僕の祖父さんとサチのお祖母ちゃんはその昔駆け落ちをした。結局家族に見つかって連れ戻され強引に別れさせられたという。そしてそれから、お互いに別の人と結婚しこの商店街でそれまでと同じように暮らしてきた。

「よく暮らしてこれたよね。いつも顔つきあわせて」

「そう思わない」

 どうなんだろう。僕は駆け落ちするほどの気持ちになったことはないし。それでも守るべきものがあったんだろうなあ。じっと耐えながら。今ではサチの家はあんみつ屋を細々とやっているような家になってしまったけど。

「あたしたちは自由すぎるのかなあ」

 多分僕たちの両親は、祖父さんたちのような思いを強制するようなことはしないだろう。そうかサチの両親はもういないんだ。結婚と恋愛は違う。少なくても僕にはその覚悟がある。

「あたし違うと思うの」

「おばあちゃんを一人にしていいと思う」

 僕にそう言ったあと、幸子はじっと黙りこんで何かを考えているようだった。

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