第241話・不可能への挑戦と、地球の動向
さて。
正直に言おう、今の時点では未来消失どころか世界の消失に対しての対策がない。
アマノムラクモ、スターゲイザー、アクシア、全てのシステムがフル稼働して対策を探しているのだけど、答えがどこにも見えていない。
いや、答えはあるんだわ。
この世界に、もう一度『創造神』を復活させる。
これにより、世界の消滅は回避できるんじゃないかな〜って考えてみたんだが、まず、創造神がいない。
他所の神様に頼み込んで、二つの世界の兼業創造神を頼み込もうとしてみたんだが、まず他所の神様に会う方法がわからん。
会うにせよなんにせよ、まず一度、別の世界に行かないとならないから。
つまり、アマノムラクモで一旦、次元潮流に乗って移動しないとならない。
今の、異星人の襲撃を受けているタイミングで?
そんなことは不可能だから、まず俺としては異星人の対策を取らないとならないんだよなぁ。
『ピッ……煮詰まり終わりましたか?』
「まあ、なんとなくは。まだ対策は出ていないんだろ?」
『ピッ……可能性があるのならばと、さまざまなパターンを模索しましたが、全て成功確率0%です。僅かな希望があるのなら、そこにミサキさまの叡智を使って可能性を広げることができたのですが』
「ゼロかぁ。ゼロとそれ以上の差は、歴然だからなぁ」
全くダメと、僅かな可能性。
この二つの差は大きい。
不可能か、僅かな可能性がの違いだけどね。
「はぁ。幸いなことに、地球が飲み込まれるまでの時間はまだまだある。最悪のパターンが来るまでに、色々と考えるしかないか」
「マイロード、それがよろしいかと思います。地球とスターゲイザーだけを助ける方法を考えましょう」
「そうだね。それがいいかもな……何もかも助けるなんて、どう考えても不可能だと思うからなぁ」
しみじみと考える。
ぶっちゃけるなら、俺としては地球とスターゲイザーさえ助かるのなら、他の星、他の星系の異星人がどうなろうと知ったことではない。
ただし、俺が知らないところで勝手に滅んでくれって感じであって、迂闊にも干渉してしまったら、その場合はまた対応を考えないとならない。
そして、その干渉が即ち、今回の異星人の襲撃なんだよなぁ。
「はぁ……頭が痛いわ」
………
……
…
その日。
世界中の天文台が、火星と木星付近での異常を確認していた。
宇宙望遠鏡による観測の結果、火星と木星の中間地点に未確認の物体が出現したとの報告が届けられていた。
これまで、地球サイドが確認できた異星人らしき存在は、約四光年先に存在するケンタウルス座のプロキシマ・ケンタウリ、コードネーム・地球防衛軍と呼ばれている金属生命体、そしてスターゲイザーのみ。
しかもプロキシマ・ケンタウリからは謎の電波を受信しただけに過ぎず、実際に姿を見たのは金属生命体とスターゲイザーのみ。
そのうちのスターゲイザーについては、国交が樹立している国もあるため、今回のような事態でもそれほど慌てることはないと考えていた。
ただし、この件については賢人機関及びNASAだけは、諸手を挙げて大歓迎しているわけではない。
──イギリス・賢人機関
「スターゲイザーのエクスカリバーから入電。未確認生命体によりスターゲイザーが攻撃を受けた模様……その規模は……」
アルバートは、モニターに流れる報告書をじっと眺めつつ、観測員からの連絡を聞いている。
エクスカリバーからの緊急入電というだけでも驚きなのに、その内容がまたとんでもないものであったから。
「……スターゲイザーのミサキ星王に繋げられるか?」
「進言しています……ですが、時差があるため、ダイレクトな会話は不可能ではないかと」
『おいおい、スターゲイザーの科学力をなめてもらっちゃ困るなぁ……エクスカリバー用の宇宙港管制塔からなら、ダイレクト通信が可能なのを忘れるなよ……それでアルバート、何か用事か?』
電波の伝達速度を考えると、地球に存在するディープスペースネットワークを使うことで、従来の電波のおよそ150〜200倍の速度で通信が可能になる。
それでも、地球からスターゲイザーまでの距離を考えるならおおよそ通信にかかる時間差は三週間。
これがアマノムラクモから地球に向けてとなると、24機の通信衛星システムを経由するため、ダイレクト通信となる。
今回は緊急事態ということもあり、賢人機関にてエクスカリバーのメンテナンスを請け負っていた管制塔のサーバントが気を利かせてアマノムラクモに通信を送り、そこからダイレクト通信を送ってきたのである。
「あ、あのですね、スターゲイザーと木星の間に出現した正体不明の艦隊ですが、攻撃されたという報告がありまして」
『まあ、そんなところかな。全力ではないとおもうけど、同じ攻撃を地球が受けたら初手で地球は滅びるレベルだけど?』
包み隠さず報告するミサキに、アルバートは頭を抱えたくなってくる。
「そ、その艦隊はどこのもので、何が目的なのですか?」
『現時点で分かっているのは、銀河系中心部付近にいた異星人で、なんらかの理由で星が滅んだので、移民先を見つけるために旅にでてスターゲイザーが発見されたので、問答無用で攻撃を仕掛けてきたのだがカウンターアタックを受けて火星と木星の中間点まで逃げた。ってところかな?』
一通りの説明をするミサキに、アルバートは頷いている。
当然ながら、真実である『消失世界』については全く説明はしない。
それは逆に、混乱が生じるだけではなく最悪のパターンにも繋がる可能性があるから。
「その異星人ですが、地球を攻撃してくる可能性はありますか?」
『あるんじゃね? スターゲイザーが彼らにとって居住可能な星なので、地球もターゲットになると思うけど?』
「それから地球を守る手段はありますか?」
『ん〜。無理じゃね?』
単刀直入に聞いたら、絶望が返ってくる。
アルバート以外の人間なら、その場でどこ何逃げ出したくなるレベルの絶望。
だけどアルバートは冷静に考える。
「では、スターゲイザーが地球を守るという可能性は?」
『殆どない。けど、四カ国とは条約を結んだし、地球にはスターゲイザーの領土があるから、それを守るためになら戦うと思うけど? って、それを聞き出したかったんだろ?』
「はい。そのついでに、地球を守ることは可能ですか?」
『まあね。でも、何もかも押し付けるようなら、領土ごと見捨てるからな。ここから先は、賢人機関の仕事だろ? 地球外交の窓口らしく、しっかりと仕事をしろよな?』
「ええ。ここまでの情報があれば、なんとでもできます。エクスカリバーが地球にいなかったのが幸いでしたよ」
『あ〜、そういうことか。まあ、そんじゃ結果を待つわ』
それだけでミサキは通信を切る。
アルバートもまた、聞きたかった以上の情報が手に入ったので、すぐに国連本部に詰めているレオナルド・ダ・ヴィンチに連絡をした。
………
……
…
──アメリカ・国連本部
ミサキとアルバートの話し合いが終わった直後。
アルバートは国連本部に連絡を行う。
シャンポリオンは会議に出席していたため、補佐で詰めているレオナルドが代わりに通信に出たのだが。
『……という事だ。現時点で地球圏が入手しているであろう木星と火星の中間点の存在、仮称・異星人艦隊は明らかな敵対意思を持ってあると考えた方がいい。それを踏まえた上で、国連本部に情報として提出、すぐに臨時総会なりなんなりで対策を考えさせろ!!』
「……いやぁ、信じたくなかったですね。まあ、情報としての提出は行いますが、国連がどう動くか……」
『まずは、どんな理由でもいいから動くように仕向ける事だな。スターゲイザーからの情報の全てを鵜呑みにするとは思えないが、我々賢人機関はエクスカリバーを経由しても同じ情報を入手している。つまり、地球が危ないという事実だけは揺るがすことができない真実だ』
淡々と事務的に告げるアルバート。
そしてレオナルドら賢人機関の事務員たちも、その報告を聞くにつれて顔色が悪くなっていく。
「いや、ここまでの情報を整理して、国連に提出するさ。その異星人たちは、地球を攻撃してくるのは確定なんだろう?」
『ああ。ミサキさまの話から推測するなら、ほぼ確実に襲ってくると考えて構わない。その上で、地球はどういう対応をするのか、それを聞きたいところだよ』
まるで他人事のように話すアルバートではあるが、ミサキとの話で、スターゲイザーが地球を守るために動くというのはほぼ確実だと考えている。
その上で、地球が何もかもをスターゲイザーに丸投げするのかどうか、自分たちは何もしないのか、それが知りたいだけである。
恐らくはミサキも同じ思いであるだろうと予測し、レオナルドに話を振っている。
「……よし。それじゃあ話をしてくる。引き続き、観測を継続してくれて構わないからな」
『わかっている。エクスカリバー経由だけど、最新情報は届くようになっているからな』
それを聞いて、レオナルドは国連事務総長の元に向かう。
下手に間に人を挟んで話があちこちに散らばるよりも、直接、トップに話をつけたほうがいいと判断したから。
そしてその判断は正しかったらしく、翌日には国連臨時総会が発令。
『異星人の襲来の可能性』についての対策会議が行われることとなった。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
──四日後
異星人艦隊の存在は、地球圏すべての人々が知るほどのニュースとなり、世界中に広まっていった。
スターゲイザーに次ぐ次の異星人、彼らを受け入れるべきかどうか、その話が世界中を二つに分けてしまった。
スターゲイザーの恩恵を受けている国及びその周辺国は、賢人機関の報告にあった【敵性異星人の可能性】を信じ、彼らと話し合いを行うという柔和派国家も対立。
かたやスターゲイザーの恩恵を受けられていない国家は、次こそ我々が未知のテクノロジーを手に入れるチャンスであると外交政策を前に押し出してくる。
この話し合いは結論がつくことはなく、時間だけが進んでいったある日。
──ギィィィィィン
空間を切り裂くような音が、太平洋上空に響き渡る。
その直後、空間に亀裂が入り砕け散ると、そこから無数の巨大なランスが降下を開始。
長さ12mのランス状観測装置は、太平洋に着水すると、海底目掛けて真っ直ぐに潜行していった。
報告を受けた各国の諜報部及び軍部は、すぐさま未確認物体が着水したエリアに回収部隊を送り込んだのだが、何も発見することができなかった……。
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