたのか?」


「はい、小賢しい事に追跡を困難にさせていたので遅くなりました。」


「レティス、貴女一体どうやってここに?」


「キャサリンさん、私の力を忘れている様ですね」


 明仁には分かる、レティスが怒っている事を…レティスは人間では無い。


 異世界に居た時に知り合った、というか助けた魔導人形である。


 異世界で冒険している時、たまたま遺跡でレティスが機能停止したいので綺麗に直したのが、明仁だったのだ。


「短距離転移、マナサーチャー…この二つでこちらを見つけてここに来ました。」


「そ、そう…外にいた人達は?もしかして、やっちゃった?」


「いえ、疲れている様だったので寝ていただきました」


「…今日こそ、レティスを倒してみせるわ!明仁見てないさい!」


「明仁様はそちらのテーブルにお茶とお菓子を用意致しましたので、寛ぎながらお待ちください」


「いつも、いつも邪魔をして〜!」


「貴女の邪魔などしていませんよ?明仁様の側で使えるのは私というだけで」


 それから、偽物神器の件そっちのけでキャサリンとレティスは戦い…今日もレティスの勝利で幕を閉じたのであった。


「キャサリンさん、貴女も少し強くなった様ですね」


「何よ!あの攻撃!反則じゃない!」


「戦いに反則などありませんよ、フェアな勝負をしたいのならゲームかスポーツでもしてください」


「くぅ〜!何で聖遺物が増えてるのよぉ〜」


「明仁様より賜っただけですが何か?」


「ちょ、アキヒト!私にもよこしなさいよ!」


 余裕の笑みでレティスはキャサリンに


「明仁様のお仕事・だ・け・の関係のキャサリンさんに渡す訳ありませんよ」


「んっ〜!レティス!絶対今度は勝つんだから!」


「では、明仁様…帰りましょう」


「おっ、おう、じゃあなキャサリン…またな」


 レティスに手を繋がれる明仁をキャサリンは見送り、レティスと明仁は部屋から消えたのであった。

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