第2話 出会い
「あの後一週間で女の子の立ち居振る舞いを教え込まれたんだよなぁ……」
母さんと優奈の『地獄の女の子レッスン』を思い出して震えているうちに入学式は終わり、割り当てられたクラスに向かう途中。
「あら、あなた汗ひどいですが大丈夫?」
金髪縦ロールの女子が話しかけてきた。
あ、ここそういう髪型もオッケーなのね、意外。
「大丈夫です。心配してくれてありがとうございますね」
「そう、それなら良かったのですけど」
心配そうな彼女に笑顔を見せる。この学園では笑顔&敬語は最重要!
気が抜けない……!
仲良くなれば崩してもいいらしいが。
と、急に目眩が。
「あっ……」
ふらっとしたところを彼女が支えてくれる。
「大丈夫ですの!?」
「え、えぇ、大丈夫だと思います。すみません……」
さっと離れる。いくら俺が細くて胸パッドつけてると言ってもそもそも体つきが違う。触れていたらバレてしまうかもしれない。
だが、彼女はずいっと俺に顔を寄せると両手で肩をガシッと掴んできた。
えっ、ちょっ、なに!?
「あなた、やっぱり保健室に行ったほうがいいですわ! そんな体調では倒れてしまいます!」
「で、ですが初日ですし……」
おおう、驚くほどか細い声しか出ない……状況的にはいいのだろうが男としてはなんとも微妙だわ……。
そんなことを思っているうちに、今度は彼女が背中側に回って俺の背中を押し始める。
待って、汗かいてるから触らないで……!? こんな状況じゃなかったら喜ぶのに……!
「いいから早く! 保健室に行きましょう!」
「だ、大丈夫ですって!!」
だが彼女は俺の言葉を聞いてすらいないのか、そばにいた別の女子に声をかける。
「そこのあなた! この子を保健室に連れて行きますから、先生にそう伝えてくださる?」
「は、はい!」
急に話しかけられた女の子が、思わず背筋を伸ばして返事をする様子を視界の端に捉える。
その気持ちわかるよ、名も知らぬ女の子よ……!
こんな、明らかにいいところの社長令嬢っぽい女の子に話しかけられたら萎縮しちゃうよね……!
だが、そんな共感を長々と抱いていることはできなかった。
金髪縦ロールの女子が俺の背中をぐいぐいと押してきたからだ。
「ちょっ、わ、わかったので押さないでください!」
「そう? じゃー早く行きましょ!」
俺は名も知らぬ社長令嬢らしき女の子に連れられてその場を離れるしかなかったのだった。
ちなみにその時の周りの反応は明らかに引いていたということをここに記しておく。
***
保健室にて。
「うーん、軽い脱水症状みたいね。とりあえずこれ飲んでベッド空いてるからそこに横になっておきなさい」
「はい……ありがとうございます……」
保健室の先生に言われ、渡された水を飲むとカーテンを閉めてベッドに横になる。
同時にゆっくり休めるようにという配慮だろうか。先生は職員室にいると言って保健室から出て行った。
「ふぅ……ようやく一人に……」
「なれてませんよ?」
「ふぁっ!?」
なぜかカーテンの内側に入ってくる金髪縦ロールの女子。
いや、待て、なぜ入ってくる!?
え、これが女子の距離感!?
女子の距離感というものなのですかっっっっっっっ!?
俺が内心で叫んでるとも知らず、彼女はそばにあった椅子を近くに寄せると優雅に腰掛ける。
うん、美少女は何をしても様になるね。
「で、あなた、どういうことですの?」
「どういうこと、とは……?」
彼女の問いになぜか嫌な予感がする。その理由はすぐにわかった。
「あなた、男性でしょう?」
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