第24話 カラオケ
ちょっとしたハブニングがあったバスケも終え、最後にやってきたのはカラオケだ。
「いやー、カラオケも久しぶりです! 受験が終わるまでの一年間ずっと行ってなかったんで、その間に出た新曲を歌いまくります!」
「優香、なんでお前はその間に出た新曲を歌いまくれるほど覚えてるんだ? 受験勉強で覚えている暇もなかったのに」
「へっ? あ、いや、その、ほら、勉強しながら聞いてたりしたし」
「お前、『勉強してる時は歌詞がない曲か、洋楽の聴いても意味がわからないやつしか聞かない。そうしないと勉強してても曲に惑わされちゃうから』って言ってただろ」
「あ、あはは、よく覚えてるね、さすがお兄ちゃん……合間に聞いてました!」
「まあ受かったからいいけどさ。自己採点でギリギリだったのはそのせいじゃないのか?」
「も、もういいじゃん、時効だから。とにかく歌いまくろう!」
まあ今さらなんと言っても特に意味はないから、別にいいか。
「へー、誠也くんって意外とお兄ちゃんっぽいんだねぇ」
「ん? そりゃ優香の兄だし、俺はお兄ちゃんだよ」
「もちろんそうなんだけど、今のやりとり的になんか、しっかり妹を叱ってるお兄ちゃんって感じがして、新鮮だったよぉ」
「そういうもんかな?」
「誠也くんは今まで見てると、妹の優香ちゃんに香澄のことで迷惑をかけているふうに見えてたからね」
「まあそれは事実だな。早く香澄ちゃんを優香の本当の義姉にするために、頑張らないと……!」
「ふふっ、頑張ってねぇ」
そんなことを話している間に、優香がもう一曲目を入れていた。
歌手などにあまり興味がない俺でも聞いたことがある、何かと「うるせえ」と叫びまくるあの曲だった。
「優香ちゃん、歌上手いねぇ」
「マジだな。この曲歌うのめっちゃ難しそうなのに」
「そうね、誠也の妹だとは思えないほどに」
「ん? 香澄、それどういう意味?」
「お兄ちゃん! 次はお兄ちゃんが歌って!」
「ん、わかった」
俺も適当に歌える曲を入れた。
あまりカラオケとかには行かないから、久しぶりに歌うなぁ。
「えっ……せ、誠也、あれ真面目に歌ってる?」
「ええ、真面目に歌ってあれよ」
「ビックリだねぇ。勉強も運動も出来る完璧人間かと思ってたけど、誠也くんにも苦手なことがあったんだ」
「お兄ちゃんの数少ない弱点です!」
俺は全力で歌っているから、みんなが何を喋っているのかは聞こえない。
だけど久しぶりに歌うと気持ちがいいな。
「そういえば高校は音楽の授業がないからな。一年間、誠也と一緒にいたけど、全く知らなかった」
「お兄ちゃんの歌ってなんか面白いんですよね。全体的に外れてるのはあるんですけど、時々思いっきり外れることがあって。それが不意打ちでくるから笑っちゃうんですよね」
「ふふっ、本当だぁ」
「……まあそれは私のせいなんだけど」
「ん? 香澄、どういう意味?」
「よし、歌い終わった」
「お兄ちゃん、お疲れ様―。お兄ちゃんのお陰でこっちも盛り上がってたよ」
「おっ、そうか、それならよかった」
みんなで俺の曲について色々と話していたみたいだ。
なんだかよくわからないが、俺の話題ということで嬉しいな。
「じゃあ次は香澄ちゃんの番かな。久しぶりに香澄ちゃんの歌を聞くから、楽しみだ」
「そうだねぇ。香澄はすごい歌上手いから」
「私も久しぶりにお義姉ちゃんの歌聞くなぁ」
「……あんまりハードル上げないで」
香澄ちゃんは恥ずかしそうにしながらも、マイクを持って立ち上がる。
「おお……すげえ。俺は初めて今市さんの歌声を聞いたけど、マジでプロ並みじゃん」
「ん……ああ、香澄は結構曲の中でアレンジっぽく歌うところがあるから、それを誠也くんが真似してるから、時々誠也くんは思いっきり外したりしてるんだね」
「誠也の派手な外しっぷりは、そういうことだったのか」
「香澄ちゃーん! さいこー!」
「お義姉ちゃーん! こっち向いてー!」
「あの二人はいつの間にペンライトを持ってたんだ!?」
「あはは、香澄のファンみたいだねぇ」
『ちょっとそこの二人静かにしてなさい!』
「「はい」」
香澄ちゃんが間奏の時にそう注意してきたので、俺と優香は静かに座りながらペンライトを振っていた。
「うわー、今市さんの後とかやり辛いな」
「ふふっ、私は健吾の可もなく不可もなくの歌声好きだよぉ」
「うるせえ、褒めてねえだろそれ」
ということでその後は健吾、汐見さんと続いて歌っていく。
健吾はまあ、本当に可もなく不可もなくという感じだ。
俺が健吾にそう言ったら、「お前には言われたくねえよ!」と言われてしまった、なぜだろうか。
汐見さんは声が可愛らしい、香澄ちゃんの美しい声とは違う感じだった。
「汐見さんもすごい歌上手いね」
「ありがと、誠也くん。だけど香澄ほどじゃないからねぇ」
「香澄ちゃんが上手すぎるからね。だけど汐見さんもすごい上手いよ、なあ健吾」
「えっ、お、俺に聞くのか?」
「ん? 健吾は汐見さんの歌が好きじゃないのか?」
「いやちょっと待て、聞き方が違うんじゃないかそれは」
「どうなんだ?」
「いや、それはその……上手いと思うし、好きだけど……」
「っ……そ、そう、ありがとうね、健吾」
「おう……」
なんだか二人はまた顔を赤く染め、二人だけの空間を作っていた。
蚊帳の外にされた気分だが、なんだか二人を見てるだけでほんわかしてくるから、嫌な気分じゃないな!
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