第13話:密命

 皇紀2217年・王歴219年・秋・皇居


「直答を許すから答えよ、ライナを嬲り者にした者達を皆殺しにできるか」


「ハリー様から、ミア殿下をお救いするのに他に方法がない場合は、何処の誰を敵に回す事になろうとも、手段を択ばずに断じて行えと命じられております。

 その命に従うために、修道院や教会を皆殺しにする方法も考えております」


「朕が命じてもやってくれるのか」


「背教徒が堕落させた修道院の始末など、皇帝陛下が御命じに成られる事ではありませんので、お受けいたしかねます。

 ただ、ソフィア様より、ミア殿下を狙う蛆虫共を皆殺しにしろと言っていただければ、断じて行って御覧に入れます」


「ソフィア、頼む、この通りだ。

 ミアを修道院入りさせると言った朕が、今更言える事ではないが、地獄の苦しみを味わったライナの仇を取らしてくれ、頼む」


「主上、皇帝陛下ともあろう御方が、わたくし如きに頭を下げてはいけません。

 シャーロット、ミア殿下の母として命じます。

 皇帝陛下と皇家に対して許し難い悪行を行ったうえに、ミア殿下まで狙うと言う許し難い邪悪な計画をした蛆虫共を、皆殺しにしなさい」


「しかと承りました。

 ただ、ライナ殿下が受けられた恥辱は、皇帝陛下と皇家の名誉のために、絶対に闇に葬らなければいけない事でございます。

 修道院の修道僧と聖堂騎士だけでなく、ライナ殿下を嬲り者にした信徒とその家族も、ミア殿下を攫うために雇われた影衆も、口封じしなければなりません。

 そのためには、援軍を集めて準備をする必要があります。

 一両日お待ちいただきたいのですが、よろしいですか」


「構いません、全てシャーロットに任せます。

 何も知らなかった二年もの間、わたくし達に知らせる事もなく護ってくれていたシャーロット達が、どうしても必要というのですもの。

 一両日であろう、ひと月であろうと、黙って待ちますよ、ねえ、主上」


「ああ、ああ、ああ、待つぞ、ひと月であろうと一年であろうと、十年であろうと、

 シャーロットとハリーを信じて待つ。

 確実に口封じができるまで、何時までも待つぞ」


「では、期限を切らずに御約束させていただきます。

 敵がダエーワ影衆の本拠地エリバンク地方に逃げ込もうと、この国の果てどころか異国にまで逃げようと、必ず追いかけて口封じいたします」


「心強い事です、頼みましたよ、シャーロット」

「頼んだぞ、シャーロット」


「ねえ、シャーロット、口封じはいいのですけれど、ライナ姉様は助けられないの。

 確かハリー殿は、わたくしや母上がどれほど心身を傷つけられても、必ず治してくれると言っていませんでしたか。

 何があっても救い出すようにとシャーロットに命じていませんでしたか。

 そんなハリー殿なら、ライナ姉様も助けられるのではありませんか」

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