第243話・いろんな戦艦が勢揃い!!

 月周回軌道上に姿を表した異星人艦隊。


 NASAをはじめとした世界中の天文台、天文学マニアが異星人艦隊の姿を確認。すぐさま各国政府に連絡が入ると、国連宇宙部に質問が届き始める。


 あの艦隊は何者なのか?

 太平洋に落下した謎の物体と関係があるのか。

 さまざまな質問が届くと、国連宇宙部の事務官たちは国連宇宙部に詰めていたスターゲイザーのサーバントに質問状を回した。

 自分達では対応できない、スターゲイザーではあの艦隊について情報を持っているのか。

 この質問に対して、サーバントのセルゲイは頭を左右に振って一言だけ。


「彼らは、スターゲイザーに対して無慈悲なる攻撃を行ってきました。いわば我々の敵ですが……それが何か?」

「で、では、もしも地球が攻撃されたとしたら、スターゲイザーはあの艦隊から地球を守ってくれるのか?」


 縋り付くような視線で問いかける事務官だが、セルゲイはまるでゴミを見るかのような視線を送って一言だけ。


「なぜ? 我々が地球を守る意味がわかりませんが?」

「何故って……あれは君たちの敵ではないのか?」

「まあ、敵でしょうから攻撃はするでしょうね。でも、それよりも早く地球が攻撃されたら、我々でも何もできませんよ?」

「ちょ、ちょっと待ちたまえ!! スターゲイザーは地球に領土を持ったではないか!! それを守るためには戦わないというのか?」

「いえ? すでに私たちの領土にはバリアシステムが設置されていますので。たとえ地球の全てが焦土となっても、我々の領土は無傷です……まあ、そうなったら速やかに地球から撤退しますがね。文明の滅んだ星には興味がありませんから」


 いつ、異星人の攻撃がやってくるのか気が気でない。

 可能ならばスターゲイザーに縋ってでも、あの異星人艦隊を迎撃して欲しい。

 そう考えるものが大半であり、恐らくは誰でもそう思うだろう。

 アメリカの宇宙防衛システム『スターウォーズ計画』もまだ発令されたばかりであり、衛星軌道上に軍事衛星はあるものの、異星人からの攻撃を防ぐための防衛システムなどまだ存在しない。

 だからこそ、スターゲイザーに戦ってほしい。

 そういう気持ちが痛いほどにわかるが、スターゲイザーは地球の代理戦争などする気はない。


「……せめて、国連本部に提出するためのデータを提出してくれると助かるのですが」

「まあ、その程度なら構いませんよ」


 セルゲイがすぐさまアマノムラクモのオクタ・ワンと交信し、スターゲイザーに異星人艦隊がやってきた時の記録映像を送ってもらうと、地球の再生装置に合わせた仕様にして提出。

 早速、宇宙部がそれをもとに解析作業を開始することになったのだが。


………

……


 解析作業から一時間後。

 映像の確認をしていた宇宙部には悲壮感が漂っている。

 どう足掻いても、地球に勝ち目はない。

 そもそものテクノロジーが違いすぎる。

 星全体を包み込むほどの防御システム、敵の攻撃を無力化する兵器。

 そして、敵艦隊を殲滅できる機動兵器部隊。

 出来の悪いハリウッド映画なら、まだ生きる可能性がある。

 それこそ地球の有志を宇宙船に乗せ、敵艦隊の隙を縫って接近。そのまま内部に潜入して奴らの弱点を突く。


「この映像だけでも値千金。スターゲイザーの防衛システムがどれほどのものかわかった」

「それよりも異星人艦隊です。衛星軌道上からのミサイル攻撃など、どの国の対空防衛システムを使っても守り切ることなどできません」


 宇宙部事務次官がボソッと呟く。

 だが、この映像に撮された事実を知らない各国の軍事関係部署は、対宇宙戦用の迎撃準備を整え始めている。

 それがどれだけの防御力を持つのかなど、まだわからないから。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



──アマノムラクモ内部

 次元潜航したアマノムラクモ内部では、マーギア・リッター部隊にスペースパックを搭載している最中である。

 さらにはピンポイントでフォースプロテクトを発動するための『バリアユニット搭載型』、瞬時に衛星軌道上からのミサイルを迎撃できるだけの『ミサイルファランクスポット搭載型』など、いつも以上の装備が整えられている。


「……それで、敵艦隊が地球に対して攻撃をするまでに、アマノムラクモは到着するのか?」

『ピッ……敵艦の攻撃タイミングなど分かりませんが、あと一時間ほどで到着します』

「一時間かぁ……間に合うのか?」

『ピッ……トラス・ワンからの解析情報では、異星人艦隊はワープアウトした後はエネルギーをリチャージする必要があるとのこと。その時間は地球時間にして100分。その間は防衛システムが稼働するので、攻撃はしてきません』

「……さすがはトラス・ワンか。さて、アマノムラクモの立ち位置だけど……」


 俺は考える。

 ここで地球を守ったとしても、また同じようなことが起きた場合は地球はすぐにスターゲイザーに頼ってくるだろう。

 悪いけど、スターゲイザーは地球の属国でもなんでもないので、必要経費は全て支払ってもらう。

 それならビジネスライクで話ができるじゃないか。


『ピッ……まあ、問答無用で地球を守るよりも、理由があった方が双方共に平和的に解決できますから』

「だから、人の心を読むなと」

「それなら、地球が攻撃されてから援助を始めた方が効率的です。それでスターゲイザーは地球にとっての英雄的存在となります」

「まあ、ヒルデガルドの言うこともわかるけどさ……被害が出てからじゃあ遅いんだよ」


 次元潜航中は、外の世界で何が起きても確認できない。

 こうなると、地球圏で待機しているサーバント達とノアの働きに頼むしかないんだよなぁ。


「まあ、急ぎ戦闘準備を終えてくれ。それと俺のカリヴァーンの準備も頼む。ヘビーウェポンモードで!!」

『ピッ……了解です』


 いつもなら止めるだろうワルキューレたちも、俺の言葉に頷いている。

 無茶しないだろうって考えているのか、それとも俺が出るまでもなく終わらせる気なのか。

 読めない、本当に読めない……けど、いまはできることをやるしかないからなぁ。


………

……


──地球圏・ジュネーブ国連宇宙部

 セルゲイからの資料を確認後、宇宙部はすぐさま国連本部に連絡。

 異星人対策については、地球では対応不可能という結論に達している。

 一度に10000発以上降り注がれるプラネットボンバーを全て迎撃することなど不可能であり、それが放たれた時点で地球の異星人側に位置する国家は滅びる。

 それがわかったからこそ、緊急安全保障理事会が開かれ、対応をどうするべきかという協議が行われることとなったのだが。


──ビビビッ

 理事会室に響く無慈悲な機械音。

 緊急事態を告げる音が響くのと、NASAからの連絡はほぼ同時。


『月周回軌道上の異星人艦隊からミサイルらしきものが射出されました……確認できる数は8000、それ以上は不可能』

「すぐに軌道の確認、到着時間を算出しろ!! 異星人艦隊までの距離は確か35万キロだったな」


 月起動よりもやや内側に存在する異星人艦隊。

 そこからのミサイル攻撃ならば、到達までに時間がかかるはす。

 それまでに対応を協議しなくてはならないのだが、NASA管制塔からの報告は無慈悲であった。


『現時点での観測速度からの推測。地球到達まで、三十一時間』

「ば、ばかな……マッハ8を超えるミサイル攻撃だと?」

 

 アメリカのパワードがフーディンを見ると、すぐさまフーディンも本国に連絡を入れる。


「期待するなパワード。我が国の極超音速巡航ミサイル『ツィルコン』による迎撃でも、迎撃距離1000kmだ……数も少ないから、全てを打ち落とせるとは思うな」

「NASAに連絡だ。ミサイル到達時刻の地球の角度と、ミサイル降下地点の予測を!!」

『すでに予測完了。誤差はありますが、北米、南米はほぼ壊滅するかと……また、余波はヨーロッパ方面にも届く可能性が高く、大西洋側の国家に対しては津波による被害などの二次的災害も発生するかと』


 パワードの頭の中に過ぎったのは絶望。

 どれだけ上手く迎撃し爆風に巻き込んだとしても。

 8000発のミサイル全てを処理できるはずが無い。

 それよりも、この事実を知ったアメリカ国民がどれだけのパニックを引き起こすか、それをどうにかしなくてはならない。


「あ、ああ……スターゲイザーに、アマノムラクモに連絡を……」


 救いの手を伸ばす先は一つ。

 それは、その場にいる常任理事国全ての代表が理解している。

 そして、パワードの言葉が届いたのか、すぐさまスターゲイザーに通信が届いた。


………

……


──ズザザザザザァァァァァァ

 エーテルの波飛沫を上げながら、アマノムラクモが地球の高度45,000メートルに浮上する。

 その直後、スターゲイザー艦隊総勢二十四艦も浮上すると、アマノムラクモは全ての通信回線をオープンし、地球の様子を確認し始める。


『ピッ……異星人艦隊からは、すでにプラネットボンバーが射出されている模様』

「……対空攻撃準備。ギリギリまで引きつけろ、それまでは全ての監視システムを最大ゲインで動かせ!!」


 参った。

 オクタ・ワンからの報告では、俺たちの浮上よりも少し前にプラネットボンバーが射出されているらしい。

 速度を考えても地球までの到達時間は三十時間ちょいなので、アマノムラクモの迎撃システムなら余裕。

 だけど油断して足元を救われては敵わないから、できうる限りの迎撃準備を進めさせる。


「マイロード、ニューヨークの国連本部から通信です」

「繋げ……こちらスターゲイザー・アマノムラクモ艦隊旗艦・アマノムラクモだ。何か用事か?」

『アメリカ大統領のパワードです……』


 うわ、声がもう死んでる。

 すぐさま目の前にモニターが映し出されると、プラネットボンバーの着弾予測地点がアメリカ大陸全域および大西洋じゃ無いかよ。

 そりゃあ、死にそうになるわ。


『スターゲイザーの星王ミサキさまにお願いです……地球を助けてください』


 そうなるよなぁ。

 こっちとしても、そのために来たんだからさ。

 すでに迎撃準備は完了しているんだけど、ここはビジネスライクでいくか。


「そちらで出せる報酬を提示してください。まさか地球でいうボランティアで、こちらの兵器を稼働させろとか言いませんよね? 私たちには人道支援とかそういう気はありませんので」


 吹っかける気はないけど、せめて消費するエネルギー……は太陽光転換と空間残存魔力で賄えるからエネルギー代は掛からない。

 けど、資材は実費で支払ってもらうよ。

 

『スターゲイザー艦隊で確実に迎撃可能ですか?』

「この初撃だけならね。そのあとの追撃についてはわからないと伝えておくが、返答は六時間待つよ」

『すぐに検討します』


 それで通信は終わり。

 そして俺の後ろでは、神楽がイギリスのノアと連絡を取っている。


「ノアに命じる……静止軌道上にナノマシンを散布し、敵ミサイルのジャミングの準備をせい!! なに、もうやっておるじゃと?」


──ピッ

 モニターに静止軌道が映し出させるが、何も変化はない。

 まあ、ナノマシンだからなぁ。

 見えるはずはないけど、オクタ・ワンが恐ろしく細かいターゲッティングを行なっている。

 いや、そのマーキングって全てナノマシンだよな?

 画面が真っ黒になってるから消してくれるか?


「神楽、そっちは任せる。地球に降下したミサイルを、ナノマシンを使って最低限の被害しか出ない場所に誘導できるか?」

「ふむ。海上に落とすのが得策じゃな……コントロールを奪った時点で爆発せんようにしてやるわ」

「ついでに太平洋のプラネットフォームまで移動させておいてくれ。マーギア・リッター出撃準備、第一戦闘待機に移行!!」

「「「「了解です」」」」

「……朔夜!!」


──ピッ

 また勝手に動いている可能性があるから、朔夜には釘を刺しておきたいのだけど。


『拙者、第六カタパルトで待機しているでござるが?』

「あ〜、今日は勝手に出ていないのか?」

『拙者、賢いから学んだでござるが』

「そっか。それじゃあ地球からの援助が確定した段階で、敵艦隊に突入、中枢システムを麻痺させて敵の代表を捕えるところまでできるか?」


 かなりの無茶を言ってみる。

 それぐらいできそうだなあと思うんだが。


『……流石に10分では無理でござる』

「誰が10分で終わらせろっていったよ!! でもできるのかよ?」

『正直いうと、やって見ないとわからないでござるなぁ……今回ばかりは未知の領域ゆえ』

「そっか。じゃあ無理なくやってくれ」

『委細承知』


 これでモニターは切断される。

 しかし、朔夜がやって見ないと分からないっていったの、初めて聞いたぞ。

 さて、地球からの連絡を待つとするか。

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