第168話・特攻野郎、消耗品達。
──グォングォングォングォン
魔導式水精霊冷却型エンジンが、唸り声をあげている。
正確には、あまりにも加熱しているエンジンを冷やすために、ウンディーネ達が悲鳴をあげているのだが。
サーバント達が搭乗した『HU-16 アルバトロス』はゆっくりと大気圏降下後、真っ直ぐにアメリカはペンタゴンに向けて飛行を続けている。
ステルスモードにより接近する予定であり、すでに現地上空では左慈率いるサテライト部隊がペンタゴン周辺にてステルス待機し、じっくりとペンタゴン中枢システムに潜入するタイミングを伺っている。
「あと30分でペンタゴンだ‼︎ 荒事になると思うが覚悟しろよ!」
「全く。お前との付き合いは長いが、ここまで無謀な作戦だとは思っていなかったよ」
「なあに、俺たちは所詮は消耗品だ。代わりなどいくらでもいる。それよりも、俺たちの命一つで世界が救えるんだ……」
アルバトロスのコクピットでは、そんなたわいもない会話が聞こえてくるんだが、タケミカヅチ管制システムまで聞こえているからな。
『……なぁ、お前達って完成してどれぐらいだ?』
「ミサキさま。まだ一週間経ってませんぜ」
「ああ。お前との付き合いなら、チームを組んでからの2日間だな」
『すっ……ごく短いよな?』
「蝉の一生と比較すれば、俺たちのような奴らの二日なんて大したことありませんぜ」
『……お前達は寿命ないだろ……もういいわ、作戦よろしく』
もう、このノリにいつまで付き合わないとならないんだ?
それよりも、作戦ってなんだよ?
『ピッ……今回のペンタゴン奪回作戦は、地上のアメリカ特殊部隊シールズとの合同です』
「あ、それなら安心していいんだな?」
ここから先は、正確な作戦。
ペンタゴン周辺でステルス待機しているマーギア・リッターにより、ペンタゴン周辺の機動部隊を制圧。
同タイミングで左慈たちによってペンタゴンのシステムの書き換えと掌握、すぐさま新コードを使って作戦本部から各部隊に通達。
マーギア・リッターによる制圧については、上空待機しているガーデンツィオらがペンタゴンに突入するタイミングなので、ほぼ全ての行動が同時に発生する。
ガーデンツィオらは地下に囚われている責任者達の救助が目的であり、彼らの突入経路からもシールズが飛び込む算段になっている。
「三方向からの同時展開か。因みに賢人機関は?」
『ピッ……ホワイトハウスに隣接している建物の中です。すでにケネディらと合流し、作戦のすり合わせを行っているところですが……』
「何かあったな?」
『ピッ……賢人機関の自称・司令官が指揮権を寄越せと』
「放置で。一切合切無視‼︎」
『ピッ……了解です』
なんだよ自称・司令官って。
資料にいたグスタフ・カールだかなんだかか?
そのあたりの人名に思いつくところがないから、あまり有名じゃない人なんだろうなぁ。
でも、賢人らしいから、何処かの歴史では有名なんだろうなぁ。
この辺りは、軍事専門家ミリオタとか、歴史に詳しい人に話を聞くのもありかもしれないが、今は忙しいからパスだな。
………
……
…
──一方、アイゼンハワー行政府ビル内
対地球防衛軍の要の作戦司令部として、アイゼンハワー行政府ビルが選ばれたのち、ケネディはすぐさま建物内部の調査を開始。
わずか一日の間に、内部に仕掛けられていた盗聴器をはじめとした【地球防衛軍】のものと思われる痕跡を次々と発見、彼の元に送られてきた忍者部隊【バイアン】の手により除去された。
「……ここまでの機動力、探査能力。これがスターゲイザーのテクノロジーの一端なのですか?」
「まあ、そのようなものとお考えください。私が使うことを許されているのは忍者部隊一つと、マーギア・リッター六機のみですが」
ノイマンの問いかけにケネディは静かに告げているのだが、これには司令部に詰めていたカール・グスタフが口を開く。
「それで、そのマーギア・リッターとやらの図面はいつ貰える? 賢人機関で量産する必要があるだろう?」
「図面? 何を勘違いなされているのかわかりませんが、マーギア・リッターを始め、忍者部隊・バイアンはあなたの指揮下にはありませんよ?」
──ガタッ
これにはカールも顔を真っ赤にして立ち上がる‼︎
「ふざけるな‼︎ 貴様ら戦闘の素人に指揮など任せられるか‼︎ 私専用のマーギア・リッターをすぐに用意しろ‼︎」
「はぁ。ノイマン殿、この若年寄は何を話しているのですか?」
「いえ、彼は勘違いをしているだけです。カール、君の仕事は、ここで指揮を取ることではない。あくまでも賢人機関は協力者であり、指揮をとって動くのはアメリカ政府であると説明しましたよね?」
「グ、グッ……」
淡々と、それでいて圧倒的な覇気を持って話をするノイマン。
これにはカールも言葉を失い、その場で頷くしかなかった。
「話を続けたまえ」
「はい。それでは、ケネディさんの提案だった作戦について、詳細を詰める事にしましょう」
「それが良いですね。シールズの指揮官殿もこちらへどうぞ、此処から先は、兎に角細かい調整となりますから」
ケネディは満足そうにノイマンとシールズ司令官と卓を囲み、細かい調整を始める。
そしていよいよ作戦開始となったのだが、まさかの事態にアイゼンハワー作戦室は絶句するしかなかった。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
そして現在。
作戦の準備は、全て終わった。
あとは作戦開始の合図を待つばかり。
その役目を持っているタケミカヅチから出撃した『アルバトロス』が、まもなくペンタゴン上空に到着する。
全ての部隊が、その時を待っていた。
「よお相棒。まもなくペンタゴンだ。作戦開始の合図を出すか?」
「まだだ。奇襲と呼ぶには、まだ手ぬるい。ここは一発、でっかい花火で合図の狼煙をあげようじゃないか‼︎」
そう笑顔で叫びながら、ガーデンツィオが操縦桿を握る。
「オクタ・ワン、一番手薄なところを頼む」
『ピッ……南東区画は現在、最も手薄になっています。その付近ですと着陸地点が限定されますが』
「よーし上等だ‼︎」
すぐさまスロットを全開にすると、ガーデンツィオが機体を加速させる。
そして高度を一気に下げてから機体の全体をフォースフィールドで包み込んだ。
「いくぞ野郎共‼︎ 突撃だ‼︎」
「「「「「応」」」」」
ステルスを解除して機体を晒すと、ガーデンツィオは一気にペンタゴン手前で機体を水平に保ち、南東部の正面入り口に向けて機首から突っ込んだ‼︎
──ドッゴォォォォォォン
爆音が響き、ペンタゴン内部に警報が鳴り響く。
「よし、いくぞ‼︎」
そのままガーデンツィオが仲間に向かって叫ぶと、サーバント特殊部隊は機体から飛び出し、戦闘状態に突入した。
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