④ポストカード
あれから2度目の冬が廻った。
喜び、怒り、哀しみ、楽しさ・・・色んな感情を乗り越え、あたし達は愛を育んだ。
育んだつもりだった。
けれど、時の流れは無情にも・・・今、あたしと杏士を引き裂こうとしていた。
あたしは、今この瞬間だって杏士が大好きで。
そんなに遠くない未来には、杏士との結婚を夢見たりしている。
好きな人と付き合っていれば、それは極々当たり前の感覚だと思う。
そんなあたしの元に、高校の友達のナツコからポストカードが送られてきた。
ポストカードの中のナツコは、純白のドレスと笑顔と幸せに包まれていた。
キラキラしていて、とても綺麗だった。
だから。
この喜びを一刻も早く伝えたくて、杏士がソファーに腰を下ろしたタイミングを見計らってそれを差し出した。
「ねぇ、杏士!見て見て!ナツコが結婚したの!綺麗でしょ!
綺麗だなぁ・・・いいナ・・・あたしも早く着たいナ・・・ウェディングドレス!」
そんなつもりはなかったのに、あたしは少し興奮気味に捲くし立ててしまった。
彼はチラッとそれを覗くと、
「へぇー・・・ま、そこら辺、あんま俺に期待すんなよな?」
と、テーブルの上のリモコンを手に取りテレビを点けながらそう言った。
あたしはリモコンを取り上げた。
「それ、どういう意味?」
「どうって・・・俺、やりたい事まだまだあるし、今はまだ自由でいたいしさぁ~」
彼は、悪びれもなくヘラヘラしながらそう言った。
信じられなかった。
それが彼女に言う台詞?
別に、今すぐどうこうしてくれって言ってるんじゃない。
只々あたしは、あたしの気持ちをふんわりと受け止めて欲しかっただけなのに・・・。
そして、そこからは、お決まりのコース。
いつものように口喧嘩が始まって。
そのうちに、無言になった彼は部屋から出て行ってしまった。
彼がいい加減な性格だって事は、百も承知している。
今までは、それでよかった・・・というよりも、それがよかった。
そんな自由人な彼が魅力に思えたし、大好きだった。
なのに、最近は腹が立つ。
出逢った頃よりもずっとずっと好きな筈なのに・・・腹が立って仕方ない。
これが、いわゆる、倦怠期って・・・ヤツ?
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