2話 私の日常方程式

2話 私の日常方程式


『続いて今日の天気です。今日は全国各地で雲が広がりますが、降水確率は低めです。念のため折り畳み傘があると安心でしょう』


「今日は雨が降るな。萌衣、傘を持っていきなさい」


「え~、荷物になるからめんどくさい。降らないよ」


 私の一日はシャワーを浴びることから始まる。サラサラの髪はドライヤーの風に流されていく。食卓には【バター煌めく食パン】と【ジューシー轟くベーコン】、【目玉焼き(醤油派)】。


 サクッ。


 見事なオノマトペに乗るバターの香り。半熟の黄身をベーコンに絡ませて食べる最高のひと口。朝ごはんに幸せを感じる。


私の名前は清水萌衣(しみずめい)。東京にどこにでもいる女子高生。生まれも育ちも東京なので、日常生活に不便を感じたことはない。


 父は元天気予報士で現在は定年退職をしている。一方の母はスーパーで現在も働いている。そして、歳の差結婚した二人の間に生まれたのが、この私だ。


『東京都の降水確率は20%となります』


「20%は降らないから大丈夫大丈夫。そんなに持って行って欲しいなら折り畳み傘買ってよ」


「はいはい、今度の土曜に買いに行こうね。今日雨降っても迎えに行けないからね」


「分かった」


私は傘を持たずに家を出た。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 昼休憩の時間。椅子を持って美穂の元へ向かう。ということで私の大好きな友だちを紹介。


 友だちの名前は杉原美穂(すぎはらみほ)。私の理想の親友である。背の高さは平均的でスタイルも凄くいい。一緒にテニス部をやっており、ダブルスのペアでもある。シングル戦では全国大会に行くほどの実力を持っている。


「はぁ、萌衣、疲れたよぉ」


「私も疲れたぁ。4時間目の現代文まじで眠気やばかった」


 弁当箱の一段目、ウインナーと唐揚げ、切り干し大根にプチトマト。二段目にはご飯に梅干し。一方の美穂はコンビニ袋からおにぎりを取り出す。


 朝早起きして弁当を作ってくれる母には感謝をしている。「娘の弁当作りも楽しいから全く負担じゃない」ということらしいが、私の栄養面を心配しているに違いない。


 プチトマトは苦手。潰れてブニャッと出てくる甘酸っぱい中身。1つのプチトマトに対し、約200mlのお茶で喉の奥へと流し込む。


「大丈夫?涙目になってるけど」


「うぅぅ、だい、じょ、うぶ…。ふぅ、今日も私は一つ強くなった!」


 栄養面が心配という母の言葉はごもっとも。コンビニ飯にしたら、好きな物しか食べなくなる。プチトマトと戦闘するというミニイベントを切り抜けた今日の私は無敵だ。


「そうだ、この前の話の続き。萌衣の好きな人って誰なの?」


「その話引きずらなくていいよぉ」


「えぇ、聞きたい」


 今の美穂の顔を表現するならば(っ ॑꒳ ॑c)✨という絵文字が相応しい。期待に満ち溢れた表情が眩しい。


 私の好きな人。教室の後ろで集まる4人組の一人。名前は大池徹(おおいけてつ)という。クラスの中では目立つような人ではないけど、私からみれば目立って仕方がない。


「誰?どんな人?」


「ななな言わない!絶対言わない!」


「えぇー。このクラス?どんなきっかけなの?」


「だから言わないってばぁ」


 私の物語は、私と美穂と徹で構成される。柔らかな想いに溶ける、ちょっぴり儚い私の日常小説だ。


・・・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る