虚な小屋④

「寝太郎ぅ、飛び降りてくんなって言ってだろ。遺骨渡って降りて来いって何回言ったらわかるんだ」


 ダルトが呆れて頭を抱えている。


「ガハハハハ、ごめんな、ついせっかちなもんで」


 寝太郎と言う巨大な男は、のしのしとこちらに向かってくる。歩くたび地面が揺れ。


「本題じゃが、ばらばらになっとったBoxの四角い石ころ、どうやらそれぞれに不思議なチカラがあるらしい。拾った奴の話しをきいたがのう、人生が変わっちまった奴だらけらしいど」


 寝太郎の話通りなら、Boxの力が散り散りになった後も破片の中で生きているって事か。


「それぞれに力が残ってるって事はだ、集めれば元通りの、なんでも出来る宝具に戻る可能が高いって事か、そんでそれを制御出来る男がここにいるって訳か、ほう……」


 ダルトがそう言うと寝太郎、赤ヘル、そしていつの間か真横にいた宿屋が目をギラギラさせながら、こっちを見てくる。


「集めればここなさん、救えるかもですね」


 宿屋が明らかに動機不純で肩を揉んでくる。でもその可能性は0じゃない。ここなが救えるなら、やれる事は全部やろう。


「その目は乗り気だな、でも今の貧弱なお前じゃあ、冒険に出てもみぐるみ剥がされて野垂れ死ぬのが関の山だ。そこでだ、技術はあるが先がない、人望もないおっさんが4人いる、その技術をカタリ、お前に全て託す。今すぐ旅立ちたい気持ちを押し殺して1年間みっちり修行しよう。もちろん授業料は完成したBox後払いでな」


 1年間、長いようだけど、あの戦争をみたら短いくらいだ、あいつらと戦うかもしれない。やるしかない。


「よろしくお願いします」


 ダルトは僕の手を強く握った。


「契約成立、教育担当はそれぞれ、座学全般は宿屋、各種戦闘訓練は寝太郎、その他は俺。赤ヘルは身の回りの世話をしてやってくれ」


 ほぼ宿屋と寝太郎に任せきりじゃないか。宿屋は気持ち悪い笑顔、寝太郎はやる気満々でストレッチをしている。


「今日は好きに過ごせ、夜はしっかり寝ろよ。」


 ダルトのその言葉通り、巨大な骸骨を観察してみたり、どのぐらいの広さなのか探索してみたりして、赤ヘルの家庭料理の用な飯を食べ、早めに布団に入り目を閉じた。悪夢を見ないよう、ここなの事を考えないように眠った。


 次の日から地獄の方がまだマシだろうと思える、休む暇もない怒涛の修行が始まるとは、この時まだ知る由もなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る