車中泊

この子を車中泊させるとなるといろいろと買わなきゃいけない物がある。

「この辺りにスポーッ品店あるかなあ。」

「あそこの信号の右です、ほら、あの青い看板!」

私はスポーツ用品店に車を停めるとエマを連れてシュラフと毛布を買いに行った。これが無いと暖かく寝られない。他にも  手袋や厚ての靴下とか キルティングのアウターなど  思いつく物をいろいろ買い込んだ。

レジで、エマが代金を払おうとしたが、「いいから、お金は大事にしなさい。」と言って私が精算した。この子にとってお金は命綱だ、なるべく使わしてはいけない。


19時頃になって山間部にある無料のキャンプ場に着いた。幹線道路から横道に入りかなり走った場所にあり、ナビが無ければ通り過ぎてしまうところだった。谷川の側にある小さなキャンプサイトで 駐車場らしきものは無く  サイトの隅に適当に車を止めた。

周りにはどこにも外灯が無く、不気味なぐらい真っ暗だ。キャンプサイトの隅に手作りの粗末な標識があり天然風呂と書いてある。矢印の方向に踏み後らしきものがあり、河原の方につづいていた。私達はランタンの明かりをたよりに河原に降りていった。


風呂は谷川の縁の淀みに石を積んで作った天然風呂で、枯葉がかなり浮いていた。

これから2人で裸になるのに、明る過ぎるのも困ると思って、少し離れた場所の木の枝にランタンをぶら下げた。辺りは硫黄の匂いがしていた。山側の斜面から温泉が湧き出ているようで、岩肌が硫黄の色に染まっていた。お湯は少しぬるめだが気温が低いのでかなり熱く感じる。


遠くに置いたランタンの薄明かりの中で、エマの身体が白く浮き上がって見える。服を着てる時は子供みたいに見えたのだが、服を脱げば、胸の綺麗な大人の身体をしている。私は目をそらし素知らぬ振りをしていたが、エマは私を意識している様子もなく、持って来た下着を洗い始めた。


エマがこちらを向いて何かを言っているのだが、谷川の水の音で聞こえない。私が大きな声で「何だって!!」と聞くと、エマも大きな声で「下着を全部洗っちゃった! 今晩 どうしよう?!」と言う。

「お店で言ってくれたら買ったのに!、乾くまで下着は無しだな!なんなら俺のを貸すよ!未使用品が有るからな!!」

と私が言うとエマが「それ!面白い!!」と無邪気に笑った。


誰一人居ない天然露天風呂に、エマと二人きりだ。体が温まると私達はすっかりくつろいでしまい、気持ちも打ち解けて本当の親子のような気分になった。風呂は4人ぐらい入れる広さがあったが、エマが泳ぐ真似をしたりしてはしゃぐので、手足が触れる。私が避けるように隅の方に移動すると、エマが追ってきて「あ〜  気持ちいい〜  」と言いながら、まるで誘うかのように私しの腕に腕を絡めてきた。

私は動揺して、「ねえ、そろそろ車に帰ろうか、腹も減ったし何か作って食べようよ。」と、その場を誤魔化すように言った。

するとエマは「うん! 何か食べさせて! お腹が空いた。」とまるで 子供の様に 甘えた声で答える。やはり私の思い違いだ、私を誘ってなどいなかったようだ。


見上げるといつの間にか星が出ていた。周りに明かりがないので山間部で見る星は格別に綺麗だ。

「オリオン座って解る?」とエマが聞く。

「解るよ。あれが腰の星で、肩のあの赤いのがベデルギウスだろ。」と私が答えると「え〜  知ってるんだ!私もけっこう知ってるんだよ。」と嬉しそうに言う。


体の温まった私達はぶらぶらと星を見上げながら車に帰った。私は車に帰ると小型のガスストーブに火をいれた。車内は狭いので小さな熱源でも直ぐに暖かくなる。私はナベにお湯を沸かし、袋麺に豆腐や野菜を入れて鍋風にした。


「寒い夜はこんな物でも美味いだろ!」と私がいうと、

「まじ美味しいです!」と言って私の方を見た。エマの目が少しだけ涙ぐんでるように見えた。

「私、、半年間 1人でご飯たべてたから、、話しをしながらなんて半年ぶりなんです。」

「そうか、、俺もね、人と話しをしながら飯を食うのは久しぶりなんだ。2人のほうが美味しいよな!」と私が言うと、

「絶対!」と言ってエマは笑顔を作り、箸を持ったまま、目じりの涙を指でおさえた様に見えた。


テーブルをずらして長椅子を反転すると寝台になる。少し狭いが2人でも寝られる設計になっている。エマを、買ったばかりのシュラフに入れると「あったか〜い、体を伸ばして寝れる〜」と嬉しそうだ。少し話しをした後、寝不足だったのか エマは直ぐに眠りにおちた。


エマの寝顔を見ていると私はとても切ない気持になった。半年もの間、エマは誰とも話さずトイレの中で寝ていたのだ。そんな事が有っていいものだろか、、

エマの安らかな寝息を聞きながら、私は頭が冴えてなかなか眠れなかった。エマはどう見ても15〜6才にしか見えない。たぶん着ている物のせいだろう。着る物を変えるとか、ちょっと化粧をすれぱ18才ぐらいに見えるかもしれない。

しかし、誰かがエマの捜索願いを出したりしないのだろうか? もしそうならかなりヤバイことになる。

いや、それより心配な事がある。私はこの子の事を何も知らない。朝起きたら財布やスマホと共に、エマが消えてるって事も有りうる。そんな事になれば私は本当に困ったことになる。他人を泊めないことが車中泊での基本なのだ。



朝 目を覚ますとストーブのガスが切れていて車内はかなり冷え込んいた。

エマはよく寝ている。私は寝袋を這い出しガス缶を取り替えて着火する。すると車内は直ぐに暖かさを取り戻した。

車中泊は朝のコーヒーから始まる。それが日課になっているのだ。私はコンロにヤカンを乗せると火をつけた。コーヒーを入れているとエマがシュラフからはい出して来た。

「よく寝たね、 コーヒーが入ったよ。」とエマにカップを渡す。

「ああ、、嬉しい〜、 いい香り〜!」

エマはコーヒーを飲みながら私に満面の笑顔を見せる。笑顔の可愛い子だ。暫く1人で旅をしていたせいか、私にはエマの笑顔がとても眩しい。


「昨夜ね、、」と言って暫く間を置いてからエマが言った。

「私を抱くのかと思った。私はよかったんですよ。」と言う。

「ああ、、それは犯罪行為に近いからね、、」と私が答えると、

「誰も見てないよ。 もしかして私 パパのタイプじゃあ無いんですか?」と言う。

「いや、そんな事は無いけどさあ、、俺にも良識とかって有るから。」私がそう答えると、エマはそれっきり黙りこんでしまった。「朝ごはんを作ろうか?」と聞いても返事をしない。何か気まずい空気だ。


その沈黙が暫く続いた後、とつぜん沈黙を破ってエマが言った。

「パパは私を捨てるよね、、」

私はびっくりして「いや、捨てないよ。」と答えた。エマは首を横に振り

「ううん、置き去りにするよ、、私なんてめんどくさいだけだよ。パパにとって私は何の意味も無いんだよ!」と泣きそうになりながらそうエマが言った。可愛そうにエマは不安なんだ、、

たしかにそうだ、私にとってエマは災難みたいなものだ。うっかりすれば私が逮捕されるかもしれない。寒波が去ったら元いたスーパーにエマを置いて行こう、私はそう考えていたのだ。それをエマは察しているのだろう、だから不安なのだ。


下を向いて泣くエマに、どうしていいか分からず、私は彼女の肩に手を置いて「大丈夫、1人にはしないから、、」と、とりあえず間に合わせで私はそう言った。

「ほんとうに?!  本当に一緒に連れてってくれる?絶対だよ!」と甘えるようにエマが言った。

言いながらエマが頬を寄せてきた。

柔らかなエマの髪が私の顔に触れる、、

エマの涙が頬を伝い私の頬を濡らす、、

だめだ、この子を見捨てるなんて俺には出来ない、、

こんなに泣いてるのに、見捨てるなんて、、


そう思った時、私の心の中の何かが外れた。私はエマを押し倒しキスをしてしまったのだ。するとエマは待っていたかのように私に抱きつき舌を絡めてきた、そして切なく「して、、」と言ったのだ。私はエマの下着をたくし上げ胸に顔を埋めた。唇で乳首に触れると甘い女の香りがした。私の愛撫に興奮した彼女は、私の下半身に顔を寄せ唇で私を愛撫した。そして私の上になり彼女から私と合体したのだ。

見かけとは違いエマはセックスに慣れていた。エマは私を攻めるように腰を振り「気持ちいい?」と聞く。「気持ちいい、イッちゃいそうだ!」と少しオーバーに答えると、「イカしてあげる!」と腰に力を込めた。

そのうちエマが「ダメだ、私が先にイッテしまう!」と悲鳴をあげ、そして身体をガクガク震わせた。登り詰めたエマは私の上に倒れ込み、私は下から彼女を抱きとめた。私達はそのままの体位で快感の余韻にひたった。こんな事になるとは予想も出来ず、避妊具の用意は無かった。


エマが私の胸の辺りを指でなぞりながら言う。

「もう、私達は共犯だからね、、」

「エマは大丈夫さ、俺は児童福祉法違反か何かで逮捕だな。」と私が返すと、

「私がパパを誘惑したんだから、私も共犯だよ。」と言う。

・・エマが私を誘惑した?  そうだろうか・・

私は起き上がってカーテンを少しだけ開けた。いつの間にか外は雪が降っていた。

「エマ    暖かい地方に行こうや。九州に行けば雪は降らないぞ。」と言うとエマは「 行ってみた〜い!」 と私の背後から抱きついて肩越しに外を見た。外はうっすらと雪が積もり始めていた。

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