1話 僕の日常方程式
1話 僕の日常方程式
僕
初夏の言霊は、陽光に焦げたアスファルトの匂いがする。イヤホンで外界からの音を遮断。生温いお茶は喉をコロコロと転がっていく。
「まもなく電車が発車いたします。黄色の線の内側にお下がりください」
︎ 電車は距離・速さ・時間の三角関係を駆使しながら線路を進む。建物の切れ間から車窓に届く日光は点滅を繰り返す。
電車は亀有駅に到着。その人は、隣のドアから乗ってきた。透明感のある容姿、電車が振動で揺れる艶やかな髪。
距離速さ時間のバランスが乱れる。時間は低速、速さは対して反比例。その人を見ているとイヤホンの音が脳から遠ざかる。我ながら気持ち悪い比喩表現だと自負。
比喩を解く。
つまり、僕は彼女が好きだ。
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僕の名前は滝本奏斗(たきもとかなと)。東京の高校に通う16歳男子。特に頭が良いという訳でもなく、かといって悪くもない。イケメンでは無いけどブサイクでもない(たぶん)。今回の主人公は「平凡」という言葉が最も似合う僕が務めさせてもらう。
満員電車から降りて、空気を取り込む。コンクリートや排気ガスの苦味が酸素に混ざる。格別美味しいという訳では無いが、満員電車の空気に比べれば数億倍ましだ。
「おはっよう!奏斗」
「おはよう、雄大」
「あぁぁぁぁ湿度がむしゃむしゃするな」
「ほんと、今から地軸の傾きどうにかならないかね」
彼は名前は瀧口雄大(たきぐちゆうだい)。小学校からの親友で、一度も他クラスになったことは無い。彼の威勢の良さは、僕の人見知りな性格と調和する。
僕らには、もう一人のイツメンがいる。北千住駅前マルイ近くの大型モニターの下にある喫煙所から10m離れたベンチ。その人は手を挙げてダルそうに立ち上がる。
「うぃーす、おっす2人とも」
「「うぃーす」」
彼の名前は杉原隼也(すぎはらしゅんや)。小説にはあまり関係ないモブキャラ扱いだけど、場を和ませる役割を担っている。高校で出会った友だちであり、チャラチャラしているけど、ここぞという時の一言が偉大な効果をもたらす。
僕と雄大、隼也。これがイツメンと呼ばれるグループになる。部活はバラバラだけど、昼ごはんの時などは常に一緒にいる。
「でよぉ、昨日コンビニの会計で可愛い店員と手が触れてよぉ、って聞いてるか俺の話!」
「はいはい聞いてる聞いてる」
「よかったよかった」
こういうくだらない話をするのが高校生たる所以なのだろう。一見意味の無い会話にしても、高校生という青春を過ごしている。そして青春物語の1ページを描いている。
この物語は、僕と雄大と隼也と作者によって構成される、ほんわかした優しい日常小説となる。
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