第23話 スポーツと勝負



 その後、俺達はローラースケートをやめて、他の遊びもいろいろとやった。


 まずは、卓球。


「あっ……」

「香澄お義姉ちゃん、すごい全力でからぶるね、すごいね」

「香澄ちゃん、まずラケットの持ち方が違うのと、あとラケット振る時に目を瞑っちゃってるから、しっかりボール見てね」

「う、うん、ありがとう」

「あ、じゃあお兄ちゃんがお義姉ちゃんの後ろから抱きつく感じで一緒にラケットを持って、私と勝負しようよ!」

「へっ!? せ、誠也が、後ろから抱きついて……!?」

「おい優香、さすがにそれは無理だぞ」

「えー、お兄ちゃんなら香澄お義姉ちゃんを操ってでも私に勝てるでしょ?」

「それは出来るが、香澄ちゃんの後ろから抱きついたら、俺の心臓がもたない」

「あっ、そっちの無理なんだ。というか私に勝てるって断言するのムカつく!」


 と、こちらは三人で楽しみ、あちらの二人は……。


「奈央、今度こそお前にジュースを奢らせてやる」

「ふふっ、いいよ。だけど男と女なんだから、ハンデが欲しいなぁ」

「むっ、確かに……じゃあ俺は五点、奈央は三点取ったら勝ちでどうだ?」

「うん、じゃあそれでやろっか」

「よし、いくぞ――ちょっと待て、奈央のサーブにめちゃくちゃ回転かかってなかったか?」

「あはは、気のせいだよー」


 一分後、すぐに決着がついたようだ。


「うーん、もうジュースは二本買ってもらったし、いらないんだよなぁ」

「……お前、卓球やってたのか?」

「えー、小学生の頃に軽くやってただけだよ?」

「ハンデいらなかったじゃねえか! 俺、一点も取れてないんだけど!?」

「ふふっ、男気があってカッコよかったよ、健吾」

「う、うるせえ! 早くジュース選べよ!」

「優香ちゃんにあげようかなぁ。優香ちゃん、何がいい?」

「コーラで!」

「優香さんも人に奢られるのに躊躇いねえな!?」


 と、楽しそうにやっていた。



 次に、バスケ。


「香澄ちゃん、バスケはリングを直接狙うんじゃなくて、後ろのボードに当てた方が入りやすいからね」

「そ、そのくらいわかってるわ! ボードにも当たらないだけよ!」

「いや、リングに当たらないのはわかるけど、後ろの大きなボードにも当たらないのは、さすが香澄お義姉ちゃんだよね」

「誠也、ちょっとお手本見せて」

「おっ、お兄ちゃん、カッコいいところ見せるチャンスだよ!」

「なんだと! よし、やってやる! しゃあ!」

「なんでダンクしてんのよ! 参考になんないでしょ!」

「え、あっ、ごめん!」

「というかお兄ちゃん、ダンク出来るんだ……」


 こちらの三人はとても楽しい雰囲気でやってたんだけど、向こうの二人はとてもガチな雰囲気だ。


「よし、今度こそ決着つけてやるぞ、奈央」

「ふふっ、久しぶりだねぇ、一対一でバスケをするのは。中学二年生以来かな?」

「その時に俺がボコボコにして、お前が泣いた以来だな」

「……ちっ、絶対に勝ってやる」

「こっちのセリフだ」


 おお、なんか本当にマジの戦いになってる。

 俺と香澄ちゃん、優香も遊びの手を止めて、二人の戦いを見ている。


「三点先取な」

「いいよ、先にそっちからどうぞ」


 健吾が先に攻撃で、汐見さんが守る。


 数秒後、健吾が仕掛ける。

 右にフェイントをしてから、左にドリブルをして抜きにいく。


 汐見さんはギリギリそれについていき、健吾の進行方向を身体で止める。


 その瞬間――健吾の動きが止まった。

 なぜか隙を見せた健吾、汐見さんが見逃さずにボールを奪った。


「あれ、健吾、どうしたの? 下手になってるんじゃない?」


 そう言ってニヤニヤと笑う汐見さんだが、健吾の顔が真っ赤になっているのを見て不思議そうに首を傾げる。


「本当にどうしたの?」

「いや、その……身体が、当たって……」

「? バスケなんだから当たり前じゃん」


 バスケは身体が接触することが多いスポーツだ。

 さっきも健吾が攻めた時に、汐見さんが身体で止めていた。


「……すまん」

「だから何が……あっ」


 汐見さんは何かに気づいたようで、健吾と同じように顔を真っ赤にして胸を隠した。

 ああ、そうか、接触した時に汐見さんのそれに当たったということか。


「っ……へ、へー、そんな真剣勝負の時に、意識しちゃうんだぁ」


 汐見さんは平静を装って、いつも通りに健吾を揶揄っているつもりのようだが……彼女の顔が真っ赤だし、声も震えている。


「そ、そういえば、中学二年生の時は、まだここは成長していなかったからねぇ。そりゃ、その、身体が当たっても、大丈夫だったわけだぁ」

「……奈央、もう喋んないでくれ。俺もお前も、ダメージ受けてるから」

「は、はぁ? 私は別に、ダメージなんて……」


 二人は同時にお互いの顔をチラッと見て、目線が交わった瞬間にバッと逸らした。

 どちらもりんごのように顔が真っ赤だ。


 その後、二人はバスケの勝負を続けなかったみたいだが……。


「うん、やっぱりあの二人とも仲良さそうだな!」

「え、お兄ちゃん、今のを見てそれしか感想が出ないの?」

「ん? だってどう見ても仲良さそうじゃないか」

「まあ仲良いのはそうなんだけど……まあお兄ちゃんだしわかんないか。わかるんだったらもうちょっと香澄お義姉ちゃんとも発展してると思うし」

「優香ちゃん? それ以上は喋らないでね」


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