第167話・まずは、ペンタゴン奪回作戦
その日。
アメリカの全ての陸軍、海軍、空軍、そして海兵隊に対して、ペンタゴンより活動停止令が発令した。
当然ながら、アメリカ軍の最高司令官はパワード大統領であるため、大統領令でも発動しない限りはこの命令は無効となる。
だが、全ての軍部が事実確認を行うために各方面に連絡を入れた時、すでにペンタゴンは 内部及び周辺区域は制圧されていたのである。
表向きは何も変わらない、いつもの平穏な雰囲気であるものの、その内部では【地球防衛軍】を捉えるために、様々な情報を精査し、つど各方面部隊に対して連絡を入れていた。
それがあるタイミングで、突然不可能となる。
外部へ向けられた通信システムが全て遮断。
同時に、外部へ向かう通路が全て閉鎖され始めたのである。
ここまで巧妙に準備が行われていたことについて、その動向をペンタゴン職員どころか、周辺を警備していた軍隊ですら把握していなかった。
いな、正確には、把握したものたちは処分され、地球防衛軍の外郭機関のメンバーによって入れ替わられていたのである。
そんなに都合よく、アメリカの中枢機関の人員が交代されるのか?
結果はイエス。
それらを行う命令系統は正式なものであり、【配置転換】についての事情などは必要ない。
全て、上層部に紛れていた【地球防衛軍】の命令であるものの、上官の命令は絶対である。
こうなると、縦社会である軍隊は簡単に瓦解する。
その結果が、このペンタゴン包囲網であった。
国防の要であり、情報の集積するペンタゴンを失ったことにより、アメリカの防衛能力は瞬く間に低下。
統制力を失った部隊は一時的に活動を中止し、国防長官もしくは大統領からの言葉を待つ他になかった。
………
……
…
──ホワイトハウス、庭園部シルバーボックス
あの大規模襲撃事件以降、モノリスは何も反応を示さない。
それどころか、つい数日前にはイギリスのウェールズ郊外にある賢人機関施設を、地球防衛軍の魔の手から守り抜いていた。
その防衛能力があれば、ペンタゴンが襲撃されることはなかったはず。
「駄目だ……緊急対策本部では、ペンタゴンの情報を捉えるどころか、逆にこちらの動きまで察知されてしまっている……」
幾度となく特殊部隊を編成し、ペンタゴン奪回作戦を行ったか。
だが、その悉くが失敗に終わる。
こちらの動きが全て筒抜けになっているのか、地球防衛軍は先手先手を打ってカウンターアタックを仕掛けてくる。
これ以上の損失を出さないためにも、確実な一手が欲しい。
パワード大統領は、藁にもすがる思いでモノリスの前に立っていた。
ゆっくりと右手を胸元に当てて、静かに一言。
──please
助けて欲しい。
その思いだけで紡いだ言葉。
──ブゥン
するとモノリスが静かに輝き、中から外交官の一人であるケネディが姿を表した。
「……声は届いた。我が主人にして星王ミサキさまの命により、私と李書文は、君達に助力しよう」
「あ、ああ……」
パワードの双眸から涙が溢れる。
──ガシッ
するとケネディが素早くパワードと握手をすると、彼の右腕を軽くパンパンと叩く。
「まずはやることをやってから。そうだろう?」
「い、イエッサー‼︎」
「では案内を頼む。今の君たちの拠点まで案内して欲しい。その上で、こちらもエージェントを送り込む算段を取り付けておくので」
渡に船ではない。
まさに鬼に金棒、ア◯ロにガン◯ム。
すぐさまパワードは側近たちに連絡を入れると、隣接する建物へと移動を始めた。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
「なぁ、お前たちアホだろう?」
機動戦艦タケミカヅチ後部デッキ。
そこでは、ペンタゴン奪回作戦のための特殊部隊の編成及び専用装備が次々と移動式ワームホールで届けられていた。
中でも目を引くのは、巨大な航空機。
アメリカが誇る水陸両用艇『HU-16 アルバトロス』が、そこに鎮座ましましていた。
さらにその近くでは、タレ目のマッチョ、スキンヘッドのナイフ使い、小柄な拳法使い、グレネードランチャーの達人などなど、総勢十二名のサーバントが装備を整えて待っていた。
「い、いや、あのですね。目標がペンタゴン奪回作戦で、どう見ても史上最大の困難な作戦となりますと、まずは形から入ったほうがいいかもとオクタ・ワンが申していました」
「そういうことだ、ここは俺たちに任せてくれればいい。この腕の刺青にかけて誓う‼︎」
拳法使いが言い訳をする横では、タレ目のマッチョが笑いながら呟いている。
「はぁ。オクタ・ワン、思考パターンと性格パターンの刷り込みまで行ったのかよ」
『ピッ……後ほど、緊急事態に突撃してくれる方々も完成しますが?』
「そいつは出すなよ? なんなら溶鉱炉にぶち込んでとかしてしまえ‼︎」
『ピッ……サムズアップして、次の作戦には帰ってきますが?』
「アイルビーバックってか? それよりも作戦内容はどうなっているんだよ」
そこだよそこ。
問題は、どうやってペンタゴンを奪回するか。
それをどこまで迅速かつスピーディーに行うかなんだよ?
『ピッ……ご安心ください。今回用意したサーバント特殊部隊は、【最高の消耗品】です。全てリーダーのガーデンツィオに任せてあります』
「めっちゃ心配なんだけど。本当に任せていいのか? っておい、なんでもう乗り込み始めているんだよ」
俺がオクタ・ワンと話をしている最中に、ガーデンツィオたちがアルバトロスに乗船し始めていた。
「なんでって? そりゃあ戦争だからさ」
「……はぁ。そこまで言い切るのなら、絶対に作戦は成功するんだろうな?」
「われわれの作戦生還率は100%になる予定だ」
「これが初陣だからな、そりょあ成功したら100%だよ‼︎ もういいから、とっとと行ってこい‼︎ トラス・ワンにあとは引き継ぐ‼︎」
はぁ。
変に地球の文化を学ばせていたら、とんでもないものを用意し始めているわ。本当に大丈夫なのか?
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