第151話・予想外と予測の範囲内と、考えてなかったの違い
ホワイトハウスを後にして。
無事にアマノムラクモに戻ってきたのは良いのだが、艦橋ではワルキューレたちとイスカンダルがなにやら話し合いをしているところであった。
「……何かあったの?」
「あ、ミサキさま、おかえりなさいませ」
「マイロード、これを見てもらえますか?」
イスカンダルとヒルデガルドが俺に話しかけながら、モニターにある光景を映し出している。
──ピッ
モニターに映し出されたのは、深夜の手稲山山中を進む特殊部隊。
それは空間座標軸をコンマ1だけずらして、地球人に視認されないようにしたモノリスに向かっている。
「ふむ? なんでこいつらはモノリスの場所がわかるんだ? いや、まあ、分かったとしても見えないからなぁ」
『ピッ……では、続きをどうぞ』
オクタ・ワンが映像の再生を見るように促したので、ここからは意識を集中してみる。
すると、特殊部隊は奇妙な装置をモノリスの正面に設置すると、それを作動させてモノリスを実体化した‼︎
「……はぁ?」
「はい。この通り、地球人は何らかの手段で、モノリスの空間座標軸を地球の空間軸に引き寄せることに成功しました」
「いやいや、待った待った。これってどこの特殊部隊?」
「現地でステルス監視していたサーバント隊からの報告では、『アメリカ海兵隊と陸自による特殊部隊』だそうです」
「通信により指示を受けていた事、その装置が我々のテクノロジーを脅かしていた事、この二つが我々にとってどれぐらい危険かを論議していました」
ん〜。
これってアレかなぁ。
「なあ、オクタ・ワン。こんな奇妙な技術を再現できる存在するは、まさか第三帝『ピッ……違います、賢人機関です』キッパリと言い切ったね、ありがとう」
間髪入れずに否定されました。
しかし、こんな技術を持っているとは、地球のテクノロジー恐るべしだよなぁ。
「もう一度、賢人機関について詳細を調べなおしたほうがいいかもなぁ。そもそもだよ、空間座標軸をずらしているモノリスの位置を正確に把握するなんて、実際には可能だと思うか?」
「アクシアならば問題なく。スターゲイザーでも可能でしょう。機動戦艦アマノムラクモでも、トラス・ワンのサーチシステムならいけると思いますが、タケミカヅチでは不可能です」
「それってつまり、伝承宝具クラスじゃないと無理ってことか。ちょいと朔夜を呼んでくれる?」
そういうことなら、いよいよ朔夜にも話を聞きたいところだよなぁ。
「お館さま。拙者ならここに‼︎」
──シュタッ
突然、アマノムラクモ艦橋の天井から、朔夜が飛び降りてきた。
いや、お前、どこから出てきた‼︎
「アィェェェ、ナンデサクヤ‼︎」
「はっはっはっ。拙者、ミサキさまの声に導かれたので、体内の霊子光器端末により縮地して参った次第」
「あ〜なるほどなぁ。イスカンダル、それって問題ないのか? 朔夜の身体に余計な負荷とかは掛かってないのか?」
そっちの方が心配だわ。
「はっ。すでに忍びの里のものたち全ての調整は完了しております」
「待って、ねえ、その調整ってなに?」
「彼らは全員、一度は肉体を失ったものたちです。あらたな肉体をえたとしても、それは地球型環境に順応し切れてはいませんでしたから、改造……強化調整……強殖……ミュ……うまくやりました」
「……聞かなかった事にする。そもそも誤魔化す気がないんだろう?」
「はっはっはっ。お館さま、我ら忍びの里の百二十八傑衆、いつでもお館さまのもとに馳せ参じる所存。それで、此度はどのような御用で?」
はぁ。
うちのメンバーはいつもこうだよ。
俺の知らないところで、俺のためにという理由で、とんでもないことをしているし。
全て事後報告だし。
しかも、俺が怒るツボを理解しているから、そこを突くようなことしているし。
「まあ、考えるのやめる。朔夜、お前たちの能力で、空間座標軸を異なる存在を見ることはできるか?」
「そうですなぁ。サテライト心眼モードを使えば」
「サテライト心眼? それはなんだあ?」
「こう、印を組むことで、惑星の衛星軌道上の観測衛星全てを掌握し、サーチする忍法でありますなぁ」
「忍法でもなんでもないわ。普通にハッキングだろうが……いや待て、それって地球の衛星を使えば、地上に隠したモノリスも見えるってことか?」
もしもそうなら、地球のテクノロジーって俺の知らないところでかなり発展しているぞ。
「いやいや、地球の衛星には多次元レーダーもなにもござらんかと」
「つまりはできない。いや、それが分かっただけでも助かったわ。任務に戻ってよし」
「御意‼︎」
──シュンッ
あ、消えた。
本当に忍者ってすごいなぁ。
「そうか。朔夜の意見も反映すると、今の地球のテクノロジーではモノリスを見ることは不可能。それをどうやって知り得たのか、今後の課題だな」
「既に特殊部隊が、手稲山山中に警戒線を張り巡らせています。あちこちに暗視センサーや赤外線カメラなどを設置し、モノリスから姿を表すものがいないか確認を開始しています」
「ベースキャンプは?」
「千歳駐屯地内、キャンプ千歳です」
「……どこ、それ?」
また知らない名前が出たよ。
「キャンプシュワルツとか、キャンプなんとかのようにアメリカが所有する、日本国内のアメリカ軍事施設です」
「千歳にはそんなのないから」
「あったのですよ、過去には。それがですね、つい最近になって再びアメリカ軍が滞在して使用を始めたとか」
「……モノリスのために?」
「そこまでは不明ですが、オクタ・ワン、そこのところは確認が取れていますか?」
ヒルデガルドでも分からないか。
『ピッ……アメリカの特殊機関が、この数日中にイーグル金貨四枚を換金した場所を特定、その直後に札幌市内での、正体不明の買い物する異星人事件。疑われて当然です』
「ですよね〜。まあ、そこは深く反省しているから突っ込まないでくれ。こうなると、ダミーモノリスの設置も進めた方がいいか」
『機動戦艦タケミカヅチの出撃準備馬完了しています。手稲山のように隠密裏に行いますか?』
「いや、ホワイトハウス式で。各国の政治中枢のど真ん中に落としてやれ」
それが囮になってくれれば、俺も買い物に行けるって物だけど。
「いや、ちょいまち、今のなし。派手にやりすぎるぐらいなら、ホワイトハウスでの国交の話し合いを進めた方が良いわ」
『ピッ……そうだと思って、何もしていません』
「賢いなぁ……っていうか、先に突っ込めよ」
『ピッ……いえ、私はヒルデガルドが制するかと思いました』
「マイロード……私は、イスカンダルがお諫めになるかと思いました」
「いえいえ、オクタ・ワンが止まるかと思ってましたので」
「こういう時だけは、意見が分かれるのってどうよ? まあ、次のホワイトハウスに向かう日付を決めて、送り出してくれるか?」
ここは話を進めた方がいいよな。
俺は、手稲山のモノリスについてどうするか、考えることにするよ。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
──日本国、首相官邸。
その日、浅生太郎総理大臣のもとに、隣国からの電話が届いていた。
その内容は、手稲山山中に存在するモノリスの共同研究について。
現在、アメリカ海兵隊と自衛隊により厳重に包囲していることについて、中国の人民解放軍からの選抜部隊も参加させて欲しいという進言である。
この件については、日米安保理に基づく作戦行動であると返答を返したのだが、それならば中国は独自に作戦を展開するだけであるという、意味深な言葉を残して連絡が切れた。
その翌日には、中国から潜水艦が出港。
目標地点を北海道に定め、特殊作戦行動が開始された。
「惑星スターゲイザーへと繋がるモノリス。それを入手して解析することができれば、我らが他国よりも先にスターゲイザーへと到達することができる。そうすれば、あとは簡単だ」
まず実験的に人民解放軍の勇士を送り出す。
そして安全が確認できたならば、スターゲイザーに拠点を設置し、中国の領土であることを主張。
そうする事で、中国は『スターゲイザーの住民』であることを宣言することが可能となる。
「ホワイトハウスにモノリスが現れたときは、してやられたと思ったのだがな。ここから先は、アメリカにも日本にも、甘い汁を与えるわけにはいかないからな」
|欧阳(オウイァン)国家主席は、すぐさま指示を飛ばす。
いつでも戦闘状態に突入できるように、北海道にある中国大使館で待機している特殊部隊にも、いつでも行動開始できるようにと。
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