第67話 生まれついた者は悪
瑠璃光と聚周の出兵を見送った成徳は、体調を崩した風蘭と共に皇宮に息を潜めていた。治療を受ける風蘭のそばには、青嵐が付き添い目を光らせていた為に、思い切った行動には、うつせないでいた。
「いずれ・・・」
同じ逆臣に言う。
「騎馬に長けたアルタイ国に、術師とはいえ、瑠璃光が勝てるか・・」
「万が一、勝てたとしても、帰路についた所で、道中、何があるかわかりません」
「自分達だけ、逃げる訳にはいかないでしょうし、山道をくるか、草原の道をくるか、どちらにしても、爆破されて粉々になるかもしれません」
「今度こそ・・・今度こそ。そうです。成徳様。先々王の落とし胤の成徳様のばんが回ってきます」
勝手な事を口々に、触れ回っていた。瑠璃光は、術で逃げる事はできるが、大勢の兵士までは、手が回るまい。勝利した後は、成徳が手柄を横取りしようという考えだったが、それは、誰しもが、想定していた事だった。青嵐一人を皇宮内に残したのも、皆の考えが一致した事で、紗々姫は、自分が残ると言って効かなかったが、瑠璃光曰く、紗々姫が残ったのでは、状況が更に悪くなると言う的確な判断で、青嵐が残る事になった。勿論、風蘭の治療を継続するのも目的だった。機嫌悪くした紗々姫の軍は、大暴れする姫の一人勝ちで、進んでいった。冥国への報告とは、異なり、死傷者を出す事はなかったが、アルタイ国の兵士達は、死ぬような恐怖を味わり、戦意喪失し、他国へと逃げる者まで現れていた。
「姫様。やりすぎですよ」
紗々姫の機嫌は、ものすごく悪い。瑠璃光の役に立てると張り切って出陣したが。
「決して、手を出すでない」
恐ろしい顔で瑠璃光に言われていた。
「何の為に、妾を呼び寄せた?」
助けを求められたから、張り切って、海を渡って来たのだ。このまま、国に帰らず、瑠璃光を生涯を共にしても良い覚悟だった。のだが
「脅すだけで良い」
獲物を誘き出すための囮だという。
「つまらぬ」
「まぁまぁ・・・」
「約束を守ったら、褒美が欲しい」
「褒美?」
瑠璃光の表情がこわばる。紗々姫の願うことは、大体、想像がつく。
「どうじゃ?妾と、陽の元に帰るのじゃ!そして」
「はいはいはい」
だいたい、何を言うのかはわかる。
「お姫様、抱っこして、叶えてあげますよ」
「紫鳳ではダメだぞ。全体だぞ」
「はいはいはい」
何度も、念を押すがきっと、瑠璃光は、約束を守らないだろう。風蘭との扱いの差がありすぎる。そもそも、風蘭だって、蛟になりかけたではないか?一体、何が違うのだ?そう思うと、頭髪が逆立ち、口が耳まで、裂けてしまう。自分だって、最初から、こんな容貌ではなかったぞ。紗々姫は、荒れに荒れた。
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