第13話 香澄は相談するが…
「ということがあったから、私は誠也の気持ちにまだ、真っ直ぐ答えられないの」
学校が終わって放課後、私は奈央と二人でカフェに来て恋バナをしていた。
適当に飲み物を頼み、対面に座って話している中で、私は中学の卒業式のことを話した。
「そんなことがあったんだね……」
奈央は最初はいつも通りニコニコして聞いてたんだけど、今はとても真面目な顔をして聞いてくれていた。
私の話が相談に近いと思って、真面目に聞いてくれたのだろう。
「一年生の時からずっと『香澄は素直じゃない子だなぁ』って思ってたけど、そんなことを考えてたんだね」
「……うん」
奈央が小林くんのことを好きということを知って、奈央と私の距離はさらに近くなった気がする。
だからこそ、私がずっと悩んでいたことを話せるようになった。
「誠也くんの気持ちに応えるために頑張る、か……ふふっ、だけど本当に、香澄は誠也くんのことが好きなんだねぇ」
「うぅ……は、恥ずかしいからあまり言わないで」
「あはは、可愛い」
「そ、それを言うなら、奈央だって小林くんのこと好きなんでしょ?」
「うん、私は健吾のこと好きだけど」
「えっ、恥ずかしがらないの?」
「んー、別に今は香澄と二人だけだしね」
「じゃあ小林くんが近くにいたら、好きって言える?」
「……それが言えたら苦労してないよ、私は」
小林くんに告白するのを想像したのか、奈央は頬を真っ赤にして顔を逸らした。
奈央の恥ずかしがる顔というのをほとんど見たことがなかったので、新鮮だった。
いつもニコニコして顔色がほとんど変わらないので、初めて見る奈央の素顔はとても可愛らしかった。
「話を戻すけど、誠也くんに釣り合うために頑張るって言ってたよね?」
「うん、そうだけど」
「釣り合うってどういうのかあまりわからないけどさ。さっきの話だと勉強とか運動とかでいえば、誠也くん相手だったらなかなか難しいと思うよ?」
「……うん、わかってる」
だって誠也は高校一年生の時もずっと学年一位だったし、運動もすごく出来る。
「だけど香澄も別にさ、勉強出来ないわけじゃないよね? 学年順位はいつも十位くらいでしょ?」
「まあ、そうだけど……」
「それに誠也くんが高校のレベル下げたって聞いたけど、うちの高校も県の中ではトップレベルだよ? むしろどこを受けようとしてたの?」
「誠也の妹ちゃんに聞いたけど、全国一位のところだったと思う」
「それはすごすぎるんだよねぇ……」
そう、誠也はすごい。
前にあった全国模試のテストも、全国の高校生の中でもトップを競っていたくらいだ。
だから私が高校に入って勉強を頑張ったと言っても、学年で十位くらいじゃまだまだ全然釣り合わない。
「運動に関しては……その、残念だけどさ」
「うっ……」
私は運動のセンスが壊滅的にない。
サッカーで止まっているボールを蹴ろうとしても、からぶってしまい転ぶくらいだ。
他にも体育の授業でいろいろと出来ないエピソードを持っているんだけど……思い出すだけで恥ずかしくなってくる。
「ま、まあ、運動はしょうがないよ、うん」
「そうかな……だけど誠也は、めちゃくちゃ運動が出来るしさ」
「誠也くんは出来すぎだよ。健吾が『誠也はバスケの経験ないのに、県の代表選手に選ばれる俺くらい上手い』って言ってたから」
「うん……知ってる」
誠也は「文武両道」が形になったかのような人だ。
勉強も運動も、何一つ悪いところがなく、良いところしかない。
まさに完璧超人……ただ性格がバカでアホっぽいというところを除けば。
ま、まあそういう性格が、私は可愛くて好きなんだけど……。
「私にとっては、誠也くんと香澄が釣り合わないっていうのがおかしいんだよねぇ。どう見ても二人はお似合いだけど?」
「……そう言われるのは嬉しいけどさ」
そんなの子供の頃から何度も言われてきた。
だけどそれは多分、誠也が私にずっと告白してきているから、私と誠也を二人でセットで見られることが多いからだ。
誠也が私に構って来なかったら、誰も私と誠也が釣り合っていると考える人はいないだろう。
「それに香澄、何も釣り合うっていうのは勉強と運動だけじゃないと思うよ。ほら、香澄って料理出来るじゃん。前に誠也くんにお弁当作ってあげてたんでしょ?」
「そうだけど、誠也も出来るから」
「えっ、そうなの?」
「うん、『俺は香澄ちゃんと結婚しても絶対に香澄ちゃん一人に家事を任せたりしないから!』って言って、家事全般は普通に出来るようになったらしい」
「うわー、めっちゃ良い男だねー、すごい優良物件」
「前に誠也が作ったご飯食べたけど、普通に美味しかった」
こうやって見ると、本当に誠也は文句の付け所が一切ない。
少しアホでバカな点を除けば。
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