第3話 バレた!?

「は、はいっ!? な、ななななんのことでしょう? わ、私は正真正銘のお、女の子ですが!?」

「うん、誤魔化し方下手ですわね。それにあなたの体つき……触れたら男ってわかりましたし」

「くっ……」


 あかん、オワタ。


 早くないか? え、俺の高校生活ここで終わり? 女子校で女子に扮して青春を謳歌するという計画、消滅?


 元からそんな計画なかったでしょというのは受け付けません。


 俺があまりに絶望した表情をしていたからだろう。彼女が慌てた様子を見せる。


「ち、違うんですの! 別に責めようとか、お、思ってるわけじゃなくてっ……!」

「え、違うんですか?」

「は、破廉恥な理由でこの学園に入ろうとしたのなら警察に通報しますけど、ちゃ、ちゃんとした事情があるなら、別に怒ったりなんか……な、なんか可愛いなぁとかお、思っちゃいましたし……」

「……」


 なんだろう、あたふたしている様子がすごい可愛い。小動物みたいなんだが。

 思わず愛でるような、慈愛のこもった眼差しを向けてしまう。


「な、なんですの、その目は」

「いいえ、別に? ただ可愛いなぁと思っただけで」

「か、可愛い!?」


 彼女はカーッと頬を赤く染めた。思わずクスッと笑ってしまう。


「耳まで真っ赤ですね」

「も、もう、言わないでくださいまし!」


 恥ずかしがっている様子が本当に可愛すぎて尊死しそう。

 だが、今の俺の状況を思い出して途端に笑みは消え去った。


「できることならあなたと一緒に高校生活を送ってみたかったです」

「え? 送らないんですの?」

「へ?」


 思わず間抜けな声が出る。


「ドユコトデスカ?」

「え? そのままの意味だけれど……。それとも退学するんですの?」

「退学しないで済むのならそれがいいですが、俺男……」

「私しか知らないのですから、隠しておけばいいのです」

「え、内緒にしてくれるのですか?」

「ま、まぁ、あなたがこの学園に来た理由を教えてくれるのでしたら……」


 思わず瞬きしてしまう。え? この子、俺が男子ってわかってる?

 俺の様子に彼女がふいっと目を逸らす。


「ま、まぁ、あなたと一緒に過ごす学校生活も悪くない、と、思ってしまいましたし。どうせずっと女の子としているのでしょうし、しっかり隠し通せるならいいと思いますわ」


 少し照れた様子で後れ毛を耳にかける仕草に心臓を撃ち抜かれる。


 美少女が髪を耳にかける仕草って二次元の世界だけかと思ってた……!!

 破壊力抜群すぎる……!!


「ありがとう!! え、えーっと……」

「奈々、宝生奈々が私の名前ですわ」

「ありがとう、宝生さん……!!」


 思わず体を起こして手を握ってしまう。と、宝生さんが顔をしかめる。


「奈々」

「え?」

「奈々って呼んでくださらない? 宝生さんはよそよそしくて嫌なのです。敬語もいらないですわ」

「え、いや、それは……」


 思わずどもると奈々が顔を近づけてくる。そして態とらしく悲しげな表情を作り……


「私たち……友達じゃないの……?」


 あ、だめだこりゃ。わざとってわかってるのに罪悪感半端ない。

 こんなんされたら折れるしかないだろ。


「わ、わかった! 本当にありがとう、奈々!」

「お、大げさですわ! あ、あと、手、手を……離してくれませんか……?」

「あ、ご、ごめん!」


 恥ずかしそうに俯く彼女を見て、パッと手を離す。

 や、やってしまった……! 勢い余って女の子の手を握っちゃうなんて言語道断すぎる……!


 だが、盛大に慌てている俺と違って、彼女は怒るでもなくただただ恥ずかしそうだった。

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