7話 私の三角方程式
7話 私の三角方程式
「おはよー徹」
「お、おはよう」
もう徹に向ける想いは無い。徹なんて知らない。徹なんてどうでもいい。
…と、心を騙しながら平然を保つ。
昨日、徹の告白の手伝いをすることになった。徹と関わるきっかけになったけど、私が望む方程式とは別ルートをたどる。
だけど、今は方法が分からないから進むしかない。もじもじする徹。モチモチする私。うまく言葉にできないオノマトペが並ぶ。
「美穂ぉ!なんか徹から話があるらしいよ」
「ちょ、ちょっと、待て…」
「どうしたの?徹?」
「じゃ私はトイレに行ってくるから」
私は笑みを取り繕い、その場を後にする。そして走る。感情が足を走らせる。トイレの個室に入ってドアを閉める。
素直になれない自分が好きじゃない。でもそれが自分だから仕方ない。想いとか考えとか言葉にするのが苦手。自己肯定感が低い。あれもダメだこれもダメだと決めつけて、時間が経つと本当にダメになっている。
「奏斗」
一人の男の子の名前を口にした。昨日出会うまでは、モブキャラプチトマトの1人だった。そして私は奏斗に「彼氏になって」と言った。
本意では無い。なぜそんな言葉が出たのか。
私が形成した三角関係の外部の存在。そして同じ感情を抱く存在。奏斗に親近感を憶えてしまったから?奏斗が可哀想だったから?だから私の感情が想いを動かした?
(いや、違う。きっと私は奏斗を利用したいだけなんだろうな)
私はスマホを取り出すと奏斗に連絡を入れた。
・・・・・
結果、徹の告白は成功した。
羨ましいという想いはあるが、嫉妬心はない。私と美穂を比べてみれば当然のことだった。私は1番近くで美穂を見てきた。これからの関係性は崩れることは無い。私は美穂の親友だ。
「って告白手伝ったでしょ!」
「まぁね。これでお互い彼氏持ちかぁ」
「そうだね。って萌衣彼氏いるのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
美穂と徹のクラス内カップルで盛り上がる中、衝撃の事実が場をさらに盛り上げる。大々的に伝えるつもりはなかったが、美穂の声は教室の隅から隅まで伝わった。
奏斗には伝えてあった。彼氏彼女の関係で無くても、一緒にいることは悟られる。だから逆に彼氏彼女の関係であることを仮定しておいた方がいい。と言っても、この仮定はただの強がりだった。
これを読んでくれている読者には言っておくけど、奏斗は彼氏じゃない。私の想いは徹だけにある。
「誰?誰なの?」
「1組の瀧本奏斗」
もう戻れなかった。というか戻るつもりもなかった。今は強がるふりをしていくしかなかった。だけど、一つだけ私の心を揺るがすものがある。
どうして徹はそんな顔をするのだろう。
・・・・・・・
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