Can't Help Falling In Love
芦ノ湖経由で静岡に行き、京都から明石鳴門大橋を目指す。私はこれからの南下計画を立てた。明石からは四国に渡って徳島県を走り、今治から白波街道を通って尾道に行く。そこから山口県の秋吉台を抜けて長門市に行き角島大橋に行こうという計画だ。
まずは芦ノ湖に行って風呂に入ろう。
車中泊もホームレスの様なものだが、私は家持だし、運転免許証や船舶免許などの身分を証明する物もある。それにそこそこ社会的信用度も高い。それを考えればエマのことで不審者扱いを受けることは無いだろう。
しかし本当にそうなんだろうか?
心配なので私はネットでググってみた。
彼女が17才なので純粋な付き合いなら、基本 恋愛として認められるようだ。
しかし、児童福祉法というのがあり、対価を伴う性愛は不正異性交友となりダメのようだ。対価とは金銭や物品が入るらしい。物品とは何が当てはまるのか?
もちろん児童とは18才未満を言う。
エマは後4ヶ月で児童を卒業だ。しかし純粋な恋愛って、どういうのを指すのだろうか?
芦ノ湖に着いたときには、寒波は過ぎていて暖かった。芦ノ湖には1500円ほどで温泉が利用できる旅館がある。そこでノンビリ温泉に浸かってからキャンプ場に行ったのだが、平日なのでキャンプ場は空いていた。
ここは冬期はキャンプサイトが1000円で借りられる。私は予約して置いたキャンプサイトに車を停めるた。明日はタープでも張りキャンプ気分でゆっくり過ごそう。
エマがカーテンを閉めてベッドを組立てる。「飯が先だろ!」と私が言うと「ううん、私が先よ、、」と言って笑う。あれからというもの、エマは毎日私を誘ってくる。私を逃さない為なのか、それともセックスが好きなだけなのか、、よくわからない。
セックスの後、エマが冗談を言う。
「パパは私を拉致して毎日犯してるんだからね。私を捨てたら通報するよ!」
「あのさあ、その冗談 、マジ 怖いんだけど、、」と私が言うと、エマはふふと笑って私に言った。
「冗談なんかじゃないよ、置いて行ったらマジ通報するよ!」と言う。
気持ちはわかるが、強迫めいた言い方が気に触る。
「ああ、正直言うと俺も不安なんだ。朝起きたら財布とか持って、エマが消えてるって、、そういうのも、無いとは言えないだろう?」と私が返すと、
「それは絶対無いです! 私はパパを失ったら全部無くなるんです。話しをする人も、心配してくれる人も。私が逃げるなんて、そんなの絶対ありえない!」と怒ったように言う。
「分かってるって! あるある話をしただけだから、怒らないで、、」と言うと、
「べつに怒ってないけど!」とすねたように私を睨む。
私はなだめるように、
「大丈夫だから、置いて行かないから、俺はエマが好きなんだ。もう信じてくれよ、な!エマ。」私がそう言うと
「ごめんね。不安なだけだから・・・ 」とエマが言った。
エマの不安は私が原因だ。
私はエマとの関係に後ろめたさを感じている。エマの年齢の事だけでは無い。妻への裏切りになるような気がして気が重いのだ。
敏感なエマはそれに感ずいているのだろう。
いまさら道徳がどうとか年がどうとか言ってもしょうが無い。エマは誰かの救いを求めていたのだし、私だって誰かの救いが必要だったのだ。それなのにいつまでもはっきりしない私をエマは遠回しに責めているのだ。
「俺はエマが必要なんだ。好きにならずにいられないんだ。」
私がそう言うと
「そうだよね、私もパパの事を好きになるしかなかったんだよ・・」とエマが納得したようにうなずいた。
「そうだよな、お互いに他の選択肢は無かったんだよ。」私は自分を納得させるようにそう言った。
「昔ね、好きにならずにいられない、そんなタイトルの歌を聞いた事があるよ。」
「ほんとうに?誰の歌?」とエマが言う。
「誰だったっけ、、」私はスマホを取り出して検索をする。エルビスプレスリーのCan't Help Falling In Loveがyoutubeでヒットした。
私はエルビスの動画をタップした。
Wise men say only fools rush in
But I can't help falling in love with you
Shall I stay, would it be a sin
If I can't help falling in love with you?
古く懐かしい歌がスマホからながれてきた。
私の中学生英語でもじゅうぶん解る歌だ。
「なんかいいメロディだね、どんな意味なの?」とエマが聞いた。
・・賢い人は言う 飛び込むのは愚かだと
・・でも僕は君を 愛さずにはいられない
・・これは罪深いことなのだろうか
・・僕が君を 愛さずにはいられないのは?」
私はだいたいの意味をエマに教えた。
「なんか私たちの事みたいだね」とエマが言った。」
「そうだな、思い切って飛び込んでしまうか・・」
そう私が言うと、エマが
「私はもう飛び込んでるよ。」と言った。
エルビスの歌を聴いているといろいろな思いが去来して私の目から涙が溢れた。
「パパ泣いてるよ。」そう言いながらエマも涙ぐんでいた。
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