第245話・神の奇跡? いいえアマノムラクモですが?
──グォォォォォォォォォ
宇宙だから音は響かないし、どんな音かわからない。
異星人艦隊から射出された、惑星破壊ミサイル群『プラネットボンバー』は、あと数時間で地球の静止軌道まで到達する。
その前方1200kmでは、アマノムラクモから出撃したマーギア・リッターによる迎撃部隊が待機している。
「マーギア・リッター全機に通達!! 妾がマーキングしたミサイルは攻撃するな。ナノマシンによって無力化し、爆発しないようにしてあるので無視して構わぬぞ!!」
神楽がモニター越しに、マーギア・リッターに指示を飛ばす。
彼女がマーキングしたミサイルは無力化するため、わざと地球に落とすらしい。
それも、ギリギリになって国連から脱退した3カ国の領土へ。
「……神楽、本当に大丈夫か?」
「無論、数発は爆発させるが、不発弾のような感じで対処する。当然内部回路も何もかもめっちゃくちゃにして、奴らのテクノロジーが地球に流れないようにもしておくから安心せい!!」
「ま、まあ、それなら構わないけどさ」
別に奴らのテクノロジーが地球に流れたところで、俺たちには関係ない。
ただ、スターゲイザーを否定して国連を脱退した国に、あのテクノロジーを差し出すつもりもない。
勝手に脱退してついでに守ってもらい、テクノロジーも手に入れるなんて俺が許すはずがないだろう?
「安心せい。ナノマシンの取り扱いについては、ここのオクタ・ワンよりも遥かに上じゃ!!」
『ピッ……聞き捨てなりませんが』
「そりゃ、そう思うじゃろうが。妾たちは魔力を操ることなど不可能、お互いの利点を有効に使うだけじゃよ」
『ピッ……肯定。ナノマシンの取り扱いについては、神楽に全件委任』
「任してたもれ!! では、参るぞ!!」
──ブゥン
地球を取り囲むフォースプロテクション。
その中で3カ国の上空にあった無色透明な部分が完全に消滅する。
ここからミサイルは侵入可能となるのだが、そうは問屋が卸さない。
「本当に頼むぞ……と、第六カタパルト、朔夜たちは出撃したのか?」
『いえ、そもそもいませんでしたけど?』
「……ホワッツ? あいつ、第六カタパルトにいるって話していたよな?」
『彼も、忍者軍団も存在しませんが。彼らのマーギア・リッターもありませんし、どういうことなのかさっぱりです』
「了解。ありがとう」
はて?
あいつどこにいる?
第六カタパルトって言ってたよな?
他のスターゲイザー艦隊か?
『ピッ……まさかとは思いますが、敵艦隊の第六カタパルトでは?』
「……そんなバカな……」
『ん? 拙者は敵空母の第六カタパルトから出陣したでござるが?』
そんなバカでしたわ。
しかも、敵のど真ん中から堂々と、通常回線で連絡を寄越してくるし。
「仕事が早いと褒めて良いのか、勝手なことをと怒るべきか」
『見なかったことに。では、拙者はこれにて、ドロン!』
「ドロンじゃないわ……あ〜もう、オクタ・ワン、計画の再考は?」
『ピッ……想定内です』
「俺が騙されるまでが想定範囲内かよ。本当に、良い魔導頭脳だことで」
『ピッ……お褒めに預かり恐悦至極。敵ミサイル到達までカウントダウン』
誰も褒めてねーわ。
本当に俺のために色々と動いてくれてありがとうよ。
そのうち、スケルトン魔導士のコスプレでもしてキャプテンシートに座ってやろうか。
「その場合でも、私はマイロードとお呼びします。サキュバスのコスプレなら大丈夫です」
「で、では、妾はバンパイアの始祖を希望です!!」
「なんでここをアインズ・ウール・ゴウンにしようとするんだよ!! ついでに言うが、俺の心を読むなぁ!!」
『ピッ……口に出ています』
「うっさいわ!! アマノムラクモより各艦へ。全艦、作戦開始!!」
「「「「「「「「「了解」」」」」」」」」
もうヤケクソになって指示を出す。
その直後、アマノムラクモの左舷12000メートルをプラネットボンバーが通り過ぎる。
そして。
──ドゴゴコゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
激しい爆発が連鎖し、プラネットボンバーが次々と迎撃されていく。
ミサイル流星群の中を飛び回り、破壊するべきミサイルと見逃すミサイルを区別しつつ、マーギア・リッターが迎撃を続ける。
そんな中、後続のミサイル駆逐艦、砲撃艦隊も移動を開始、スターゲイザー艦隊目掛けて隊列を組んで動き始める。
「敵、砲撃きます!! 射線上に地球が入りますが!!」
「全力回避!! 流れ弾が地球に向かったところで、フォースプロテクションは貫通しない!!」
高速で軌道修正し、敵攻撃の第二波を躱す。
そこからはお互いに円を描きつつ、攻撃と回避を繰り返す形となった。
「タケミカヅチ三番艦が被弾!!!! 続いて四番艦は艦橋に直撃。第二艦橋に命令系統を移しました!!」
「それで、本当のダメージは?」
「ありません。
「了解だ。敵の被害状況は?」
「ミサイル駆逐艦に間も無くマーギア・リッター隊が到達。そこから蹂躙します。まだ艦隊戦を見せつけた方が良いので、適当に間引きする程度にするように指示を出してあります」
なんだろ、本当に緊張感ないよね、君たちは。
「タケミカヅチ五番艦が被弾、エンジン区画が破壊されました!!」
「それで、本当の被害は?」
「これは事実です。敵、新型兵器を確認!魔導ブラスターです」
「ふぁ?」
『ピッ……恐らくは鹵獲兵器かと思います。いや、厄介です』
「洒落にならんわ、五番艦は後方へ。朔夜、そっちはどうなっている」
返答がない。
いつもなら、ハッハッハッと笑いながら返答がくるはずなのに、こりゃマジでやるしかないか。
『ピッ……朧月及び忍者部隊のマーギア・リッターの信号がロスト。まだ隠し球が向こうにもあったようです。続いて敵ミサイル第二波確認!』
「迎撃を!」
──ブゥン!!
オクタ・ワンが確認したのは、突然静止軌道直上にワープアウトしたミサイル群。
まさかのミサイルだけの短距離ワープ、惑星の重力影響も何もかも無視した、特攻のような攻撃。
これはマーギア・リッター隊でも対応がまに合わなかった部分があり、フォースプロテクションに次々と直撃。
貫通こそしなかったものの、地球から見ている奴らは気が気ではなかっただろう。
「いかん!! ワープアウト攻撃の二発がバリア内部に突入じゃ!!」
──ドッゴォォォ
神楽の叫び声と、二発のミサイルがバリアのない部分に飛び込んで地表を吹き飛ばしたのは同時。
山岳部への直撃らしいが、被害は洒落にならない。
『ピッ……マーギア・リッター隊の半分を大気圏内に。次のワープアウト攻撃の座標は、直接大気圏内にくるかと予測』
「いや待て、そんなことが可能なのか?」
『ピッ……可能かどうかと言うなら、不可能ではない、です。公転軌道も何もかもを計算した攻撃、うまく使えば地球の核すら狙える代物です』
「そんなものSF映画でも見たことないわ!!」
やべえ。
どうする?
敵の攻撃が段々と容赦無くなってきた。
これで敵からの通信なり降伏勧告があるのなら、話し合いで時間を稼ぐことができるが。
「ミサキ殿、マーギア・リッター隊をすべて大気圏に移動させるのじゃ。こっちも切り札を使わせてもらうぞよ」
神楽が叫ぶ。
何かあるのだろうと思わず頷くと、ヒルデガルドがマーギア・リッター隊をすべて地上に送り込むように命令を走らせる。
「切り札?」
「敵の目はこっちに向いておるからな。マザーシステムより全てのナノマシン群に通達。大気圏内に突入したミサイルを全て無力化せい!! そして、ブラックナイト浮上じゃ!!」
──ブゥン
神楽の叫び声と同時に、大気圏外の静止軌道直上に存在する未確認物体『ブラックナイト衛星』が実体化する。
その表面が黒曜石のように輝く正八面体のブラックナイトがゆっくりと動き出すと、アマノムラクモの前方に静止する。
「あれは? ブラックナイト衛星か?」
「対惑星干渉システム。ナノマシン散布システムでもあり、惑星調査及び破壊用に特化したナノマシン群じゃ。これで飛来するミサイルやエネルギー兵器は無力化できる。そして、いでよ、神の鉄槌!!」
──ドッゴォォォッッッッッ
かなり前方。
敵艦隊のどこかが爆発した。
何をした?
「あ、あれは??」
「月面調査用ナノマシンシステム。またの名を『神の鉄槌』。ランス状のナノマシン群体を射出し、敵艦隊に突き刺す。そして自爆システムを稼働させるだけじゃ」
あー、あったわ。
まだ取り残しがあったのかよ。
これで敵艦隊は、月とスターゲイザー艦隊に挟まれた状態である。
まだ攻撃を続けるのなら、こっちもひたすらに破壊を続ける。
そっちは移民船もあるんだろう?
それを攻撃されたくなければ、早いところ降伏した方がいいんじゃないか?
『ピッ……敵ミサイル群がワープアウト。座標はフォースプロテクションギリギリです。先程の神の鉄槌により、座標軸がズレたかと推測』
「内部に出たものは全て迎撃しろ!!」
「敵艦隊からの砲撃再開。二番艦が破壊されました!!」
「正面、アマノムラクモに向かって魔導砲接近!!」
いよいよ旗艦を狙ってきたかよ!!
「ブラックナイト!! 反射砲スタンバイ!!」
神楽が叫ぶと、アマノムラクモの前方でブラックナイトが展開。正三角形の集合体のような形をしたバリアが展開した。
──ブゥン!!
反射砲が敵魔導ブラスターを包み込むと、それを全て吸収。
そして瞬時に筒状に変形すると、そこから魔導砲を放出した!!
──ドッゴォォォ
数秒後、敵艦隊の一角で大爆発が発生。
いや、その火力は洒落にならんわ。
「二番艦の生存者を救出。アマノムラクモ、主砲発射準備!!」
『ピッ……了解。サラスヴァティ式魔導ジェネレーター、全基接続。エネルギー抽出開始』
「観測隊に連絡。敵の移民船の座標の確認、そこを外して有効な打撃をぶちかませる角度を計測」
「イエスマイロード! 仰角修正開始」
うん。
そこまでやるのなら、こっちも本気で行くからな。
「神滅砲スタンバイ!!」
──ブゥン
アマノムラクモの前方に、五重の巨大魔法陣が展開する。
覚悟はいいな?
こっちは神をも殺せる破壊の渦だ。
無人艦隊だか何だか知らないが、人がいないのならまとめて吹き飛ばすわ!!
もう地球相手のデモンストレーションも必要ないだろうからな。
『ピッ……神滅砲!!』
オクタ・ワンが何かに気がついた。
いや、それは後に回してくれるか?
──ガシャン
キャプテンシートの真ん中に、銃の形をした発射装置が浮かび上がる。
それを握ると、俺はモニターに映し出されたポイントに照準を合わせて。
──カチッ
トリガーを引いた。
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