第14話 もう一人の瑠璃香、現れる。
三華の塔の中は、瑠璃香の興味を惹く物ばかりだった。紫鳳も、瑠璃香と紗々姫に続いて、塔の中に入ったが、珍しい物ばかりで、あちこち摘んでは、中から、妖が飛び出し、剣先でつつき返す事をしていた。
「香は、たっぷりとありますわ」
紗々姫は、自分が、かすみとっていた香の塊を幾つも、取り出していた。
「これだけあれば、大陸まで、持ちますわね」
そう言いながら、風呂敷の中に、詰め始めた。
「いけません。姫様」
玉枝御前は、紗々姫がせっせと、包み込んでいるのを止めた。
「これは、国の宝となる物、誰かも、わからぬ奴に。。」
「誰かも、わからぬ奴ではない」
紗々姫は、あちこち、箱を開けて覗き込む瑠璃香の手を引いた。
「この者についていくのじゃ」
「ひ?」
驚いてしゃっくりを上げる玉枝御前。
「この小さな国にいるより、大陸に渡り、この者と自分の国を持った方が良いよいと考えたのじゃ」
沙耶姫の考えも一理ある。歳の離れた爺さん帝の妻で、干されて暮らすより、見目麗しい瑠璃香と大陸に渡り、一緒に暮らした方が、良い。
「ふん」
紫鳳は、鼻を鳴らした。
「随分、ベタ惚れなんですね」
瑠璃香が、慌てて、扇子で、顔を覆いながら、紫鳳に耳打ちした。
「もう少し。。。」
「いい加減にしろ」
紫鳳が、小声で、呟き、胸元で、韻を結ぶのを、慌てて、瑠璃香は、制した。
「まあまあ。。。」
阿と吽は、紗々姫が、2人のやり取りに気づかないか、ドキドキしながら見上げていた。瑠璃香は、神獣と戦っている最中に、入れ替わっていた。本来は、瑠璃香の身を守る為、式神、紫鳳が、入れ替わるのだが、戦いの最中だけでなく、紫鳳が、瑠璃香になりすます事が、時折あった。
「欲しい物を手に入れるには、血を流すだけでは、ダメでしょ」
紫鳳の提案だった。2人で、戦えば、敵知らずだが、その分、民達にも、被災者はでる訳で、安全に解決する方法として、瑠璃香の顔を使う事にした。勿論、瑠璃香は、渋々賛成した。紗々姫は、2人のやり取りには、構わず、あちこちと動き回り、荷物は、思いもかけず、大きくなっていた。
「どうかのう?」
「そうですね。香と香炉も、もう少し、入れますか?」
瑠璃香(紫鳳)は、紗々姫を上から見下ろしていた。
「紗々姫様。。。香炉はまずいかと」
玉枝御前は、恐る恐る言った。
「それを持ち出すと鶴白様の怒りをかうかと」
「ふん。。」
紗々姫は、透明に輝く香炉を抱え上げていた。
「わしには、ただの香炉にしか見えないがの」
紗々姫が、雑に扱い、落としそうになったので、玉枝御前は、悲鳴を上げた。
「これは。。」
紫鳳(瑠璃香)は、慌てて、手に取り、目を細めた。透明に見えるが、陽のある所にかざすと、夜空が、映し出され、所々、空の星が、光って見えた。中に、香を入れると、地図が映し出されるという。
「これも、持ちましょう」
瑠璃香(紫鳳)が言った時、奥から、1人の影が飛び出てきた。
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