「ヒカル、おじいさんそっくだよね。そういうの隔世遺伝っていうんだって、知ってる」

「知ってるよ、そんなの」

「それよりおまえだっておばあちゃんそっくりじゃないか」

「そうなんだよね。あたしも隔世遺伝」

　大事な用があるからって呼び出したのに隔世遺伝の話かよ。

「知ってた」幸子の顔がちょっと真剣になる。

「何を」

「あたしのおばあちゃんと、ヒカルのおじいちゃんが決めた話」

「なんだその話か」

　やっぱりそうかと思う。予想はしていたはずなのに僕は少し動揺している。

「知ってたの」

「そんなの気にしなくていいんだよ」

「あの二人が勝手に思い込んでるだけだし」

　幸子の表情が曇っている。いつものあいつではないことを感じた。

「大事なことだよ、これは」

「お前はそれでいいの」

　幸子が黙り込む。

「一番いいことだよ。そうなれば」

「おばあちゃんだけでなく。こんないいことはないんだよ」

　僕は幸子の気持ちをはかりかねている。

「本当にそれでいいの」

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