第14話 カフェにて初対面?



 こうやって見ると、本当に誠也は文句の付け所が一切ない。

 少しアホでバカな点を除けば。


 いや、むしろそういうところが、逆に魅力的に映るのだろう。

 完璧超人だけど親しみやすい性格をしているといえる。


「……そのさ、前に香澄がモテてるって言ったじゃん?」

「聞いたけど、あまり私は信じてないわ」

「本当なのに。それよりもさ……誠也くんもモテること、知ってる?」

「……そりゃ、もちろん」

「ありゃ、知ってるんだ」


 奈央が意外そうに目を丸くしたが、もちろん知っている。


 中学の時から誠也は女の子からの人気が高かった。

 女子だけが知っているアンケートみたいので、「付き合いたい男子ランキング」が取られた時、誠也は一位だったのだ。


 もちろん、その、私は誠也に入れたけれど、まさか誠也が一位を取るなんて思いも寄らなかった。


 一位だった理由としては、今さっき上げた「勉強も運動も出来る」「意外と優しくて面白い」などなど、普通にモテていた。


 だけど誠也はその自覚がない、なぜなら告白される回数がほとんどないから。

 モテてるのに告白されない理由としては……まあ、あれだけ私にプロポーズをしているからだ。


 負けが決まっている勝負をする人はいないだろう。


「高校一年生の時もやっぱりモテてたって噂は聞いたよ?」

「うぅ、やっぱり?」

「健吾が嘘をついてないならね。誠也くんと一番仲が良いからね、健吾は」


 やっぱりモテていたのか、正直予想はしていたけど。

 顔も良く、勉強も出来て運動も出来る誠也が、モテないはずがないのだ。


 ……やはり誠也は、私とは全然違う。


「私も誠也と釣り合うように頑張らないと……!」

「まあ頑張るのはいいことだと思うけどねぇ」

「そのために、どう頑張ればいいのか、一緒に考えてくれない?」

「うーん、難しいねぇ。やっぱり私は家事とかを頑張って、誠也くんに料理を振舞ってあげれば、と思うんだけど」

「そっか……じゃあ奈央も、小林くんにそうやってアプローチをしようとしてるの?」

「わ、私の話じゃないから。ほら、まだ私は料理出来ないから」

「今度教えてあげようか? 私だけ手伝ってもらうのも割に合わないし」

「それは嬉しいけど、今は香澄の話でしょ?」


 そうだった、だけど他に何を頑張ればいいのか……。


「私じゃなくてさ、誠也くんの妹さんに聞くのはどうなの? ほら、前にも妹さんに聞いて、プロポーズをまたしてもらえるようになったんでしょ?」

「あ、あれは私の勘違いというか、誠也が告白を忘れてただけで、私からアプローチしなくても、その……」

「まあそこはいいからさ。妹さんが協力してくれれば心強いでしょ? 私も誠也くんの妹さんに会ってみたいし」


 そうか、奈央と優香ちゃんはまだ会ってないか。

 別に奈央はまだ誠也とそれほど深く付き合ってもいないから、当然のことだけど……。


「……なんかやだ」

「えっ?」

「奈央と優香ちゃんはなんか、ジャンルが似てるというか……息が合うと思うの」

「へー、そうなんだ」

「だからなんか、一緒になって私と誠也のことを面白がってきそうで、なんかやだ」

「えー、そんなことしないよぉ」

「それを言うならそのニヤケ顔をなんとかしなさいよ」


 今日話してきた中で、一番ニヤニヤとした顔をしている。

 やっぱりあまり優香ちゃんとは合わせたくないな……。


「あれ? 香澄お義姉ちゃん?」

「え? あっ……ゆ、優香ちゃん?」

「ん?」


 私が振り向くと、そこにはカフェのコーヒーを片手に私服姿の優香ちゃんがいた。


 まさか、こんなところで偶然会うなんて。

 しかも今、まさに優香ちゃんの話をしている時に。


「えー、もしかして、誠也くんの妹さん?」

「はい、そうです。三条優香っていいます」

「私は汐見奈央、誠也くんのお嫁さんの友達だよぉ」

「なんと! いつもお義姉ちゃんがお世話になってます」

「ううん、こちらこそー」

「私の目の前で意味わからない自己紹介はやめて」


 初めての会話ですぐに意味わからない会話を繰り広げた二人。

 やっぱり私の予想は正しく、無駄に相性が良さそうだった。


「優香ちゃんはどうしてここに?」

「いやー、中学生と高校生ってやっぱり違うなぁって思って。だって学校帰りに制服のままカフェとか行けるんですよ! 中学だったら絶対出来なかったじゃないですか!」

「確かにそうだねぇ。私も高校に上がってすぐに友達と二人で原宿とか行ったなぁ」

「ああ、それもいいですね! 奈央さん、今度一緒に行ってくれますか!?」

「ふふっ、私でよければいいよぉ」

「やったぁ! あっ、香澄お義姉ちゃんももちろん来てくれますよね!?」

「……私はいいけど、あんた達、本当に仲良くなるのは早くない?」


 一分前に初めて顔を合わせたばっかりよね?

 それでなんでもう制服で原宿に行くことが決まってるの?


「まだ高校始まったばかりで、遠出を一緒に出来る友達がいないんで、本当に嬉しいです!」

「えー、そうなのぉ? 優香ちゃんみたいな可愛い子なら、すぐにでも友達は出来そうだけどね」

「あはは、嬉しいですけど、やっぱり難しいですよ。ほら、兄がアレだから、妹の私も少し警戒されちゃうんですよ」

「えっ、優香ちゃん、そうなの?」

「はい、やっぱり兄を初めて見ると『ヤバい人』って思うじゃないですか」


 誠也は始業式の日にも私に大声でプロポーズをしていたので、一年生達にはすでに誠也の存在は噂になっているだろう。


「だから私もそういう人なのかなと思われるんですよ」

「大丈夫なの、優香ちゃん? 私、それ初めて聞いたけど……」

「ああ、別に全然大丈夫ですよ。一週間もすれば一年生達も慣れると思いますし、普通に友達と言えるくらいの人はいますから。まだ少し同情されているような目で見られているだけですから」


 同情……つまり「あんな兄で大変だね」という感じだろう。


「まあぶっちゃけ大変なのはその通りですけど、それ以上にあんな兄でよかったと思えるところがいっぱいですからね」

「優香ちゃん……」

「たとえば……そう! とても綺麗で可愛い女の子が、お義姉ちゃんになるところとか!」

「優香ちゃん、真面目に聞いた私が馬鹿みたいだからやめてくれる?」

「あはは、やっぱり誠也くんの妹さんだねぇ」


 そんなところで誠也との血の繋がりを感じたくはないけどね……。




――――――――


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